【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!

事件の総括

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 人身売買組織の壊滅作戦により、少女連続誘拐事件は紆余曲折を経ながらも一応の解決を見た。

 だが、未だに多くの謎が残されている。
 そこで、各人が持つ、あるいは新たに入手した断片的な情報を共有し事件の全体像を明らかにする必要があった。
 そのための会議がこれから行われるのだ。

 既に日は落ちており、普段であれば城内勤めの文官たちも仕事を終えるくらいの時間……しかし今日は彼らも様々な出来事の後始末に追われ、慌ただしい雰囲気が城内に漂っていた。

 
 今回の会議の出席者といえば……
 議長となる国王アルドと、その補佐を務める宰相フレイ、側近の近衛騎士ディセフ。
 騎士団長ディラック。
 前王バルド。
 神殿を代表して、大神官補佐のモーゼス。
 そして成り行きから参加することになった、元王国騎士団所属のジスタル。

 過去から現在に至る一連の事件において、直接的・間接的に大きく関わってきた者たちが主要メンバーだ。
 その他、騎士団や文官の重職の者たちが列席する。


 古参の騎士たちはジスタルに気付くと驚き、そして嬉しそうに声をかけた。
 ジスタルも懐かしい顔ぶれとの再会に喜びをあらわにし、会議が始まるまでの間はディラックと共にしばし彼らと談笑する。
 何度か騎士団への復帰を請われたが(特にディラックは「是非騎士団長に……!」などと言い出す始末)、彼は苦笑しながらやんわりと断っていた。
 成り行きで騎士団を辞めたとは言え、今の暮らしの方が性に合っている……と言って。



 そうしている間に、会議の開催時間となった。

「まず、大きな戦いのあとにも関わらず集まってくれたことに感謝する。ジスタル殿も……お疲れの中にも関わらずご足労頂きありがとうございます」

 先ず最初に、議長のアルドがそう告げた。
 流石にこの場では『義父』呼びはしないが、やはりジスタルに対する配慮は欠かさない。
 心象を良くしようと必死のアピールである。


「では情報を整理しよう。今回の人身売買組織壊滅作戦については、一先ず成功……と言っても良いだろう」

 闇オークションの現場を押さえ、組織の幹部や顧客と思しき者たちも軒並み捕縛した。
 同時に地下施設も一斉に捜査の手が入り、多くの構成員を捕らえることに成功した。
 これによって組織は壊滅状態になったと言えるだろう。

 しかし問題の全てが解決したわけではない。
 だから、あくまでも『一先ず』ということだ。


「残る問題の一つは、組織の首領について。騎士団の捜査では捕まえることはできなかったのだが……」

「本拠と見込んでいた屋敷は我々が踏み込んだ時には既にもぬけの殻でした」

 アルドの言葉を引き継いだディセフがそう報告した。

「……伯父上?」

 そこでアルドは伯父……前王バルドに話をふった。
 彼は一つ頷いてから口を開いた。


「私は今回の事件の経緯はあまり知らぬが……前大神官ミゲルが組織の首領だったのだろう。私とレジーナ、モーゼスは王都郊外で奴と遭遇し……そして、奴は死んだ。他国から来たと思しき一団の手にかかって。……口封じだな」

 その事実を初めて聞く者も多かったらしく、どよめきが起きる。
 それが収まるのを待たずにバルドは更に続ける。

「今回の事件……人身売買は隠れ蓑で、本来の目的は聖女を探すことだったのではないか……と聞いた。かつての事件のときにも、私のもとに送られたのとは別に行方不明となった聖女がいたはずだ。おそらく、その頃から奴は他国に通じていたのであろうな」
 
 どよめきは更に大きくなった。

 バルドが娘に語った『聖女はエルネア王国でしか生まれない』という事実は、この場にいる者であれば知る者もそれなりにいる。
 当然アルドもその一人であるが、彼はそのあたりの話についてはより詳しいはずの者に視線を向ける。
 その視線の先にいた者……モーゼスは王の意図を察して口を開いた。

「聖女の力が女神様の祝福の賜物であり、縁の地であるエルネアでしか生まれないのであれば、他国がそれを欲するというのは理解できなくもないでしょう。しかし…………」

 そこで彼は一度考える素振りを見せてから、自身の推論を話し始めた。

「確かに聖女の『癒しの奇跡』の力は大変貴重なものです。しかし、言ってみれば『怪我を治す』だけの力。それだけのために拉致するというのは……あまりにもリスクが大きい」

 そして彼が言うには……
 エル=ノイア神殿は信仰を得るため、聖女を集めその力を民に施している。
 それはエルネア王国だけでなく、要請があれば他国にも派遣することもあった。
 故に、女神エル=ノイアはそのような国々の民たちの信仰をも集めていた。
 もし、聖女に危害を加え神殿に敵対するような真似をすれば……女神を信仰する多くの民の反発を招くことにも繋がるだろう。

