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ある日のこと、俺はルシアと共に冒険者ギルドを訪れた。というのも、最近この町では行方不明者が続出しているというのだ。


「アーク様、何かあったんですか?」


ルシアが心配そうに尋ねてくる。彼女には詳しく話していないが、大賢者である俺の勘は何かがあると告げていた……


「とにかく行くぞ」


俺とルシアはギルドの中へと入った。中はかなり混雑していて騒がしい。おそらく何かの依頼でも貼り出されているのだろう。俺たちはカウンターへと向かった。


「おはようございます……」


俺が挨拶すると、受付嬢は少し驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔で応えてくれた。


「おはようございます、どのようなご用件でしょうか?」


「最近この辺りで行方不明者が出ると聞いてきたんだが……詳しいことを教えてくれないか?」


俺が問うと、彼女は困ったような顔をした。


「アーク様といえどギルドの情報を漏らすわけには……」


「心配なんだ。何かが起こっているなら知っておきたい」


俺がそう言うと、受付嬢はしばらく悩んだ後に小さく溜息をついた。そしてゆっくりと話し出す。


「実はこの町のどこかに『邪神教団』と呼ばれる組織が存在するという噂があるんです。彼らは魔族と取引をしているようで、このアーガスの近くでも魔族を見たという噂もあるんですよ」


「なるほど、それで行方不明者が出ているということか……」


俺が考えていると、ルシアが俺の手を握ってきた。彼女の顔を見ると不安そうな表情を浮かべているのがわかる。俺は彼女の手をそっと握ると、安心させるように微笑みかけた。


「安心しろ、俺が必ず助けてやるからな」


ルシアは嬉しそうな笑みを浮かべる。その笑顔に癒されながら、俺は冒険者ギルドを後にしたのだった……





「あれが邪神教団のアジトか」


俺とルシアは町の郊外にある古びた屋敷の前にいた。周囲には人気がなく、静まり返っている。


「ルシア、準備はいいか?」


「はい、大丈夫です」


彼女は力強く答えると、杖を構えた。彼女の装備は以前のような白いローブではなく、動きやすい軽装に変わっていた。これは大賢者である俺の提案によるものでもある。邪神教団のアジトに乗り込むのだから当然のことだ……


「行くぞ……」


俺はそう言って屋敷の中へと入っていく。中は思ったよりも暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。


「気をつけてください、アーク様……」


ルシアが緊張した様子で言う。俺はそんな彼女の手を強く握ると、ゆっくりと先へと進んでいった……

俺たちは警戒しながら進んでいく。しかし何事もないまま奥へと進むことができた。そしてついに最奥部へと辿り着く。そこには巨大な扉があった。どうやらここが教団のアジトらしい……俺は覚悟を決めると、扉に手をかけたのだった……

扉を開けるとそこは広い部屋だった。壁一面には奇妙な紋様が描かれている。床には赤い絨毯が敷かれており、その上には黒いローブを着た男達が数十人ほど歩いていた。おそらくこの連中が邪神教団の信徒なのだろう……


「アーク様、あれを!」


ルシアが指さす方向には人影があった。フードを被っているため顔は分からないが、体格的に男であることが分かる。彼はこちらを振り向いた瞬間、ニヤリと笑みを浮かべた。


「ようこそ我が城へ……」


男が芝居かかった口調で言う。その声に聞き覚えがあった……俺は警戒を強める。こいつは只者ではない……俺の勘がそう告げていたからだ。


「お前が邪神教団の幹部か?」


俺が問うと、男は愉快そうに笑った。


「その通りでございます。私は大司教の地位を持つ者……」


男は恭しくお辞儀をしてみせる。その態度とは裏腹に、彼から発せられる魔力は禍々しいものだった……


「何故この町を狙う? 魔族との繋がりは何だ?」


「簡単なことですよ……魔族様は我々に力を貸してくださる存在なのです。あのお方の望みを叶えることが我々の使命……そのためには邪魔なものを排除する必要がありました」


「魔族の目的とは何だ?」


「それは知りませんな……我々の目的は人間族の滅亡にある。そのために魔族様の力が必要だというだけのことでございます」

男は大袈裟な身振り手振りを交えながら演説を続ける。奴の自信は相当なものだ、よほど強い力を持っているのだろう……俺はルシアと目配せをすると、攻撃を仕掛けることにした。


「悪いが、お前を倒す!」


俺が叫ぶと同時に杖を振る。魔力の弾を生成し撃ち出す魔法だ。それをまともに受けてもなお、男は余裕の表情を見せていた……


「無駄なことですよ」


男が手をかざすと、見えない壁のようなものが生成される。俺の放った攻撃は全て防がれてしまった……だがそれでいい。これは牽制に過ぎないのだから……


「ルシア! 今だ!」


俺は合図を送ると同時に後方へ下がる。それと同時にルシアが魔法を発動した。


「【稲妻の槍(サンダースピア)】!」


凄まじい雷鳴と共に稲妻が男に向かって降り注いだ。直撃した男は絶叫を上げながら倒れ伏す。しかしそれでもなお、男は生きていた。


「馬鹿な……この私が負けるなど……」


男が立ち上がろうとするも、既に満身創痍であり立ち上がることができないようだった。俺はゆっくりと近づいていくと、男に語りかける。


「抵抗しなければ命までは取らない」


俺の言葉を聞いた男はニヤリと笑みを浮かべた。


「そうですか……では最後に一つだけ教えて差し上げましょう……」


男の口が僅かに動くと、声が聞こえた。それは意味のある言葉ではない、ただの音だ。だが何かを伝えようとしていることだけはわかった……そして男は動かなくなると完全に絶命してしまったのだった……


「アーク様……」


ルシアが不安そうな表情を浮かべている。俺は彼女の手を握ると言った。


「大丈夫だ、心配するな」


そう言って微笑みかけるも彼女はまだ不安そうにしていた。俺はそんな彼女の額に優しく口づけをすると、ぎゅっと抱きしめてやる……するとようやく落ち着いたようだ。


「帰ろうか……」


俺の言葉にルシアは小さくうなずいたのだった……
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