「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる～今更戻ってこいと言われてももう遅い～

19

数日後、俺たちはルシアの故郷であるエルフの里へやってきた。

ここは森の奥深くにある小さな集落で、人口は百人程度しかいないらしい。エルフ族は自然と共に生きる種族であり、狩猟や採集などで自給自足の生活を営んでいるそうだ。


「ようこそいらっしゃいました」


長老のフレイさんが出迎えてくれた。彼は杖をついていて高齢であることが窺えるが、背筋は伸びており威厳のある人物という印象だった。


「しばらくお世話になります」


俺は丁寧にお辞儀をする……すると彼は微笑みながら言った。


「いえいえ、ゆっくりしていってください」


俺たちは彼に案内されるまま家へ向かった。そして中へ足を踏み入れると広いリビングのような場所があり、テーブルや椅子などが置かれていた。俺はソファに腰掛けると一息ついた。それを見た長老が話しかけてくる。


「お疲れでしょう、食事の用意をしておきました」


テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていた。俺たちはそれを頂くことにする……どれも絶品で満足のいく味だった。エルフ族ならではの食材を使った料理に舌鼓を打ちながら楽しいひと時を過ごした……。


「明日は森の散策に出かけてみませんか？」


ルシアが提案すると、長老は嬉しそうに言う。


「それはいい！ ぜひ楽しんでいただきたいですな」


というわけで翌日はエルフの里を探索することになった。森の中を歩き回るうちに珍しい植物や動物に出会い、とても楽しい時間を過ごすことができた。日が暮れる頃には疲れ切っていたので、その日は早めに寝ることにする……翌朝目を覚ますと身体中が痛いことに気が付いた……どうやらはしゃぎすぎたようだ……俺は苦笑しながら起き上がると朝食の準備を始めたのだった……。それから数日間、俺たちはエルフの里でのんびりと過ごすことになった。ルシアと一緒に森を散策したり、長老の家で歴史書を読んだりと穏やかな日々を過ごしていた……しかしそんなある日のこと……事件は起こったのだった……。


「大変だ！ 巨大な魔獣が現れたぞ！」


外から悲鳴が聞こえてくる……それを聞いた俺は慌てて外へ飛び出した。するとそこには体長10メートル以上ある巨大な魔獣の姿があった……！ 鋭い牙と爪を持ち、真っ赤な目をしているその姿は恐ろしいものだった……どうやら森の中で眠っていたところ目を覚ましてしまったらしい。この魔獣はエルフ族にとっては災いの予兆となる存在で、一刻も早く退治しなければならないとのこと。


「皆さんは家の中に避難してください！」


長老が叫ぶ。エルフたちは怯えながらも従った。俺は剣を構えると魔獣に向かって駆け出す……！


「【火球（ファイアーボール）】」


炎の球が魔獣に向かって飛んでいく！ それは直撃して爆発を起こした！ しかし魔獣にダメージはないようだ……むしろ怒りを増幅させたように見えた。雄叫びを上げながら突進してくる魔獣の巨体を避けると、今度は剣で斬りつける……！ 鋭い金属音が響き渡り火花が散った！


（くっ……硬いな……！）


俺は歯を食いしばりながら腕に力を込める。そして思いっきり剣を突き出すと渾身の一撃を放った！ すると一瞬だけ怯むような素振りを見せたがすぐに反撃してくる。大きな爪を振り上げると振り下ろしてきた！


「くっ……！」


何とか避けると距離を取る……魔獣は追撃してくるが、俺はそれを躱しながら魔法を唱えた！


「【氷雪乱舞（ブリザードラッシュ）】」


魔獣の周りに無数の氷の刃が出現し、次々と襲いかかる！ 魔獣は痛みに耐えかねたのか悲鳴を上げると怒り狂いながら突進してきた……！ 俺はそれを避けると距離を取った。すると今度は長老が魔法を発動する。地面から巨大な植物のツタが生えてきて魔獣を拘束した！


「今です！トドメを刺しなさい！」


長老の言葉に従い、俺は剣に魔力を込めた……そして一気に距離を詰めると剣を振り下ろす！


「はっ！！」


鋭い音が響き渡り、魔獣の体が真っ二つに切り裂かれた……そしてそのまま倒れ込み絶命したようだ。


「やった……」


俺は安堵の息をつくとその場に座り込んだ。するとエルフたちが駆け寄ってきた……口々に感謝の言葉を述べながら抱きつかれる。長老は満足そうに微笑むとこう言ったのだった。


「これでこの森は救われました……本当に感謝していますよ」


俺はその言葉に微笑みながら答えた。その後はみんなで宴を開き楽しい時間を過ごすことになった。食事の後は長老の家に泊まることにしたのだが、夜になると一人ずつエルフたちがやってきて自分の得意なことを教えてくれた。


「私の得意なことはポーション作りです！ ぜひ試してみてください！」


「私の特技は料理です！ 是非とも食べてくださいな！」


「私の特技は狩猟です！ ぜひ一緒に狩りに行きましょう！」


彼女たちは口々にそう言い、俺にアピールしてきた。


「もう！ アーク様は私と一緒に過ごすんだからダメです！」


ルシアが頬を膨らませると、他の子たちは残念そうな表情を浮かべる。しかしすぐに笑顔を浮かべると別の話題を始めたようだ……俺は彼女たちとの楽しいひと時を過ごしたのだった……。