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レティシア15歳 輝く未来へ
第129話 新たな友人たち
しおりを挟む学園に近づくにつれ、同じ制服を着た少年少女たちが目に付くようになる。
レティシアもその中に混じり、黙々と歩いていた。
そんな彼女に、誰かが声をかけてきた。
「おはようございますわ、レティシアさん」
レティシアが声の方を振り向くと、背後からルシェーラが歩いてくるところだった。
やはり彼女も同じ制服に身を包んでいた。
黒髪の彼女を見ると、やはり女子校生みたいだ……と、レティシアは思った。
「おはよ~、ルシェーラちゃん!今日からよろしくね!」
「はい、こちらこそ。同じクラスになれて良かったですわ」
「だねぇ」
ルシェーラだけでなく、カティアも同じクラスになることは既に分かっている。
兄から聞いた話では、1組だけは試験の成績上位者が集まるようになっているとのこと。
レティシアは一般入試の首席合格者であるし、カティアも同様。
そしてルシェーラも優秀な成績で合格していると言うことだ。
そうして二人は一緒に歩き始める。
他の学園生たちと同じように、他愛のない話をしながら。
しばらくして学園の正門が遠くに見え始めたころ、周りの学園生たちが何やら騒がしい事に二人は気がついた。
「なんでしょうか……何だかみんな、ソワソワしてるみたいですわ」
「ホントだね…………あ!ほら、アレだよ」
「アレ?……ああ、なるほどですわ」
学園生たちが何かに注目している、その視線の先を追ったレティシアがそれに気が付いた。
そして二人は、スタスタとそちらの方に向かっていく。
「カティア!おはよ~!」
「カティアさん、おはようございます」
そう、学園生たちの注目を集めていたのは、制服姿のカティアだった。
本人はもちろん、近衛騎士二人が護衛についているので目立つ事この上ない。
「あ、二人ともおはよう!今日からいよいよ学園生だね!」
彼女は元気よく二人に挨拶を返す。
「カティア、スピーチ頑張ってね!あなたが主席になってくれたから助かっちゃったよ」
「あはは……まあ、ぼちぼち頑張るよ。殆ど差は無かったらしいけどねぇ……」
「でもでも、やっぱりこういう式典なんだから、王女サマが挨拶する方が相応しいでしょ」
「学園では身分に関わらず平等なんでしょ?」
「そんなの、建前だね」
それはパーシャに言ったのと同じセリフである。
「きっと凄い注目を浴びるだろうね~……って、今もそうみたいだけど」
カティアだけでも周りの学園生たちから注目を浴びていたのだが、レティシアとルシェーラも加わって更に人目を引くようになった。
「カティアさんは美人ですからね。殿方の視線が凄いですわ」
「女子からの視線もそんなに変わらないよ。流石は武神歌姫王女で『星光の歌姫』のカティア様っ!……盛り込みすぎでしょ」
「……ほっといて。それにあなた達だって十分に目立ってるから」
「カティアさんには及びませんわ」
「そっすか……」
カティアも加わり、少女たちの会話は弾む。
楽しそうにお喋りしながら歩みを進め、学園の正門をくぐった。
王都の七番街区の大部分を占める広大な敷地を持つ『学園』。
その正門は、それに見合うだけの立派で大きなもので、敷地をぐるりと囲む城壁のような塀と合わせ、まるで城門の様にも見える。
当然、その学舎も歴史のある立派な建物が立ち並び、名門校に相応しい重厚な雰囲気を醸し出していた。
敷地内に入ると職員や上級生らしき生徒が、入学式が行われる大講堂に誘導する姿がそこかしこに見られた。
三人が人の流れに乗って歩いていると、横合いの道……学生寮がある方向からやって来た人物たちが声をかけてくる。
「カティア、レティ、ルシェーラ、おはよう」
そのうちの一人はステラだ。
そして、もう一人。
「カティア、おはよう!やっぱり目立ってるわね!」
そう言ってカティアに挨拶をしたのは、新緑のような鮮やかな緑の髪と瞳を持つ凛とした美少女。
今は髪で隠れて見えにくいが、少し耳が尖っている。
彼女は、イスパル王国ではあまり見かけることがないエルフ族である。
「ステラ、シフィル、おはよう!もう寮に住んでるの?」
「ええ、昨日から入寮してるのよ。シフィルと同室なの」
カティアの問いにはステラが答える。
