森の魔女の後継者

O.T.I

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SIDE:メリア


 飛竜の唾液で試薬を染み込ませた紙片を濡らす。
 果たしてその結果は……


「……当たりね。この子達は毒を与えられてるわ」

「ええっ!?」

 私の断言に中隊長は驚きの声を上げる。

 私は彼に、反応があった紙片を見せる。
 それは、元々は青い色をしているのだけど、唾液を付けた部分だけ赤くなっていた。

「この試薬に反応があったと言う事は……人間であれば、激しい頭痛、目眩、吐き気、発熱の症状が現れ……そこまで強力ではないけど、摂取量が多ければ死に至る事もある。そんな毒物が使われてるわね。多分、餌に混ぜられたんじゃないかしら?でも、割と色んな植物に含まれていて入手は容易なものだから、入手経路から犯人を探すのは困難かも」

「……誤って混入してしまった、という可能性は?」

「ん~……確かに紛らわしい食材もあるから、その可能性もあるけど。どちらにしても、飛竜は人間よりも体が大きいから、短期間で相当な量を食べさせないとこうはならないと思う」

「そうですか……まぁ、その辺りの調査はここの方たちに任せましょう。よろしいですよね?」

「は、はい!もちろんです!」

 グレンが中隊長に念押しする。
 口調は丁寧だけど、有無を言わさない迫力があるわね……
 でも、この中隊長もグルかもしれないのよね。
 任せちゃっても大丈夫かしら?
 ここで時間を取られるわけにはいかないから、仕方がないかもしれないけど……


 でも、今はとにかくこの子達をなんとかしないと。

 幸いにも、使われた毒は割とありふれたものなので、手持ちの薬で何とかできそうね。
 体重に応じて分量もそれなりに必要だけど……多分大丈夫だろう。
 『姫様』に使う可能性のある薬とも被らないし。



 私は目算で飛竜の体重を推し量る。

「中隊長さん、飛竜は皆この子と同じくらいの体重なんですか?」

「え?…ええ、身体の大きさは皆同じ位ですね」

「ありがとうございます。あ、そこの机と椅子をお借りしますね」

 厩舎の片隅に何故か机と椅子があったので、それを借りて調合をさせてもらうことにする。


 私は鞄から乳鉢・乳棒と幾つかの乾燥させた薬草などを取り出して、すり潰していく。
 そして、粉々に砕かれたそれを調合用の瓶に入れて水筒から水を注ぐ。
 粉を水に溶かしていくのだが、そのままだと中々溶けないので……口の中で呟くように詠唱、魔法も併用して溶融を補助する。
 すると、粉が溶けていくにつれて段々と粘りが出て、更に少し発熱もする。
 しばらくそうしてから、今度は小瓶を取り出して飛竜一頭分の分量だけ移した。


「さて、これを飲ませたいのだけど……」

 私はチラッとグレンの方を見た。
 すると、彼は意図を察して頷いてくれる。

 飛竜たちは国の財産だからね。
 薬を飲ませるにしても一応の許可が必要だと思ったのだ。


 そして、私は小瓶を持って再び飛竜に近付く。
 この子は私が薬を調合している間、じっと興味深げに見つめていたのよね。
 素直に飲んでくれると良いのだけど……



「これ、お薬なんだけど……飲んでくれるかな?」

「キュイ」

 どうやら大丈夫みたい。
 彼は返事するように一声鳴いてから、口を開けてくれた。

 ホント、賢いわぁ……

「ちょっと苦いかもしれないけど、全部飲んでね」

 そう言いながら私は小瓶の薬を全て口の中に注ぎ込む。
 すると飛竜は口を閉じて上を向き、ゴクリと喉を鳴らして薬を飲んでくれた。


「うん、いい子ね……効き目は割と直ぐに現れると思うけど……」

 と言っても、流石に今すぐ良くなるというわけでもない。
 ……と思ったのだけど。


「キュ?……キュイっ!!キュ~~ッ!!」

 力なく横たわって弱々しく鳴いてるだけだった飛竜は、突然身体を起こして大きな鳴き声を上げた。

 そして後ろ足で立ち上がり、翼を広げてしきりに動かす。
 それはまるで、身体の調子を確かめているかのようだ。


「あら、思ったより直ぐに効果があったみたい。調子はどうかしら?」

「キュイっ!!」

 元気よく返事をして、それからメリアに頭を押し付けるようにすり寄ってから顔を舐める。

「ふふ、くすぐったいよ……元気になって良かったわ」

「キュ」

「ワゥ~……」

 飛竜がメリアにじゃれついてるのを見て、レヴィが不満げな声を漏らしている。


「メリア、大人気ね」

「私、動物には好かれるのよね」

 人間には嫌われるという意味ではないわよ?


 さて、薬が効果覿面だということが分かったから、他の子たちにも飲ませてあげないとね。












SIDE:イェニー


 やはりメリアは凄い薬師であった。

 手際よく飛竜を診察し、毒を与えられたことを突き止め、即座に薬を処方して治してしまった。

 元気になった飛竜はすっかりメリアに懐いて、頭をグリグリと押し付けたり顔を舐めたりして愛情表現している。
 いいなぁ……

 動物に好かれるって羨ましいわ。



 そして、他の飛竜たちにも薬を飲ませると、皆すっかり元気になった。
 飛竜たちの間でメリアの奪い合いが始まるほど彼女は大人気だったわ。


 取り敢えず、私は蚊帳の外にされて不満そうなレヴィちゃんを慰める事にした。
 もちろん下心は……あります。
 スミマセン。










SIDE:グレン


 メリアが処方した薬のおかげで、飛竜たちは元気を取り戻した。

 流石に先程まで臥せっていたので、直ぐに飛び立てるのか心配だったが……
 どうやら飛竜たちはメリアのためにやる気を出してる、というのは厩舎番の言だ。

 であれば、当初の予定通り直ぐに飛竜籠で王都を目指すと言うことになった。


 既に籠の準備は行われていたので、あとは飛竜達に鎖を繋いで飛び立つだけだ。

 四頭立ての飛竜籠は俺たち全員が乗り込んでも余裕があるくらいの大きさで、長時間の空の旅でも快適に過ごせるだろう。


 そして、この旅の終わりに向けて、俺たちを乗せた飛竜籠は空へと舞い上がるのであった。


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