 その話にアルドは頷き、一つの推論を口にする。

「つまり……そのようなリスクを冒してでも拉致するほどの理由がある」

 沈黙が落ちる。
 果たしてその理由とは何なのか?
 それについてもアルドは何か考えがあるようだが……しかし彼はそれを口にはせず、それとは別の話を切り出した。


「モーゼス殿……『アロン』の名に心当たりは?」

「!…………私の兄の名です。どこでそれを……?」

 突如出てきた名にモーゼスは目を瞠ったが、直ぐに落ち着きを取り戻して聞き返す。
 だが、彼は何となくアルドの答えを察していた。

「組織の幹部として捕縛した。大きな怪我をして治療中だが、生命に別状はないと聞いている」

 その言葉を聞いてモーゼスはほっとした様子を見せるが、どこか悲しげでもあった。


「彼は最初、我々に対して非協力だったのだが……どう言うわけか、突然『竜』の出現を警告し我々に「逃げろ」と言った」

「……おそらくミゲルが死んだタイミングで、奴が兄にかけていた洗脳の魔法……いや、『呪い』が解けたのでしょう」

「ふむ……そういう事か……それなら、ある程度は情報入手も期待できるかもしれんな」

 最後に見たアロンの様子を思い出しながら、アルドは得心がいったと頷いた。
 そして更に続ける。

「実は……我々と戦った時、彼は人間とはまるでかけ離れた異形に変じたのだ」

「……異形?それは一体……?」

「もう元の姿に戻っているのだが、まるで竜と人間が融合したような姿だった。仮に『竜人』と呼んでいる」

「竜人…………」

 その姿も強さも、およそ人間を凌駕した存在だった事をアルドは皆に説明する。
 もしエステルやクレイがいなければ、果たして無事に倒せていたかどうか。
 おそらく彼が竜人から人間に戻ることが出来たのも、エステルの力によるものだろう……当のアロン本人やアルドはそう考えていた。

「つまり……俺が言いたかったのは、その『竜人』と聖女の力には何らかの関わりがあるのではないか……と言うことだ」

「「「…………」」」

 再びその場に沈黙が落ちる。

 アルドの推論はあくまでも断片的な情報から導き出したものであり、確証があるわけではない。
 ほとんど勘と言っても良いだろう。
 しかし、それに対して誰も異を唱えることはできなかった。


「まあ、そのあたりはアロンから話を聞かなければはっきりしないだろう。それよりも今は……聖女を欲していた『他国』とやらだ。モーゼス殿?」

 推論の話はそこまで……と、アルドはまたモーゼスに話をふる。
 組織の首領だった前大神官ミゲルに最も近かったのは、この場ではモーゼスである。
 彼であれば何か知ってるのではないか……と期待を込めてのことだ。


「……私も、ミゲルが他国に通じていたというのは、予想はしていても確証はありませんでした。しかし……」

 ミゲルを迎えに来たと思われる一団。
 そのリーダーらしき人物の正体佩剣に施されていた紋章を、モーゼスは思い出す。
 そして、それが指し示す国の名を明らかにした。

「…………そうか」

 アルドは静かに呟いた。
 それから、しばらく熟考するかのように瞑目する。
 他の者たちは彼が再び口を開くのをじっと待つ。

 やがて、アルドは目を開き徐ろに告げる。

「その証言だけでは色々と言い逃れも出来よう。しかし……我が国としては正式に抗議せねばなるまい。釘を刺す意味でもな。不穏な動きを見張る必要もある」

「では早急に抗議文の草案を作成致しましょう」

「諜報部隊を組織します」

 アルドの言葉を受け、宰相フレイと騎士団長ディラックが応じた。

「頼んだぞ。……さて、あとはディラックの方だな」

「はっ!報告いたします!」


 騎士団長ディラックが自ら部隊を率いて追っていた事件。
 それは、エルネア王国と友好関係にある国からの警告に端を発する。
 かの国で厳重に保管されていたはずの『封魔珠』が何者かに奪われ、そのうちの幾つかがエルネア王国に持ち込まれたかもしれない……という事だった。
 中には、伝説に語られるような強大な力を待ったいにしえの魔物を封じたものもあったと言うことから、事態を重く見たアルドが直々にディラックに捜査を命じたのである。

 そして、ディラックは順を追って捜査の経緯を報告する。
 国境の街から始まった捜査は難航を極めたが、僅かに残された情報から足取りを追い、最終的には……

「結局、どうやら王都に運ばれたらしい……というところまでは掴めたので、急ぎ帰還する事にしたのですが……あとはご存知の通りです」

 という事だった。

 そして、アロンが用いた『ルゥ・ガルゥ』を呼び出したものや、ミゲルが最後の罠として残したものこそ盗まれた『封魔珠』であり、二つの事件は繋がっていた……と、いう結論をもってその場の認識は一致した。




 こうして一連の事件は様々な課題を残しつつも、一応の解決を見た……と、総括されるのだった。

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