【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

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レティシア15歳 輝く未来へ

第127話 おせっかい

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 リディーが他のスタッフに指示を出して準備……走行コースになる場所を空けたり、来客に注意を促したりする。
 それから車に乗り込んで魔導力モーターを始動させると、「キュイィーーーン……」と甲高い音が聞こえてきた。


「あいにくと出力が弱いのであまり人数は乗れませんが……お二人くらいなら大丈夫ですね」

 運転席の窓を開けてカティアとルシェーラの方を見ながら、リディーはそう言った。

「レディーに体重を聞かないところは褒めたげるわ。二人とも、さあ乗って乗って」

「レティは良いの?」

「私は別にいつでも乗れるから」

「それもそうか……じゃあ失礼します」

「失礼しますわ」


 二人が後部座席のドアを開けて乗り込む。
 魔導力自在車の大きさや形状は、レティシアやカティアが知る前世の軽ワゴンに似ている。
 運転席と助手席、後部座席があるが、全席に乗せられるほどのパワーは無いとのこと。



「じゃあ走らせますね」

「お願いします!」

 リディーが周囲を確認してから操作すると、車はゆっくりと動き出した。
 会場内のそれほど広くないところを走るので、それ程スピードも出さずゆっくりとコースを周る。


「これ、どれくらいスピードは出せるんですか?」

「この試作車だと……大体馬車の倍くらいまでは出せますかね」

 大体20~30km/hほどか。
 前世の感覚からすると遅く感じるものの、馬車の倍なら稼働時間さえ何とかなれば実用化はできそう……と、カティアは思った。

「馬車の倍の速さと言うだけでも凄いですわ」

「そうですね……ただ、レティの最終目標としては、今のこの大きさのままで魔導力機関車と同等の稼働時間、出力、速度を目指すと言ってますね」

「なるほど……なかなか長い道のりになりそうですね」

「ええ。でも、やりがいがありますよ」

 そう言ってリディーは楽しそうに微笑んで言った。



 その雰囲気に触発されたのか……ルシェーラが唐突に切り出す。

「ところで……リディーさんはレティシアさんの事を『レティ』って親しげにお呼びになってますけど、彼女のことはどう思ってらっしゃるんですの?」

(おお!?ド直球放り込んで来た!?なるほど……ルシェーラ的にはこっちを焚き付けたほうが良いという判断なんだね)

 カティアはルシェーラの言葉に驚愕して目を見開いたが、その意図をすぐに察した。

 彼女たちは、リディーの雰囲気からレティシアに気があると見ていたのだが……どうやらルシェーラはお節介を焼くことにしたらしい。

 レティシアの方もリディーに好意は持っているように見えるが、まだ自覚しているかどうかは分からない。
 なので、リディーの方を焚き付けて彼が積極的にアプローチすれば、あるいは……と考えたのだ。


「どう…とは?」

 問われたリディーは特に取り乱すわけでもなく、一見して落ち着いた様子で聞き返す。

「もちろん、彼女を女性として意識してらっしゃるのか?と言うことですわ」

(やっぱり直球勝負ですわね、ルシェーラ先生)

「……彼女の事は同じ目標を持つ大切なパートナーであると思ってますよ」

「あら?私は『女性として』どうかと聞いたのですわ」

(グイグイいきますわね、ルシェーラ先生)

 逃げ道を塞ぐようなルシェーラの追求に、戦慄しながらも感心するカティアである。


 そしてリディーは、少し顔を歪めながら返す。

「彼女と出会ったのはもう7年近く前……彼女は当時8歳くらいだったかな……?とにかく、それ以来の付き合いなんですが……私にとっては可愛い妹のようなものですよ」

 それも彼の本心には違いないだろう。
 今までであれば。


「そうですか、妹みたいなものだ、と。……ところで、先日カティアさんのお披露目パーティーがあって、レティシアさんも出席なさったのですが……カティアさんと同じくらい殿方の視線を集めて、ひっきりなしにダンスのお誘いを受けてらっしゃいましたわ。ね?カティアさん?」

「え!?あ、ああ……そうだね、レティは凄く可愛いからね」

 突然同意を求められたカティアは驚くが、何とか調子を合せた。
 ……テオフィルスが誘うまで、『殿方』どもが尻込みして壁の花になっていたのは秘密である。


「そ、そうですか……」

 そこで彼は初めて動揺をあらわにした。
 それを見た二人は、やはり脈アリで確定……と思った。

 そしてルシェーラは更に畳み掛けるように続ける。

「妹のように……も良いですが、うかうかしてると他の殿方と婚約なんてこともありますわよ。なんと言っても彼女は公爵令嬢ですからね。引く手は数多ですわ」

 そう、きっぱりと告げた。


 だが、彼女に言われるまでもなくリディーはそれを理解している。
 もう既に婚約の申し込みがあったことも。
 その相手がレティシアに相応しい好人物であることも。
 ……レティシアも少なからず好意的であることも。


「しかし……私はただの平民で……」

 もう、リディーも取繕わなくなった。
 彼はただ弱々しく呟く。

 ……運転は大丈夫だろうか?


「私の母も平民でした。もちろん色々と苦労はされたみたいですが、今は幸せそうですわ。それに、レティシアさんのお母様、アデリーヌ様もそうだったはず。確かに身分差で様々な困難はあるかもしれません。ですが、大切なのは自分の気持ちがどうなのか?レティシアさんを幸せに出来るのか?と言うことだと思いますわ。……もし、リディーさんが本気でレティシアさんと添い遂げたいと思うのなら、私は協力を惜しみませんわ。ね、カティアさん?」

「もちろん。レティはまだ自分では気づいてないだけで、リディーさんのこと好きだと思うし」

「……そう、ですか。ありがとうございます。ただ、今はまだ……」

「まあ、いきなりこんな話をしましたが、見た感じレティシアさんが他の殿方になびくとも思えませんし……そう焦らずとも大丈夫だと思いますわ。ただ、あまり待たせてはダメですわよ」

 そうルシェーラは締めくくった。
 凄くやりきった感のある笑顔をしている。


(他の男には靡かない……それはどうだろうか?)

 ルシェーラが自分に発破をかけているのは分かるが、彼はその言葉を鵜呑みにすることなどできない。

 しかし、アデリーヌや親方、恋敵のフィリップさえも、彼が心に蓋をしようとするたびにそれを踏みとどまらせてきた。
 そのたびに少しずつ、彼の心は……



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「お帰り!どうだった?」

「ええ、とても有意義でしたわ、ねえカティアさん?」

「う、うん、まあ……楽しかったよ」

「ん?何かあったの?……あれ、リディー?どうしたの?なんだか元気無いみたいだけど……」

 少し沈んだ表情となっていたリディーに、心配そうな表情でレティシアが尋ねる。

「あ、ああ、いや……ちょっと新しい課題が見つかってな」

 心の整理がつかないまま問われた彼は慌てるが、しかし何とか取り繕おうとする。


「え?なになに?」

「あ~、え~と、だな……ほら、あの試作車は大してスピードは出ないんだが、それでも結構振動が酷くてだな。実用化に向けては足回りの改善も考えないと、と思ってな」

 何とか誤魔化して答えるリディーだが、その言葉にレティシアは納得した様子だった。








 その後、モーリス商会をあとにしたレティシアたちは、再び街を見て回り……思う存分に祭りを楽しむのだった。

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