【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
67 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!

叙任式1

しおりを挟む


 騎士の礼装を纏ったクレイとギデオンは、ディセフに案内されて叙任式を執り行うため王城内の聖堂へと向かっていた。

 今回は略式との事だが、諸々の式典などが省略されるだけで、手続は正規の手順に則って行われる。
 後日、ふたりは他の新規登用の騎士たちに混じって正式な叙任式にも参加する事になるらしい。


(二度手間で面倒くさいな……)


 と、クレイは思ったものの、早く騎士になれること自体は歓迎している。
 本来であれば試験の結果を確認したら、一度シモン村に帰る予定だったので、その手間は省けたとも言える。


(……後で手紙出しとかなきゃな。アイツはそんな気の利いたことしないだろうし。……しかし、アイツの事は何と伝えるべきか?)

 ……彼は本当に苦労性である。



「本来だったら騎士団長も参加するんだがな……生憎と遠征に出ていて不在なんだ」

 案内の途中でディセフが言う。
 本来の正式な式典は、騎士団長は当然として国の要職に就く者や高位貴族なども列席する盛大なものだ。


「騎士団長……確か、国王陛下と並んで王国最強の騎士……だっけか」

「そうだ。騎士の中の騎士、『大聖騎士』ディラック様だ。あの伝説の剣聖ジスタル様の一番弟子なんだぜ!」

「……え?」

 クレイの呟きに答えるギデオン。
 突然出てきた師の名前に、クレイは驚きの表情となる。


「何だ、知らなかったのか?王都では有名な話だぞ」

「あ、あぁ、いや……俺の村は辺境もいいところだからな。初めて聞いた」

「そうか。ディラック様は王都民の憧れの存在だからな、早くお会いしたいぜ。……ん?ディセフさん、どうしたんすか?」

 ギデオンは、ディセフは複雑そうな表情を浮かべているのに気がついて声をかけた。


「いや……あんまり幻想は持たないほうがいいぞ」

 その言葉と、ディセフの表情を見たギデオンは思った。
 エステルの事を話すときのクレイに似ているな……と。



 そして、そのクレイはと言えば。

(……師匠の一番弟子って事は、俺やエステルの兄弟子って事だよな。そんな事一言も言ってなかったけど……単に知らないだけかもしれんが)

 もしジスタルがそれを知っていたのであれば、別に隠す理由もないはず、と彼は思ったが……


(いや、師匠はあまり王都の事は話したがらないからな……昔なにがあったのかハッキリしないが、俺たちもあまり師匠の事は言わない方が良いかもしれん)


 因みにエステルがジスタルとエドナの娘であることは、騎士登用試験の願書に記載していたので騎士団の一部の人間には知られている。
 だがアルドが早々に口止めをしているので、その事実はそれ以上に広がっていない。




 そして彼らは聖堂へとやって来た。
 王城の中庭の一つに建てられたそれは、女神に祈りを捧げるためのもの。
 今回の叙任式のような式典にも良く用いられる。

 その大きさは街にある神殿とは比べ物にならないが、神聖な雰囲気はどちらも変わらない。
 中に入ると、色とりどりのガラスが嵌められた明り取りの窓から光が差し込み、より神聖な雰囲気を醸し出している。


 一番奥の女神像の前には、既に何人かの人が彼らを待ち受けていた。


(あの方が国王のアルド陛下か。確かに若いな……隣にいらっしゃるのは王妹のマリアベル殿下か)

 クレイは彼らがアランやマリアの正体とは気が付いておらず、完全に初対面だと思っている。
 自分の暮らす国の国王や王妹を目の前にして、流石にクレイも緊張を見せる。

 だが。


(……ん?逆隣にいる女性は……って!?)

 アルドを挟んでマリアベルとは反対側に視線を向けると、そこには彼が良く知る少女が立っていた。
 遠目でも直ぐに分かるその少女は、もちろんエステルである。

(おまえ何やってるんだ!?その立ち位置……それじゃあ、まるで……)

 王と並び立つなど王族か、あるいは…………
 そう思ったクレイの頭の中は大いに混乱するが、それは表には出さずにアルドたちの近くまで歩いていく。

 そして、近付いて見てもやはりエステルなのだが……クレイを別の衝撃が襲った。


(エステル……だよな?)

 内心で戸惑うが、エステルであるのは間違いない。
 何が楽しいのか、ニコニコとした笑顔のその表情は彼が良く知るものだ。

 だが……薄化粧を施し、きらびやかなドレスを着た彼女はいつにも増して美しかった。
 普段からエステルを見慣れている彼であっても、思わず目が奪われる程に。
 本当に本人か?と疑いの念すら沸き起こってしまう。

 そして、クレイは何だか落ち着かない気持ちになってきた。
 なぜアルドの隣に並んで立っているのか……心がざわめくが、彼はそれを自覚することが出来なかった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...