【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
665 / 683
後日談2 グラナの夜明け

エピローグ 黎明の女神

しおりを挟む

ーーーー グラナ帝国 ロスタム解放戦 ーーーー


 後世の歴史家たちは語る。

 かつての栄華も見る影もなく衰退し、斜陽を迎えつつあったグラナ帝国がふたたびその光を取り戻したのは、その日が始まりであった……と。







 ロスタムの街の目前までやって来たエフィメラ皇女の一行は、そこで戦闘が行われている気配を感じ取った。
 そして、それが黒神教の支配から解放するためのものであれば参戦することを決意する。


 リシェラネイアとローランドの二人が先行して街に潜入……状況の把握を行った上で、皇帝派と目される勢力に接触を図った。

 果たして、エフィメラ達の予想通り……その戦いは実質的に街を支配していた黒神教を打倒するためのものだった。


 グラナ帝国においても多くの人々が、カティアたちと邪神の最終決戦の場面を目撃した。
 突然見せられたその光景の意味を完全に理解できた者はいなかったが……その決戦と、カルヴァードとの大戦の終結後に、皇帝の名において帝国全土に宣言が行われた。




 曰く。

 永らくの間、黒神教の教皇と大幹部の地位には異形の者が居座り、人外の力によって皇帝をも傀儡と化し帝国全土を支配していた。
 そして、彼らは自らの野望のために国民達の自由を奪い、富や、時に命すらも奪ってきた。

 だが、この度の戦いで……英雄たちの手によって悪しき異形の者たちはついに滅ぼされた。
 多くの民も目撃したであろうあの場面は、教皇に成りすましていた邪神を英雄姫が征伐した場面である。

 しかし、未だ帝国各地には邪神を信奉する配下が黒神教に紛れ込み、支配を続けようとしている。

 志あるものよ、立ち上がれ!
 邪神とその眷属たちが滅ぼされた今こそ、自由と正しき信仰を取り戻すときだ!




 その皇帝の宣言は瞬く間に帝国全土に伝えられ……各地で地下活動を行っていたレジスタンスなどを中心にした解放運動が立ち上がる。


 このロスタムの街においても……皇帝派が組織した『グラナ解放同盟』を中心とする解放軍が、街を支配する黒神教幹部を打倒するために、先ごろ一斉蜂起したのだった。


 そして、ローランドとリシェラネイアの手引のもとグラナ解放同盟と合流を果たしたエフィメラたち一行は、彼らに協力して戦線に加わった。

 手勢は少数ながらも、大戦を戦い抜いてきたブレイグ率いる勇士たちと、邪神征伐の英雄二人を擁するエフィメラ軍の活躍は目覚ましく、黒神教の精鋭『黒聖騎士団』を圧倒する。
 エフィメラ皇女自身も、妹のエルネラとともに魔導の腕をふるいながら味方を鼓舞した。

 エフィメラ軍の助力を得た解放軍は勢いづくものの、黒神教側も最後の抵抗を見せ、戦いは深夜にも及んだ。
 しかし……ついにはロスタムを支配していた魔族・・を滅ぼす事に成功するのだった。











 戦いが終わった未明の街に、勝どきの声が響き渡る。
 東の空が白み始め、もう夜明けは間近だった。

 激しい戦いによる犠牲者も少なからずいたが……戦いを生き延びた者たちの表情は晴れやかであった。


 そこかしこに戦闘の傷跡が残された街の中央広場。
 そこに集った多くの兵たちは、思い思いに勝利を祝い、戦場に散った仲間たちに盃を捧げている。
 更に住民たちも加わり、独特の高揚感と喧騒に満ちていた。

 そんな中やって来たのは、二人の美しい少女たち。
 戦装束に身を包んだエフィメラとエルネラだ。
 薄闇に浮かび上がる青銀の髪が人々の目を惹く。

 彼女たちに気付いた兵たちはその場に跪こうとするが、エフィメラはそれを制して広場の中央に進み出る。
 彼女たちが皇帝の娘であり、軍を率いながら自らも戦いに身を投じていた事は、多くの者たちの知るところである。
 共に戦った者たちは皆、彼女たちに畏敬の眼差しを向けていた。


 そして、広場の中央に立ったエフィメラが周囲をぐるりと見渡し、よく通る声で語り始めると……それまでの喧騒が嘘のように静まって、人々は彼女の話に耳を傾けける。


 共に戦った者たちへの労いと感謝の言葉。
 戦いの犠牲となった者たちへの哀悼の言葉。

 そして……



「皆も見たことでしょう。永きにわたりグラナを……いえ、世界を蝕んでいた邪なる神が滅ぼされた、その瞬間を。ですが、黒神教には未だ邪神の眷属が残され、支配を続けようとしています。このロスタムでの我々の勝利は、真にグラナを解放するための第一歩に過ぎません」

 一つ一つ噛みしめるようにエフィメラは言葉を紡ぐ。
 それは、民に対してだけでなく、自分にも言い聞かせるものであったのだろう。


「ですが……恐れることはありません。一人ひとりの力は小さいものかも知れませんが、皆が力を合わせれば、必ずや成し遂げることができます。どうか皆さんの力を貸してください」

 彼女は真摯に願う。
 そして目を瞑って一呼吸おいたあと……
 広場中に力強い言葉が響き渡った。

「……グラナに夜明けを!!我々の手で光を取り戻しましょう!!」


 勝どきをも超える大きな歓声が上がった。

 そしてそれは一つの奇跡だったのか。
 東の空より昇った陽の光が、エフィメラを背後から照らし出した。
 青銀の髪が光り輝き、エフィメラの美貌を神秘的に彩る。
 女神と見紛うその姿に、一人、また一人と……人々は自然と、祈りを捧げるように跪いた。









 そんな光景をローランドとともに離れたところで見守っていた、リシェラネイアの顔に笑みが浮かぶ。

「ふふ……あの娘、困ったような顔をしてるわね」

「ああ、ありゃあ凄えタイミングだな。狙ってやったとしたら、とんだ策士だ(もしかしたらジェロームの奴は狙ってたかもな)」


 しばらくは微笑みを浮かべていたリシェラネイアだったが、やがて顔を引き締めて言う。

「魔族が……いたわね」

「だなぁ……懸念してた事が当たっちまったか。まぁでも、七天禍ほどの力は無かった。なんとかなるだろ」

「そうね……でも油断は禁物よ、ロラン」

「ああ。分かってるさ」


 今回の戦いは勝利することができた。

 しかし、黒神教に魔族が残っている以上……帝都パニシオンまでの間に、どれほどの困難が待ち受けているのか。

 勝利の余韻に浸る間もなく、二人は気を引き締める。
 そして、グラナに新しい時代が訪れるその時まで……この若き指導者を必ず護り抜く。
 そう、決意を新たにした。


















 辺境の街ロスタムにおける解放軍の勝利と、エフィメラ皇女の帰還の報せは、驚愕とともに帝国全土を駆け巡った。
 そして、それに後押しされるように各地で解放の気運が高まっていくことになる。



 後世の歴史家たちは語る。

 このロスタム解放戦の勝利こそ、グラナの夜明けの始まりであったと。
 そして、その光をもたらしたのは……

 若き皇女、『黎明の女神』エフィメラ=リゼル=フロル=グラナである……と。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...