もう恋なんてしたくないと思ってた

梨花

文字の大きさ
12 / 12

11

しおりを挟む
あのピアスは3月プレゼント攻撃の第1弾だった。

引越しが終わった日曜日。
夕食時に那賀さんはやってきた。
手早くできるようにとトマト鍋を高遠さんが用意してくれていた。
「引越し祝い?」
ケーキを持ってきてくれた。
「引越しに祝いも何も…。」
あたしが言うと
「高遠さん~、やよいが冷たい…。」
なんなんだ、この人は。
「あたしに甘えてこないで下さいー。」
キッチンから返事がきた。
とりあえずいただいたケーキは冷蔵庫にいれる。
「最近の那賀さんは別人みたいですね。」
鍋を3人で囲みながら高遠さんが言った。
「やよいの前だから、かな。
ちょっと甘えたくなる。」
鍋のせいじゃなくて頬があつい。
「でも甘えさせてもらえないのはどうしてなんですかね?」
「まだ恥ずかしいんだね、きっと。」
そういうことになるのか…。

食事を終えてデザートにいただいたケーキをたべる。
あたしはベリーのムース。
高遠さんは芋と栗のタルト。
那賀さんはシュークリーム。
「こっちはホワイトデーのお返し。」
高遠さんとあたしにべつべつに渡された。
高遠さんはフランスのメーカーのボディソープとボディミルクのセット。
あたしは。
「那賀さんっ!」
「俺のネクタイピンとお揃いだね。」
あたしがあげたネクタイピンと同じブランドの腕時計。
高遠さんは苦笑するだけだ。
「こんな高そうなの…。」
「そんなに高くないよ。
それよりしっかり使ってくれたら嬉しいな。」
シルバーだろうか、スモークのかかったいろにピンクの文字盤。
ベルトも金属で大人の女性ってイメージだ。
「わかり…ました。」
那賀さんは腕時計を箱から出してあたしの左手を取り、腕時計をつけた。
「どう?気に入ってもらえたかな?」
「はい…。」
「社会人になるんだからこういったきちんとしたものもってたほうがいいと思ったんだ。」
そこまで考えてくれたんだ…。
「ありがとうございます。」
あたしは素直に受け取ることにした。

那賀さんはケーキを食べると早々に帰っていった。
女性だけが住んでいるところに長居するのは失礼だし、ましてややよいが引っ越した当日だからね。
なんて言い残して。

「未だにやよいの趣味がわからないって嘆いてたけど。」
ちらっとあたしの手首を見て高遠さんは口元に笑みを浮かべた。
「どうですか?今の気持ちは。」
「正直、プレゼントをもらい慣れてないので。
不安です…。」
元カレはあたしの誕生日やクリスマス、ホワイトデーなんかにプレゼントをする人じゃなかったと思う。
あたし自身があまり興味がなかったのもあるけど。
あたしがいつもあの男に求めていたのはお金で買えないものだった。
そのことに気がついていなかったのだろうか。
ただ1つ。ふたりでゆっくり過ごす時間が欲しい。それだけだったのに。
「那賀さんなりの愛情表現なんだから素直に受け取ってあげるのが1番よ。」
「愛情表現、ですか?」
「そうでないと…、1日に何回も目にするものは贈らないわよ?」
愛情なのか何なのか、今のあたしにはわからないけど。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

yukiya
2017.11.25 yukiya

とても、面白くて一気に読んでしまいました!!
更新、待ってます!

お身体に気をつけて、頑張って下さい(●^o^●)

解除
chii
2017.05.11 chii

こんばんは。面白いお話しを見つけました。続き、気長にお待ちしています。急に暑くなりましたね。お身体に気を付けて頑張って下さい。

解除

あなたにおすすめの小説

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

夫が勇者に選ばれました

プラネットプラント
恋愛
勇者に選ばれた夫は「必ず帰って来る」と言って、戻ってこない。風の噂では、王女様と結婚するらしい。そして、私は殺される。 ※なろうでも投稿しています。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。