シフィルと呼ばれた少女は、どうやらカティアとステラの知り合いのようだ。
そしてレティシアもルシェーラも彼女とは直接の面識は無いが、彼女のことは知っている。
「寮暮らしって言うのも、なかなか新鮮よねぇ~」
シフィルが楽しそうにそう言うと、ステラもそれに同意して頷く。
王族の彼女からすれば、寮暮らしは今まで経験のない事だろう。
「楽しそうだよね。落ち着いたら遊びに行きたいな」
「ええ、是非遊びに来て頂戴。……ああ、そちらの方は初めまして……だよね?私はアダレット王国から参りました、シフィル=エルジュと申します。ステラの友人、兼、学園内での護衛役……みたいなものです」
そこでシフィルがレティシアとルシェーラの方に向き合って、少しかしこまって挨拶した。
ステラと同じく、アダレット王国の出身……そして、エルジュ家が公爵位の貴族であることも、レティシアたちは知っていた。
「ご丁寧にありがとうございます、私はレティシア=モーリスと申します。武神杯での素晴らしい戦いは私も拝見してました。……カティアのお友達なら、私とも仲良くしてくれると嬉しいな」
「初めまして、私はルシェーラ=ブレーゼンと申します。よろしくお願いしますわ。私も武神杯でのカティアさんとの試合は拝見しました。機会があれば、是非とも手合わせをお願いしたいですわ!」
いま彼女たちが挨拶を返した通り、シフィルは武神杯本戦でカティアと対戦した相手だった。
なので、その試合を観戦していたレティシアたちも、彼女の事を知っていたのである。
彼女は僅差でカティアに敗れはしたものの、その実力はほとんど互角。
強力な風魔法の数々と、神がかり的な弓の腕前でカティアと激戦を繰り広げ、あと一歩というところまで彼女を追い詰めたのだ。
そして、試合後のパーティーでカティアと友人となった……という経緯である。
「お~い!カティア~!」
またも、カティアの知り合いらしい誰かが声をかけてきた。
ステラたちのあとから学生寮の方からやって来たのは、小柄で小動物のような愛らしさのある女の子。
童顔で、蜂蜜色の髪をツインテールにした髪型もあってか、随分と幼く見える。
金色の瞳がキラキラと輝き、楽しそうな笑みを浮かべていた。
「あ、メリエルちゃん!あなたも合格したんだね!」
カティアは自分の事のように嬉しそうに言う。
「ギリギリだったけど、何とか!」
「そっか、良かったよ。これからよろしくね!」
「うん!こちらこそ!」
「あ、みんな、こちらはメリエルちゃん。試験のとき一緒だったんだ」
「メリエル=ウィラーだよ!よろしくね!」
カティアが皆に紹介すると、彼女は嬉しそうに満面の笑みで元気よく挨拶する。
レティシアはその様子に、子犬のようにしっぽがブンブン振られている姿を幻視した。
「元気な娘だね~。私はレティシア=モーリスだよ。よろしくね、メリエルちゃん」
レティシアが挨拶を返すと、他の三人もそれに続く。
「私はルシェーラ=ブレーゼンですわ。よろしくお願いします」
「私はシフィル=エルジュだよ。よろしく」
「ステラ=アダレットです。よろしくお願いしますね。ところで、『ウィラー』と言うことは……」
聞き覚えのあるメリエルの家名に、ステラが少し遠慮がちに問いかけた。
「うん!ウィラー王国の第二王女だよ。そう言うあなたも……」
メリエルの方も、家名からステラの素性を察したようだ。
「はい、アダレットの王女です。ですが、この学園では身分の上下は関係ありませんから」
「そうだね、私も堅苦しいのは好きじゃないから!」
「それは私もだね。まあ、この面子はもともと身分差なんてそんなに無いんだし……気楽に行きましょ」
同じく王女のカティアが言う。
この場に集うのは、王女が三人に公爵令嬢が二人、侯爵令嬢が一人。
王族高位貴族ばかりである。
(よくよく考えなくても、凄いメンバーだね……ま、カティアの言う通り私達は同級生になるんだから、気楽に行こうか。彼女たちとは気が合いそうだし)
これまでを思えば、レティシアの同年代の交友関係は一気に広がった感がある。
そして彼女たちだけでなく、これからもっと多くの同級生に囲まれて毎日を過ごすことになるだろう。
そんな期待を胸に彼女は、これからの学園生活の第一歩となる入学式に臨む。
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