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15 空の旅
しおりを挟むSIDE:メリア
これが飛竜籠……想像とかなり違うわね。
それは、乗り物というより『部屋』だった。
私とレヴィ、グレンの部隊8名が入ると流石に少し手狭に感じるが、それでも全員が横になって休むのに十分な広さがある。
天井の高さも、長身の者でもかなり余裕があるくらいには高い。
「何か、イメージと大分違ったわ……」
「飛竜籠は初めてのようですね。どんなイメージだったんです?」
「『籠』って言うくらいだから、もっと剥き出しの吹き曝しかと……」
気球のゴンドラのようなものをイメージしてたんだけど。
全然違ったわ。
「高高度を飛行しますからね。飛竜たちは彼ら自身の固有魔法によって問題ありませんが、我々人間には厳しい環境です。この『籠』も、気温や気圧を調整する魔道具にもなってるんですよ」
「へぇ……凄いわね。でも、こんな大きなものを四頭だけで運ぶのは、ちょっと心配かも……」
元気になったとは言え、病み上がりなのだから……
あんなに可愛らしい飛竜達が健気に飛竜籠を運んでいるところを想像すると心配になってしまう。
「大丈夫ですよ。この籠は見た目よりも相当軽量に作られてますし、風魔法によって飛行を補助してくれるんです」
「飛竜も籠も貴重だから、なかなか借りられないのよ。私達は王命で動いてるから特例で借りられたの」
イェニーが、そう補足してくれた。
様々な魔道具が組み込まれた籠自体の価値も大きいし、飛竜だって飼育して訓練して…と、多大なコストが掛かっているであろうことは想像に難くない。
であれば、貴重な体験をさせてもらっていると思って、暫し空の旅を楽しませてもらいますか。
そう思った私は、幾つか設けられた窓の一つに近付いて外を見る。
窓にはガラスが嵌め込まれ開くことは出来ないが、十分な大きさがあり雄大な空の景色を眺めることができた。
「わぁ……」
思わず声が漏れる。
窓から眺める景色は思った以上に壮大なものだった。
下を見下ろせば、既に陸地は遥か遠くに。
そして未だ上昇を続けているようだ。
視線を上げると、連なる山々とその先の地平の彼方まで見通せる。
霞んで見えるのは海だろうか?
それは緩やかな曲線を描き、この星が球体であることを感じさせる。
そして、地平の彼方へと沈みゆく太陽は世界を赤く染め上げる。
息を呑む美しさというのは、まさにこういうものを言うのだろう。
まるで自分が世界を独り占めにしているような錯覚すら覚える。
私は暫し無言で、その光景に魅入るのであった。
SIDE:カール
夕日に照らされる彼女の横顔から目を離すことが出来ない。
微笑みながら景色を眺める様子は、まるで女神が地上の民を見守るかのようだ。
一幅の宗教画を鑑賞する時のような、神に祈りを捧げる時のような厳かな気持ちにすらなる。
こんなにも神々しく美しい光景があろうとは……
「カール?どうしましたか?」
「はっ!?も、申し訳ありません!!」
「?何を謝ってるのです?」
「い、いえ、何でもありません。グレン様、どうされました?」
唐突にグレン様から声をかけられて、驚きとともに現実に引き戻された。
いけない。
こんな浮ついた気持ちで任務に当たるなど、あってはならないことだ。
今は空の上だけど、気を引き締めるんだ。
「王都に着いてからの動きを話し合いますから、あなたも聞いてください」
「はっ!」
そう言ってグレン様は隊の皆を集めて話を始める。
メリアも行動を共にするため一緒に聞くことに。
「さて……皆も気が付いているだろうが、どうやら我々の任務を妨害しようとする輩がいるようだ」
……今回の飛竜の件を考えれば当然そういう結論に至るだろう。
メリアがいなければ毒を使われたことは分からずに、たまたまこのタイミングで伝染病などに罹ってしまった……と判断されていてもおかしくなかった。
「理由はまだ分かりませんが……おそらく、王都に着いてもなんらかの妨害があるかもしれません。そして、その場合に狙われるのは……」
……そうだ。
理由は分からなくても、姫の治療を妨害しようとしているのは明白。
だったら、なりふり構わずに直接的な妨害手段を取ってくるとすれば、狙われるのは……
姫を治せる可能性を持つ、魔女の後継者たるメリアだろう。
「狙われるのは、私ね」
しかしメリアは、自身が狙われるかも知れないと言うのに全く恐れる事もなく平然と言う。
彼女は恐ろしくないのだろうか?
それとも、虚勢を張ってるだけ……なのか?
あくまでも落ち着いて見えるその表情からは、読み取ることはできなかった。
SIDE:メリア
ちょっと!!
これ、私が狙われるってことじゃない!?
もう、ホントに厄介事だわ……
とりあえず、取り乱すのも癪なので何でもない風を装っているけど。
はぁ……真正面から来るなら返り討ちにする自信があるけど、暗殺者とか送られると……
とにかく、王都では一時も気が休まらないかも知れない。
一先ずこの隊のメンバーは信頼できそうではあるけど……
「とにかく、王都に着いたらメリアを一人にしないことです。……イェニー、同じ女性であるあなたが適任かと思うので、頼みますね」
「はっ!お任せください!必ずやメリアは護ってみせます」
うん、頼もしいわ。
まだ彼女が戦うところを見てないけど……雰囲気からは、かなりの実力者のように感じる。
まぁ、グレン隊の他の面々もそんな感じだ。
「お願いねイェニー。私もある程度は自衛できるけど、頼りにしてるわ」
「ええ、任せてちょうだい」
「それから、直ぐに姫様を診てもらえるように手配しますが……それも妨害によって直ぐには許可が下りないかもしれません。そうなった場合は……強硬策も考えなければなりません。あなた達にその覚悟がありますか?」
そのグレンの静かだが熱い言葉に、頷かない者はいなかった。
さぁ、王都では果たして何が起きるのか……?
何れにしても私がやることは唯一つ。
苦しんでいる人を救うことのみ。
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