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剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!
オークション開始
しおりを挟む誘拐された少女たちの闇オークションが開催されようとしていた頃、レジーナはある人物を尾行していた。
彼女はジスタルとエドナから昔話を聞いたあと、彼らを国王アルドと引き合わせるために王城へと向かったのだが……あいにくと入れ違いになってしまった。
そのため二人はレジーナに、「一旦宿に戻る」と言ってその場で別れた。
そして彼女も、後宮に戻ろうとしたのだが……王城から出ていくある人物に気付いた。
その人物に声をかけようとしたものの、深刻そうな表情をしていたのが妙に気になり……彼女は自身の直感に従って、あとをつける事にしたのだった。
(神殿に戻る……と言うわけではなさそうね。どこに行くつもりなのかしら?)
自分が知るあの人であるなら、普通であれば真っ直ぐ神殿に向かうはず……と、彼女は思ったのだが、いま向かっているのは別の方角だ。
その点において、レジーナの直感は正しいのかもしれない。
そうして、その人物とレジーナは王都市街を抜け、外壁の東門までやってくる。
(……外に出るの?……本当に、どこまで行くのかしら?)
疑問を感じながらも尾行を続け、彼女は再び外壁の外に出る。
その人物の行動に何の意味があるのか……今はまだ分からない。
しかし、一連の事件に何らかの関係があると彼女の直感は告げていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
更に時を同じくして。
街道の、王都まであと十数キロほどという地点。
十数名ほどの騎兵の集団が馬を走らせていた。
そのスピードは通常の行軍のものではなく、ほとんど全力疾走に近かった。
彼らは皆、エルネア王国騎士団の制服と軽鎧を纏っていた。
長旅をしてきたらしく、彼らが騎乗する軍馬には大きな荷物が括り付けられている。
馬の消耗も考えずに飛ばしていることからすれば、彼らが相当に急いでいる事が分かる。
「だ、団長!!ディラック団長!!どうしたんですか、急に!?」
騎士の一人が、集団の先頭を行く隊長らしき騎士に、馬が駆ける音に負けないように大声で問いかけた。
他の騎士たちよりも立派な装いをしたその騎士……エルネア王国騎士団団長であるディラックは、振り返らずに更なる大音声をもって応える。
「分からん!!『漢の勘』だ!!」
その答えはおよそ常人には理解しがたいものだろう。
彼の部下の騎士たちも、その『勘』とやらが何の根拠も無いことを知っている。
しかしそれが、良く当たると言うことも。
少なくとも、某自称聖女騎士様の『女の勘』などよりも当たるはずだ。
ともかく。
自分たちが大きな信頼を寄せる『大聖騎士』ディラックの言葉であれば、きっと何かが王都に待ち受けているはず……部下の騎士たちはそう考えて気を引き締める。
そしてそれは、騎士団長自らが率いるこの特務部隊が追っていた事件にも関わるものでもあるのだろう、と。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
古代劇場跡地にて、ついに開かれた人身売買の闇オークション。
その『商品』となる少女たちは、舞台上で『顧客』たちにその姿を見せていた。
首にかけられた札に書かれていた番号の順に、横一列に並ばされて。
どうやらエステルは一番最後のようだ。
おそらくは目玉商品と言うことなのだろう。
文字通り値踏みするような視線が、無遠慮に彼女たちに注がれる。
もはやここに至っては、殆どの少女たちは諦めの表情となっている。
残された僅かな希望を捨てていないのは、エステルから騎士団が動いていることを聞かされているクララくらいのものだ。
『こういうのって、「服を脱げ!」とか言われるかと思ってました』
『もしそうなったら、その時点で即突入する。……だがすまない、あともう少しだけ待ってくれ。部隊の展開が終われば、あとはタイミングを見計らって……』
『はい。私はまず、皆の安全確保……ですね。そのあとは……悪者全員ギッタギタにします!』
事前に申し合わせていた事を、二人は改めて確認する。
失敗は許されないので慎重に……しかし、事が起これば迅速に動かなければならない。
豪胆なエステルであっても、流石に時間が近づくにつれて緊張感が高まっていく。
そしてついに、舞台上に立つ白仮面の男の一人がオークションの開催を告げる。
「お待たせしました。本日はこのような場所まで遥々お越し下さり、まことにありがとうございます。今回も自慢の『商品』を取り揃えておりますれば……どうか皆様のお眼鏡に適う事を心より願います」
それは淡々とした口調で、場を盛り上げるような意図は全く感じられない事務的なもの。
何に使うのか、司会役の男は鞭を手にしている。
彼の口上を受け、観客席の黒仮面の者たちから控えめな拍手が起こった。
それから……やはり事務的に、特にもったいぶるようなこともせずに、早々に最初のオークションが始まる。
「一番、前に出ろ」
短く、だが有無を言わせぬ口調で司会役の男が言う。
しかし番号で呼ばれた少女は立ち竦んで動くことが出来ない。
当然とも言える少女の反応に、男はあくまでも冷酷に繰り返す。
「一番、前へ。それとも、痛い目を見たいのか?」
そう言って男は、ピシッ!と、手にした鞭を床に打ち鳴らした。
少女がビクッと震えてから、慌てて一歩前に踏み出すと、バイヤーから舐め回すような視線が集まり、少女の恐怖心は頂点に達する。
そして、しばらくすると何人かの手が上がる。
指を折って数字を示しているようだ。
「……100……200……」
次々とバイヤーたちの手が上がり、値がつり上がっていく。
司会役の男だけが確認の声を発するのみで、粛々と進行する様はどこか儀式めいていて不気味である。
やがて手が上がらなくなり、落札値が決したようだ。
「……他になければ一番は1,200で落札です」
(1,200……クロナってことは無いよね……?)
エステルはその数字に眉をひそめる。
人一人の値段がそれでは流石に安すぎる……と、彼女は思ったのだが、相場がどれくらいなのか分かるわけでもない。
そして落札された少女は一旦下がって列の中に戻る。
どうやら落札者への引き渡しは後で行われるようだ。
(直ぐに連れてかれるようだったら、もう待てないと思ったけど。とりあえず、もう少しだけ様子見の時間はあるみたいだね。その間にへ~かたちの準備も終わるかな)
と、彼女がそう考えたところでアルドからの念話が来る。
『エステル、待たせたな。こちらの部隊展開は終わったぞ。何人か見張りがいたから無力化に多少時間がかかったが……』
待ちに待ったその連絡。
あとはゴーサインが出るのを待つのみ。
エステルの闘気は、もう爆発寸前であった。
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