【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
75 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!

『好き』

しおりを挟む

「も~、ひどいんだよクレイは!」

「まぁまぁ、落ち着いてエステルちゃん」

 後宮の庭園にある四阿ガゼボにて、エステルとマリアベルがお喋りに興じている。


 クレイとの手合わせを終えたエステルは、『次はギタギタにするかんね!おぼえてろ~!』という捨て台詞を残して訓練場を立ち去った。
 
 その場の騎士たちが、ポカン……としていたのは言うまでもない。

 ディセフが『お、おい、作戦の説明は……』と言っていたのも耳に入らなかった。


「でも、二人とも本当に凄かったわ。速すぎてほとんど見えなかったけど」

「えへへ~、ありがとう!……でも、負けたの悔しい~!」

 マリアベルに褒められて一瞬だけご機嫌になるものの、直ぐに思い出してプンスカするエステル。
 彼女は何事にもあっさりしていて引きずらないタイプなのだが、こと剣の手合わせに関してはこの限りではない。

 とは言っても、完全に実力で負けていたのならとっくに切り替えているはずだ。
 やはり、クレイの『禁じ手』がよっぽど腹に据えかねたのだろう。


「ふふ……でも、クレイくんも意外と大人げないのねぇ……もっと達観してる印象だったんだけど」

「クレイはいつもあんな感じだよ?」

「ふ~ん……」

 そこでマリアベルは、手をおとがいにあて、暫し思案に暮れる。
 

「どしたの?」

「……ねぇ、エステルちゃん?あなた、クレイくんの事はどう思ってるのかしら?」

「ほぇ?どう……って?」

 マリアベルの漠然とした問いかけに、エステルはキョトンとして聞き返す。

「ほら、何ていうか……『かっこいい!』とか、『ステキ!』とか……」

「う~ん?…………あ!『お母さん』みたいかも!」

「お、お母さん……?」

 エステルの答えにガクッ……となるマリアベル。
 同い年の男の子を捕まえてそれは無いでしょう……と彼女は思ったが。


「だってさ~、いろいろ口煩いし、私のこと子供扱いするし~」

 エステルは母エドナのことは大好きであるが、ちょっと口煩いところは苦手である。
 そして、クレイも似たようなところがあるのでそう答えたのだが……せめて『兄』ではないだろうか。
 彼の方はエステルを『妹』のようだ……と思ってるのだが。


「ま、まぁ……家族みたいに仲が良いってことよね」


(なるほどね~……この様子だと、彼に恋心を持ってると言う事はなさそうだけど。でも、家族みたいな愛情から男女の愛に変わるなんて良くある事よね)

 ひとまず、そう理解するマリアベル。



「じゃあ、アルド兄様の事は?」

「陛下?え~とね、強くて優しいから好きだよ!」

 屈託なくエステルは答える。
 特に彼女にとって『強い』というのは重要ポイントである。


(ふむ……感触は悪くないわね。でも、いま言った『好き』ってクレイくんに対するものと同じよねぇ……。まあ、同じスタートラインに立ててるだけでも良しとしますか。妹としては、エステルちゃんには兄様とくっついて欲しいところだけど……まぁ、今後も見守っていきましょう)

 そう考えたマリアベルは、取り敢えずは静観する事にしたようだ。



 そんなふうに二人がお喋りをしていると、四阿ガゼボへと近付く者がいた。


「あ、レジーナさん!ごきげんよ~!」

 気が付いたエステルが声をかける。
 対ご令嬢用挨拶が飛び出すが、どこか軽い感じがするのは何故だろうか……

 そう、やってきたのはレジーナだった。


「ご機嫌よう、エステルさん。それに……マリアベル様?なぜこちらに……?」

「あらレジーナ様、ご機嫌よう。まぁ、堅いことは仰らないでくださいな。友人のエステルとお喋りをしていただけですわ」

 後宮に王妹が居ることを不思議そうに聞くレジーナに対し、マリアベルは何処か警戒した様子で、エステルに対するものとは異なるよそいきの言葉遣いで答えた。

「あ、いえ……別に咎めてる訳ではございませんわ」

「そう……それなら良いのですけど」



(あれ?二人ともいつもと雰囲気が違う……そう言えばレジーナさんって確か王族だったよね。そしたらマリアちゃんとは親戚だと思うんだけど……その割にはよそよそしい感じだな~)

 二人の間に流れる微妙な空気を何となく察するエステル。
 あまり何も考えないように見えて、彼女は意外と他人同士の空気は読むことができる。
 ただ思い込みが激しいので、気の利いた対応が出来るかどうかは別の話だ。

 なので……

「取り敢えず、レジーナさんも座ってお喋りしません?」

 などと提案してみたものの、それが正しい選択だったのかは分からなかった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...