639 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦
第十五幕 42 『救援、呼びかけ』
しおりを挟むーーーー テオフィルス ーーーー
絶対に護ると誓ったのに、カティアを邪神の闇に囚われてしまった。
人知を超えた邪神の力の前に全く歯が立たず、為す術もなく仲間たちが倒され、カティアまでも……己の不甲斐なさに怒りが込み上げてくる。
苦痛の悲鳴を上げる彼女を何とか救おうとしたが、闇の触手に絡め取られ、それは瞬く間に脈動する闇の球体となって邪神リュートと共にカティアを飲み込んでしまった。
「お母さん!!!」
少女の姿のミーティアが悲痛な叫びを上げる。
彼女は印の力を全開にして滅魔の光を闇に向けて放っているが、それが効いている様子は全く感じられない。
そして……!
「よせ!!ミーティアっ!!」
「お母さんを助けるの!!」
俺が静止するまもなく、ミーティアは『闇』の中に自ら飛び込んでいってしまった!!
くっ……!!
ついに残されたのは俺だけになってしまった……!
俺も黙って見ている訳ではなく、印の力で聖剣の力を限界まで引き出して闇に斬りつけているが、全く手応えが感じられない。
何とかしてカティアとミーティアを闇から救い出さなければ……
そう思うのだが、一体どうすればいいのか……と、焦りばかりが募る。
そうこうしているうちに脈動する闇は収縮を繰り返しながら徐々に肥大化していく。
そしてそれとともに、邪神の波動が更に増大して吐き気すら催すほどの不快な気配が辺りに満ちていく。
邪神の完全復活……
その時が近いのを、否が応でも思い知らされた。
しかし、俺の心が絶望で満たされようとしたとき。
救いの神は現れた。
天空に浮かんだ邪神殿の上空より、十二の光が舞い降りる。
光は人の形となり……
「大丈夫?テオフィルス」
「テオちゃん、しっかりなさい!」
「エメリール様にリヴェティアラ様!?それに……」
何と、その場に現れたのは十二柱の神々だった。
どうしてここに……?
「グラナとの戦いは……」
「大丈夫だ、そっちは既に決着した」
「戦いの趨勢が決してホッとしてるときに、こんなものが突然上空に現れやがって……邪神を名乗るやつが演説をおっ始めたんだ。こりゃあ只事じゃねえってんで急いで駆けつけたってぇ訳だ」
俺の呟きにディザール様が答え、オキュパロス様が補足する。
そうか、グラナの侵攻は食い止めることが出来たのか。
しかし、こっちは……
「これが邪神……何という禍々しき力か。そして今も益々力を増している。早く何とかしなければ、この世界を全て闇で覆い尽くしてしまうだろう」
「……目の前にしただけで私達の力が削がれていくのが分かる。やっぱり私達とは対極の力なのね。でもその差は余りにも圧倒的だわ」
ヘリテジア様、パティエット様が言う。
12の神々すら圧倒する力が……やはり人間の身で抗うのは無謀だったのか……?
「絶望しては駄目よ、テオフィルス。先ずはカティアを救い出すの。この戦いはあなた達が希望なのよ」
「しかし、もはや俺の力では……」
「しっかりしなさい。あなたはカティアを護ると誓ったのでしょう?……大丈夫。いま初めて邪神を目の前にして分かったわ。カティアの……いえ、あの娘と融合した『琉斗』の魂は謂わば楔。カティアを救い出すことができれば、きっと……」
……そうだ。
何を弱気になってるんだ、俺は!!
例え力及ばずとも、足掻いて見せろ!!
リディア……もう二度と離れてなるものか!!
「テオフィルス……あなた、記憶が……?いえ、今はそれよりも…………これから私達の力を全開放して何とか闇を封じます。ですが……私達全員の力を持ってしても、ほんの僅かな時間を稼ぐことしか出来ないでしょう」
俺はエメリール様の話を黙って聞く。
俺に出来ることは何だってやってやる。
「テオフィルス……あなたはカティアに呼びかけて、あの娘の魂を呼び覚ますのです。あなたの声ならきっと……闇に囚われたカティアの魂にも届くはずよ」
「魂に……分かりました!」
例えこの身が果てたとしても……
いや、違うっ!!
必ず二人で……皆で帰るんだ!!
だからカティア……俺の呼びかけに応えてくれっ!!
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる