【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
103 / 151
剣聖と聖女の帰還

発端



「……ジスタルとデニス様は、スラムの住民を何とかしようと視察に来たの」

 ジスタルと出会った時のことを思い出しながら、エドナは話を続ける。


 当時の王都は様々な要因により幾つかのスラム街が存在し、犯罪の温床となっていることが問題視されていた。
 しかし、犯罪行為をいくら摘発してもイタチごっこであり、国家上層部は日々頭を悩ませていた。

 結局のところ抜本的な解決のためには……まともに職に就く事ができない貧困層や、身寄りのない子供たちを何とかする必要があったのだ。


「それで、デニスが親父さんに頼まれて現状視察に行くってんで、俺も付き合わされた……ってわけだ」

「……ふふ。あなたの方から頼んできた……って、デニス様が言ってたわよ。その後も随分と積極的に関わっていた……とも。流石は正義の騎士様よね」

 妻の言葉に、頬をかくジスタル。
 どうやら照れているらしい。


「そういった経緯から、スラム街の住民に対する様々な支援政策が行われて……その一環として、エル・ノイア神殿には救護院が設立されることになったの。……私達姉妹も、そこに引き取られたのよ」


 そして、当時の救護院の院長は現大神官のミラである。
 彼女は身寄りのない子供たちの『母』として愛情を注ぎ、立派に巣立つことが出来るように教育にも力を入れた。
 エドナとリアーナも彼女を母と慕い、過酷なスラム暮らしから一転して、平穏で幸せな日々を手に入れた。


「そして……私と姉さんはそこで『聖女』の素質を見出されたの」

 それを聞いたレジーナは、義母ミラがアルドに明かしていた『判別のための道具』の存在を思い出す。
 おそらく彼女たちも、その道具によって素質を見出されたのだ……と。
 そして、救護院に引き取られた資質のある子供たち……身寄りのない彼女たちに、目をつけた者が現れたのだろう、とも。


「姉さんはもともと身体があまり丈夫ではなかったのだけど……それでも普通に暮らせていたのは、加護があったおかげらしいわ」


 聖女候補として、姉妹の神殿内における地位は更に向上する。

「勉強に、教養に、聖女としての振る舞いに……いろいろ覚えることがたくさんあって大変だったけど。姉さんがいて、ミラ母さんがいて、救護院の仲間がいて……充実した日々だった。……騎士になったジスタルも、様子を見によく来てくれたし」

 懐かしそうに、彼女は柔らかな微笑みを浮かべながら言う。
 厳しくも楽しかった日々を経て、姉妹はやがて正式に聖女となる。
 今度は聖女としての仕事で忙しくなったが、充実した日々であることに変わりはなかった。


 だが。
 エドナの微笑みが、辛そうな表情になる。

 ずっと続くはずだった幸せの日々。
 それが崩れ去るのはいつだって唐突である。
 ……彼女はその事を既に、身を持って知っているはずだった。



 歯車が狂い出したのは、姉妹が引き取られてから数年後のこと。


「ある時、私達の同期の聖女が何人かいなくなったの。その中には同じ救護院出身の娘もいたし、別の街の救護院から来た娘もいたのだけど……『救護院出身』という点だけは共通していた」

 その話になると、レジーナは眉をひそめる。
 そしてその表情を見てエドナは察する。

「どうやら……その辺の事情は知ってるみたいね」

「……自分で調べただけなので細かくは知りません。ですが、ある程度の経緯なら……」

 レジーナの言葉に一つ頷いてから、エドナは続きを話し始める。


「当然、私はミラ母さんに事情を聞いたんだけど……『良縁があった』としか聞かされなかった。もちろんそれで納得はしなかったし、そもそも当の母さんも腑に落ちていない様子だった」

 今では最高位の大神官の地位にあるミラ。
 彼女は当時でも、かなり高位職ではあったが……神殿上層部の意思決定に関わるような立場ではなかった。
 故に、彼女がエドナに答えた言葉も誰かから聞かされたものに過ぎない。


「何かがおかしい……と思っても、何も知らない私たちにはどうすることも出来なかった。そして、それ以降も時どき似たような話しがあったのだけど……。ある日、ついに姉さんもいなくなってしまった」


 果たしてその時……エドナの姉、リアーナの身に何が起きたのか。
 そして、どのような経緯で彼女はレジーナを産むことになったのか……

 話は、いよいよ核心へと迫る。
感想 16

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?