【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!

祈り



 謎の男達に捕らえられてしまったレジーナは、自分の軽率さを激しく後悔していた。
 モーゼスの行動を訝しみ、誰にも相談することなく一人で追跡を行った。
 その浅はかな行動が招いた結果がこれである。

 もっとも、誰にも告げずに単独行動を取った……という点においてはモーゼスも同じだ。
 二人とも、自分自身の手で何とかしたいという焦りにも似た気持ちが先走ってしまったのである。



「モーゼス、剣を捨てよ。あの小娘が何者かは知らぬが、見捨てるわけにはいくまい。お前は、仮にも聖職者だろう?」

「……どの口が言う」

 ミゲルは勝ち誇ったように命じ、モーゼスは苦々しく悪態をつきながらも言われたとおりに剣を手放した。


「モーゼスさん!!」

 レジーナが悲痛な叫びを上げる。
 首筋に当てられた短剣も無視して彼女は飛び出そうとするが、男の一人が彼女の腕を捕らえて後ろ手に捻り上げた。

「あぅっ!?」

「よせ!!乱暴するな!!…………私はどうなっても構いませんが、彼女の身の安全は保証してください」

 既に覚悟を決めている彼はミゲルに嘆願する。
 彼らが大人しくレジーナを解放してくれる可能性は低いかもしれないが、せめてそれだけでも……と。

 彼にとってレジーナは、大神官ミラと共に幼い頃から面倒を見てきた大切な相手。
 そして、やはり大切に思っていた姉妹の……リアーナが命と引き換えに遺した娘。
 絶対に守らなくてはならない。


(……やはり女神様は、まだ私の罪を赦してはいなかった)

 彼はミゲルが追放されて以来、彼の悪事に加担していたことを後悔し罪を償う道を選んだ。
 精神干渉を受けていた事など言い訳にせず。

 そして人々の心の安寧のために日々活動し、地道に努力を重ねて生きてきた。
 そんな彼を周りの者たちも認め、ついには大神官補佐の地位にまで至ったが……犯した罪が赦されたなどとは思っていなかった。
 だからこそ、今ここで報いを受ける時が来た……と。

 しかし、レジーナには何の罪も無い。
 自分のせいで彼女が巻き込まれるのは耐え難い苦痛である。
 それに……報いというならば、この場には更に罪深い者がいる。

(女神エル=ネイアよ、私は今ここで報いを受けます。しかし、彼女だけはどうかお救い下さい。そして……願わくば、悪業深き者共に裁きの炎を!)

 彼は心の中で女神に祈りを捧げながら、目を瞑って両手を組み、その場に跪いた。


「……どうやら観念したようだな。まあ、安心しろ。お前の願い通り、その娘の命は保証してやろう。命はな・・・

 モーゼスが抵抗を諦めたことを察したミゲルは、下卑た笑みを浮かべながら言った。
 彼のセリフからすれば、命の保証はしても解放する気は無いことが読み取れる。
 しかし彼女を人質にされている状況では、モーゼス一人だけではもはやどうすることも出来ない。


「しかし、その娘……レジーナと言ったか?どこかで……」

 ミゲルがふと呟いた言葉に、モーゼスはギクリとなる。
 レジーナが前王バルドの娘であることを知る者はそれほど多くはない。
 しかし、神殿の上層部や貴族階級の者たちにはそれなりに知られている。
 裏組織の情報網がどれほどのものかは不明だが、ミゲルがどこかで耳にした可能性はあるだろう。

 そして、もし彼女の素性が知られれば……果たしてどういうことになるのか?
 もしかしたらレジーナ自身にとってはむしろその方が良い結果となるかも知れないが、エルネア王国としてはどうなのか?
 モーゼスにはその判断がつかなかった。


 おそらくミゲルは、エルネア王国を敵対視する他国に通じていると思われる。
 そう思ってモーゼスが謎の男達を見れば……リーダーと思しき男の佩剣、その鞘に刻まれていた紋章が目に止まった。

(あれは……そうか。全てが繋がった……!しかし……)

 彼は紋章が示す国に心当たりがあり、それが一連の事件の黒幕であることを知ったが……それを知っても、もはや他の誰かに報せる機会がない。
 こうなってしまうと単身行動だったのが悔やまれる。



 もはや彼には女神に祈ることしか出来ない。

 ミゲルはその様を見てほくそ笑む。
 彼はかつて大神官という地位にありながら、女神の存在など信じていなかった。
 祈りが……信仰がもたらす力など信じていなかった。


 しかし。


 その祈りは天に届いた。









「ぐはぁっ!!?」

「「「!!?」」」

 レジーナを捕らえていた男が、突如として悲鳴をあげて倒れる。
 その場にいた誰もが何が起こったのか分からず、驚きのあまり立ち尽くした。


 そしてその場に現れたのは……


「庭先がずいぶん騒がしいと思って来てみれば……こんなところに鼠が紛れ込んでいようとはな。我が娘にその薄汚い手で触れることの愚かさ、身をもって知るがいい」

 あくまでも無表情に……しかし瞳には怒りの炎を宿し、前王バルドは言い放つ。
 その腕の中に、愛するレジーナを抱きながら。


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