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後日談3 学園祭狂詩曲〈ラプソディー〉
クラスの企画案
しおりを挟むエーデルワイス歌劇団が誇る稀代の歌姫……カティアは、大根役者である。
彼女はセリフや立ち回りの覚えも良いし、運動神経が抜群なので舞台上の動きも洗練されている。
しかし、それらを全て帳消しするくらいに、致命的にセリフが棒読みなのだ。
あれほど表現豊かに感情を込めて歌うことが出来るのに……と、シクスティンのみならず劇団員たちは常々不思議がっている。
当人いわく、役を演じようと思えば思うほどドツボにはまるらしい。
しかし彼女は、役者として舞台に立つことは諦めていなかった。
その熱意だけはずっと持ち続けているのだ。
……その理由は『私だけ仲間はずれはイヤ』という、子供じみたものなのだが。
そしてある時、彼女は考えた。
自分の得意領域を活かせば良いのではないか……と。
すなわち、前世の記憶によるところの『ミュージカル』なら、自分も役者として舞台に立てるのではないかと思ったのだ。
その考え自体は既にシクスティンにも話をしており、彼も興味を示していたのだが実践する機会に恵まれなかった。
劇団員達の歌唱力が未知数というのもあるし、実験的になってしまうというのもあった。
だが、学園祭の出し物であれば……
そういったチャレンジングな演目もやりやすいし、若い学生ならば目新しいものも受け入れてくれる。
更に、合唱部と演劇部の合同とすることで、お互いの強みを活かせる。
そんな考えから、カティアの提案は全面的に採用されることになったのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ある日のホームルームにて。
カティアのクラスである1年1組では、学園祭に向けての話し合いが行われていた。
合唱部・演劇部における演目は既に決まって、その準備も始まろうとしていた。
しかし、クラブ活動とは別に各クラスにおいても出し物を決める必要があるのだ。
級長のユーグと副級長のカティアの司会で議論が行われる。
担任のスレインは学生たちを尊重して、自身は口出しせずに静観の構えだ。
……単に面倒くさいだけかもしれないが。
「え~と、だいたい意見は出尽くした感じかな?」
クラスメイトたちから挙がった意見を黒板に書き出していたカティアが、頃合いを見計らって言う。
「大丈夫そうですね」
「じゃあ、ここから一つに絞っていくんだけど……結構あるね~」
黒板に書き出された企画案は、かなりの数に上る。
無難なものから奇をてらったもの……悪ふざけしているとしか思えないものまで様々だ。
「『喫茶店』、『フリーマーケット』、『手づくり小物販売』、『ホラーハウス』……なんかは定番だね」
前世の学園祭の出し物とそんなに変わらない……と、彼女は内心で思った。
「まあ、このあたりは良いとして……『水着喫茶』?……フリード?」
「大繁盛間違いなしっしょ!」
「却下。ステラ、あとでシメておいてね」
カティアの言葉に、ステラは無言で頷く。
彼女は柔らかな笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
「あとは……『休憩スペース』?……やる気なさすぎでしょ。却下」
『もふもふパラダイス』は、動物のお世話が大変なので却下。
『楽器演奏会』は、騒音の問題があるので却下。
『小武道大会』は、教室でやるには無理があるので却下。
……というように、ユーグとカティアは論外のものをサクサク却下していく。
「『カジノ』は……賭けるのがお金じゃなければアリかな?『メイド・執事喫茶』は……まあ、男女平等なのは評価しよう。残しておくね。……『カティア様握手サイン会』?却下却下っ!」
こうして級長副級長の選定により、企画案の候補が絞り込まれた。
「それじゃ、論外なのはぶった切ったから……残ったやつで投票しようか?」
まだ多くの案が残っているので、一次投票→決戦投票という流れになった。
そして投票の結果……
「よし、これで決まりだね。1年1組の出し物は……『メイド・執事喫茶』だよ!」
カティアが宣言すると、クラスは大いに盛り上がる。
『メイド・執事喫茶』には、男子票も女子票もまんべんなく入ったようで、大差で一位となった。
このクラスは、家にメイドや執事が働いているという貴族子女が多いのだが……
普段できない格好に興味を抱いているのかもしれない。
既に、衣装はどうしようか……など、わいわいと賑やかに話し合いが始まっている。
「正式決定は実行委員会に企画案を提出して、承認されてからなので……もし、他のクラスと被ったら、また検討する必要がありますけどね」
盛り上がるクラスメイトをよそに、ユーグはあくまでも冷静に言うが……もう誰も話を聞いてなかった。
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