【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

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レティシア15歳 輝く未来へ

第126話 魔導力自在車

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 モーリス商会の建物を出て、イベント会場にやってきた一行。
 来場客で賑わってはいるが、どうやら一度に入場出来る人数を制限しているようで、外の混雑ぶりに比べれば落ち着いた雰囲気である。



「さて、今回のイベントですが……我がモーリス商会がこれまでに開発してきた研究成果や製品、試作品などを発表する場となってます」

「鉄道開発で培ってきた技術とか応用してね、いろんなモノを作ってきたんだよ。……まあ、鉄道とは全く関係ないのもあるんだけど」

 リディーの説明をレティシアが補足する。
 会場を見回るあいだ、そのようなやり取りが繰り返され、『やっぱり息のあった良いコンビだな……』とカティアたちは思う。



「あ、これ……」

「ああ、通信魔道具だね。カティアたちに渡してるやつの改良型だよ」

 実はレティシアは以前、カティアとルシェーラに通信魔道具の試作品を渡している。
 もともとリッフェル領の事件に協力するために騎士団に貸し出していたものだが……事件解決後に返却されたので、そのまま自分たちの連絡用として使うことにしたのだ。
 彼女たちは普段からそれで話をしているのである。

「もともと信号システムの制御とか、車内アナウンス、列車無線用に開発したものなんだけど。私達が使ってるヤツは地脈の魔力を利用してるから、最初に作った有線式に比べて不安定なんだよね。通話相手も自由に選べないし」

 ようするに、彼女たちが今使っているのは、前世で言うところの無線機のようなものだ。

 それに対して……

「この新しい試作品は、基地局中継局とかのインフラ整備を前提としてるんだけど、安定性の向上と任意の通信機を自由に選べるようにしてるんだよ」

 つまり、改良型試作品の方は携帯電話と言うことだ。


「……モーリス商会は『携帯電話』の会社も始めるの?」

「う~ん……そこまでは手が回らないなぁ。国の方で立ち上げられない?ほら、昔の『電電公社』みたいな」

「……古いね。まあ、インフラ整備なら最初は国の事業で始めるのが良いかもね」

 前世の携帯電話網を想像しながら二人は話す。

「「ケータイデンワ?デンデンコーシャ?」」

 彼女たちの会話に混ざる日本語の単語に、リディーとルシェーラは疑問符を頭に浮かべる。

「あ~……この通信魔道具と、通信網を管理する組織のこと」

 とりあえずレティシアは、そのように言葉を濁して誤魔化した。




 その後も色々な展示品を見ていく。
 ジャンルごとに区切られた各ブースでは、モーリス商会のスタッフやパネルなどで細かな説明が行われている。
 前世の企業展示会みたいな雰囲気だ……と、カティアは思った。
 

 そして、一通り見回ったあと……

「さて、次が最後ですが……今回の目玉とも言えるものですよ」

 そう言ってリディーが案内した先で指し示したものをみて、カティアはこれまで以上に驚きの表情を見せた。


「これって……『自動車』!?」

「(ジドウシャ?)これは、魔導力自在車と言いまして……簡単に言うと、魔導力機関車を線路以外の場所でも走れるようにしたものです。機関車と同じく魔導力モーターで走行し、操舵機能によって自由に曲がることができます」

「そっか……鉄道が作れるのなら自動車も作れるか……」

 と、カティアは納得する。
 しかし、レティシアは首を横に振りながら言う。

「それが、実用化にはまだ程遠いんだよね……」

「え?そうなの?大規模なインフラがいらない分、こっちの方がむしろハードル低そうだけど……」

 彼女の前世の感覚で言えば、舗装されてない悪路でもある程度は走行できるはず……と思うのだが。

「とにかく『燃費』が悪くてね。それにパワーも全然なくて、数人も乗れば動くのもやっとだし、悪路なんてとてもとても……。魔導力機関車くら大きくできるならその辺りもクリアできるけど……」

「あ~……あれじゃあ大きすぎるね」

「でしょ?」

「でも凄いよ。他のものも便利な道具ばかりだし……『レティえもん』て呼んでいいかな?」

「やめれ」

(……どうもお二人の会話は、ときどき意味がわからないことがありますわ)

 たぶん未来の猫型ロボットの話など、説明されてもルシェーラには理解できないだろう……




「今レティが言った通り、まだまだ課題は多いですが、研究が進めば将来的には完成すると思います。少しづつですが技術者も増えてますしね」

「それは楽しみですね」

「いずれは馬車の代わりになるのでしょうか……ところで、これは動かせないんですの?」

 魔導力自在車の周囲をぐるりと回って、興味深そうに説明を聞いていたルシェーラが聞く。
 目玉と言うからには乗れるのだろう……と、期待を込めた眼差しも向けている。

「そうですね……もうそろそろ魔力チャージが終わると思うので、動かしてみましょうか」

「この大きさだと、大体一時間魔力チャージして稼働時間が30分くらいなんだよ。パワーも無くてちょっとした坂道でもお手上げって感じ」

「それだと確かに、まだ実用化はできないね」

 現時点での性能面の話を聞けば、カティアも実用化はまだまだ先であると理解する。

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