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剣聖の娘、裏組織と戦う!
訓練場
しおりを挟む騎士団の訓練場にやって来たエステルは、暫くは騎士や兵士たちの訓練を興味深そうに見学していた。
訓練の内容としては……型をなぞって素振りをしたり、走り込みをしたり、筋トレしたり、手合わせしたり……様々だ。
(ふむ……『まあまあ』かな?この中だとディセフさんとギー君だけ飛び抜けてる感じかな~)
エステル評の『まあまあ』は、戦いを生業にするものとしてはベテランと言っても良いくらいの強さである。
そして以前評した通り、ディセフとギデオンは『そこそこ』ランクだ。
この中では突出した実力を持っているが、エステルの食指が動くほどではない。
ディセフは、若手らしい騎士に手合わせ形式で指導中。
ギデオンはまだ入団したばかりなので、取り敢えずは走り込みをする事にしたらしい。
(ん~……アルド陛下と同じくらい強いって言われてる騎士団長さんは今不在なんだっけ?)
会うのを楽しみにしていた騎士団長は現在遠征中……と、エステルはディセフから聞いていた。
そうすると、今この場で彼女が自分から手合わせしたいと思える者は特にいない。
(……そしたら、私も走り込みと素振りやって、クレイが来たら手合わせしようかな?)
そう考えた彼女は、キョロキョロと訓練場の中を見渡す。
そんな彼女の様子が気になるのか、チラチラ……と男たちが視線を向けるのだが、エステルは全く気が付かない。
訓練場の外周はかなりの距離があり、何人かが走っている。
エステルはギデオンがやって来るタイミングを見て走り出した。
「やほ、ギー君!」
ギデオンに合流したエステルは気軽に声をかけて並走を始めた。
「お、おう……そ、その『ギー君』ってのは止めてくれねぇか?」
初対面で心を奪われそうになった相手が話しかけてきたので、どもりながら彼は答える。
「なんで~?」
「な、何でって……」
もちろん気恥ずかしいからだが、それを言うのも意識しているようで気恥ずかしい……なんて複雑な男心のギデオンである。
……正直キモい。
そしてエステルは、そんな複雑な男心など理解するはずもない。
「……まぁいいか。しかし嬢ちゃ「エステル!」……エ、エステル?」
「なあに?」
「あんた、クレイより強えってのは本当か?」
名前呼びに少し照れながら、しかし彼は気になっていたことを聞く。
クレイの言う事を信じていない訳ではないのだが……こうして改めて見ても、強さを感じ取ることが出来ないのだ。
(殆ど全力疾走の俺に、息も乱さず平然と付いてくるあたり、只者じゃねぇのは分かるんだが……どうにもな……)
要するに、彼はまだエステルの可憐な見た目に惑わされてるのだ。
何なら折れた恋愛フラグも復活するかもしれない?
「ん~、クレイとは結構いい勝負になるけど……最近は負け無しだよ!」
「マジか……」
クレイのエステル評は、堂々の最高ランク『強い!』だ。
彼女が今までそう評したのは、彼と父ジスタル、そしてアルドだけだ。
「クレイが来たら手合わせしよ~かと……って、来たね!」
エステルが訓練場の入口に目をやれば、ちょうどアルドとクレイが姿を現したところだった。
そしてエステルはギデオンを置き去りにして一気に加速、他の騎士や兵士たちをゴボウ抜きにして、彼らのもとに駆け寄っていく。
「は、速え…………」
そのあまりのスピードにギデオンは呆然と呟くが、まだ彼女の本気の走りは、あんなものではないと知ったら……どんな反応を見せるのだろうか?
「クレイ!アルド陛下!て~あ~わ~せ~!!」
「……いきなりだな。少し落ち着け」
二人の前にやって来たエステルは、さっそく対戦を所望する。
先日アルドと対戦して多少は発散できたが、ここ最近は思うように鍛錬が出来ていない彼女は相当飢えていた。
クレイは苦笑しながら、そんな彼女を落ち着かせるが……
「ん……?クレイ、なんか元気ないね?大丈夫?」
エステルはクレイの様子の僅かな変化を察知して、心配そうに聞く。
男心には鈍感なくせに、そういう所は目ざとい。
長い付き合いだから些細な変化にも気付けるのだろうが……
アルドが複雑そうな表情を浮かべているのは、エステルにとって幼馴染の存在が特別なものだと感じたのだろう。
「そ、そうか?気のせいだろ」
一瞬ドキッとしながら、クレイは何でもない風を装う。
「そう?なら良いけど……。拾い食いでもしたのかと思ったよ」
「するか!?……お前じゃあるまいし」
「失礼な!!拾い食いなんかしないよ!!……それよりもさ~、クレイ~。手合わせしよ~よ~」
エステルはクレイの袖を掴んで揺らしながら、甘えるような声でおねだりするが……その内容には色気など全く無い。
だが、二人を見るアルドの目は益々不機嫌なものになる。
「待て待て……これから俺とギデオンの紹介がある……」
「いや、ちょうどいい機会だから、先に皆にお前達の実力を見てもらおうか」
クレイの言葉を遮ったのは、いつの間にか近くに来ていたディセフだ。
「陛下、よろしいですよね」
「ああ。直ぐに執務に戻ろうと思ったのだが……俺もクレイとエステルの戦いには興味があるな。二人とも、良いか?」
「……分かりました」
「もちろんです!」
主人たるアルドにそう言われては、クレイは断ることなど出来ない。
そして、エステルはもちろん大喜びで答える。
こうして、エステルVSクレイの戦いが行われる事になるのだった。
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