644 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦
第十五幕 47 『別れの時』
しおりを挟むーーーー カルヴァード大陸 某所 ーーーー
茜に染まる空に、激しい光が何度も閃き、轟音が鳴り響く。
黒神教に絡んだ数々の事件や、異界の魂が原因となった強力な魔物の出没……これらのことから、世界中の人々に漠然と広がっていた不安。
それはグラナ帝国の侵攻という形で現実のものとなり、そして今……人知を超えた邪神の復活によって、世界そのものの危機が迫っている事が誰の目にも突きつけられていた。
しかし、人々は今、希望の光を目の当たりにしている。
イスパルの英雄姫、その名も轟く星光の歌姫が神々から力を授かり、世界中の人々の想いも力に変えて邪神と戦っているのだ。
遥か天空の戦いを見上げる全ての人が、カティアの勝利を願って祈りを捧げる。
彼女が世界の英雄となるその瞬間を待ちわびていた。
やがて夕日に染まった茜色の空に、一足早く夜空が訪れる。
満天の星空が広がり、その煌めきが流星となって、ただ一点に降り注いだ。
その余りにも美しく壮大な光景に、人々は英雄の勝利を確信するのだった。
ーーーーーーーー
私の、神々の、皆の、全ての人々の想いをのせた無数の流星が光の奔流となって、邪神リュートを飲み込んでいく。
「うおおぉぉぉーーーーっっっ!!!!」
闇が光に溶けていく。
そして邪神の断末魔…………いや、悲しき迷い子の泣き声が聞こえてきた。
私は、かつて始めて異界の魂と対峙したときのように、悲しき魂を慰めるための子守唄を口ずさむ。
ああ いと悲しき魂よ 哀れなる魂よ
眠れ眠れ迷い子よ
あなたが帰る道は既にない
眠れ眠れ安らかに
ただ あなたが安寧でありますように
眠れ眠れ永久に
わたしはあなたの哀しみを忘れない…
いつまでも…いつまでも…
『ありがとう……カティア。私を邪神の軛から解き放ってくれて』
「琉斗……」
邪神に囚われていたリュートの魂が、気の遠くなるような時を経てついに解放される。
私の前に現れた彼の魂は、満足そうな穏やかな笑みを浮かべていた。
「こちらこそ、ありがとう。あなたの導きがあったからこそ……私はここに辿り着くことができた。……輪廻に還る事は出来そう?」
『ああ。またこの世界に生まれるかどうかは分からないが……輪廻の先の未来で、いつかまた会おう』
「うん……」
『それに、私の中には……ほんの少しだけ、あの悲しき魂の欠片が遺された。こいつもまた、輪廻に還って、いつの日か……そう、願っている』
そっか……
もし、そうなら……今度こそこの世界の一員として、生まれ変われるといいな……
世界を滅ぼそうとした邪神なんだけど……
あの悲しみを知ってしまった私は、そう願わずにはいられなかった。
そして、琉斗とも別れの時がやって来る。
私達を導き、そして立ちはだかった賢者リュート。
もう一人の私……
でも、既に私達は別の道を歩んでいる。
そして、例えここで別れたとしても。
『では、また会おう、カティア……そして、琉斗!!』
「うん!!それまでは……さようならだね、琉斗!!」
いつか再び出会うことを願って、私達は別れの言葉を交わした。
やがて邪神は光に溶けて消え去り、リュートの魂もまた旅立って行くのだった……
全ての戦いは、ここに決着した。
「カティア!!!」
「ママ~!!」
「カティアさん!!」
邪神との最後の戦いに勝利を収め、再び舞台へと戻ってきた私を、皆が満面の笑みを浮かべて迎えてくれる。
「みんな、ただいま!全部終わったよ!!私達が勝ったよ!!」
終わってみれば……全員無事でよかったよ。
取り敢えず、邪神が滅びた以上はこの場所もいつまで保つのか分からない。
早く脱出しないとね。
しかし……
「カティア、よく頑張ったわね。これで、私達も心置きなく……」
「リル姉さん……?」
リル姉さんの声に振り返ってみれば……そこには12柱の神様たちが勢ぞろいして、満足そうなな笑顔を浮かべていた。
そして、その身体は……
「え……?みんな……身体が透けて……?」
「ええ。私達も、ここでお別れよ」
そんな衝撃の言葉を、リル姉さんは言うのだった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる