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レティシア15歳 輝く未来へ

第128話 学園

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 武神祭から時は過ぎ去り、季節は夏から秋へと移ろいゆく。
 その間、いくつかの出来事があった。

 まずは武神祭の後半、祭りのメインイベントとも言える武神祭にカティアが出場し、見事に本戦優勝を果たす。
 さらに、長年ディフェンディングチャンピオンとして君臨し続けていた英雄王ユリウスとの真の決勝戦では、激戦の末引き分けに持ち込み……神の力を受け継いだ英雄姫の力を天下に知らしめすことになった。

 彼女だけではなく、多くの実力者が繰り広げる実力伯仲の戦いに観客たちは大いに盛り上がり、レティシアも声の限り声援を送りながら、その熱気を楽しんだ。




 その後、カティアが学園の入学試験を受ける日がやって来たのだが……
 その試験が終わった直後、大きな事件が起きた。
 カティアの養女、ミーティアが何者かに攫われたのである。

 レティシアは事件解決後になってから経緯を聞いたのだが、犯人はカティアがこれまで関わってきた事件の黒幕……魔族と呼ばれる存在だった。

 東大陸のグラナ帝国に本拠を構える『黒神教』。
 その幹部は、人外の力と異能を持つ魔族たちであり、歴史の裏で暗躍していた者たちである。
 彼らはこれまで数々の事件を起こしてきたのだが、その目的は未だ不明であった。
 
 これまでになく強大な力を持つ敵であったが、死闘の末に何とかこれを撃破。
 無事にミーティアを救出することができた。


 そして事件解決後……カティアに試験結果の通知が届く。
 彼女は晴れて学園に合格し、レティシアやルシェーラの同級生となることが決まったのであった。




 そんな大きな事件がアクサレナで起きていた一方で、鉄道計画は順調に進んでいた。

 王都郊外に車両工場と車両基地が完成し、直ちに生産が開始される。
 イスパルナからの線路はトゥージスから更に先に伸び、試験運行の区間も日々伸びていく。
 王都側からは土木工事が予定通り着工。
 アレシア大河の架橋工事もついに始った。

 そして、開業に向けて運行部門の設立、人員募集、訓練などが本格的に開始され、開業日をいつにするか……という議論もされ始めていた。


 そんな中、レティシアは各方面で陣頭指揮を取り、忙しい日々を送っていたのだが……いよいよ学園に入学する日がやって来る。






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






「……どぉ?どこか変じゃない、パーシャ?」

 姿見に映る自分の姿をチェックしながら、レティシアは世話係のパーシャに確認する。

「いえ、とてもお似合いですよ、お嬢様」

 パーシャは主の支度を手伝い、その仕上がりに満足して笑顔で答えた。


(う~ん……これまでも何度か試着はしたんだけど、やっぱりまだ慣れないなぁ……)

 鏡に映る姿を見て、彼女は内心でひとりごちる。

 似合ってはいる……と、彼女も思ってはいる。
 しかしどうにも違和感が拭えないのだ。

(これ、まんま前世の学校の制服みたいなんだよね。有名私立校とかの。まあ、学園も似たようなものか。でも、女物の服はさすがにもう慣れてるけどさ、ここにきて女子高生みたいな格好をするのはねぇ……)

 前世では男子の制服を着ていた身とすると、彼女は何とも言えない気持ちになるのである。
 別に、恥ずかしいと感じてるわけではないようだが。

(……ま、そのうち慣れるでしょ。今日から毎日着るんだし)



 そう、今日はアクサレナ高等学園の入学式が行われる日。
 これから彼女は、晴れて学園生となるのである。


「それにしても……新入生挨拶の件は残念でしたね」

「いやいやいや……むしろ助かったよ。全校生徒の前で挨拶なんて緊張しちゃうもん。ほんと、カティア様々だよ」

 心底ほっとしたように彼女は言う。

 レティシアは一般入試で首席合格を果たしていた。
 なので、パーシャが言っていた通り本来は彼女が新入生代表挨拶をする予定だった。
 しかし、後に行われた推薦枠試験で、カティアが僅差ながらも上回る成績で合格したため、代表の座は彼女に移ったのだ。


「大体、王女様を差し置いて代表なんてできないよ」

「学園は身分によらず平等という事ですけど……」

「そんなの、たてまえたてまえ」

 自分自身は身分などあまり気にしていない癖に、彼女はそんな事をいう。
 実際のところ、身分が全く考慮されないわけではないだろうが……かなりゆるい・・・雰囲気であることは、彼女もリュシアンから聞いてはいた。


「さて……少し早いけど、そろそろ行きますか。初日から遅刻するわけにはいかないもんね」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 そうして、レティシアはモーリス公爵家王都邸を出て、アクサレナ高等学園へと向う。
 両親や兄はあとからやってくるはずだ。



 そして、高く澄み渡った秋空の下、彼女は新たな一歩を踏み出した。
 少しばかりの郷愁と、それ以上の高揚感を胸に抱いて……

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