追放された魔界のプリンスは人間界で無自覚に無双する～え、ドラゴンくらいワンパンで倒せるでしょ～

10

ある日のこと、俺たちは生徒の依頼で万病を治すと言われる薬草を採取するために北の山に向かっていた。


「さ、寒い……」


エレナが寒そうに身体を震わせる。


「大丈夫か？」


俺は心配になり声をかける。するとエレナは頷いた。


「うん……なんとか……」


「ほら」


俺はエレナに自分の上着を貸した。彼女は礼を言うと、それを羽織る。


「暖かい……ありがとう」


エレナは微笑むと、再び歩き始めた。


「グルルルルッ！」


白銀の毛並みをした狼、スノーウルフの群れが俺たちの前に立ち塞がった。


「こいつは手強そうだぜ！」


俺は剣を抜くと構える。しかしエレナは呪文を唱え始めた。


「《氷結の嵐》！」


エレナが杖を振ると、凄まじい冷気が吹き荒れる。スノーウルフは一瞬で凍りつき、砕け散ってしまった。


「やったぜ！」


「お疲れ様、デウスくん」


俺とエレナはハイタッチをした。それから俺たちは再び目的地に向かって歩き出す。


「ふう……やっと着いたな……」


俺とエレナは数時間かけてようやく山頂までたどり着いた。周囲には雪が積もり、幻想的な雰囲気を醸し出している。


「綺麗……」


エレナは感動したように呟く。


俺たちは早速、依頼された薬草を探し始めた。しかしなかなか見つからない。するとエレナが何かを発見したようだった。


「デウスくん！ あれ見て！」


彼女が指差す方向を見ると、そこには白い花をつけた植物が群生していた。


「あれが薬草か」


採取しようとしたら、上空から白い鱗のドラゴンが襲ってきた！


「こいつは！？ ドラゴン！？」


俺とエレナは即座に戦闘態勢に入る。しかしその時、ドラゴンが話しかけてきた。


「人間たちよ……その薬草を採ろうとするのはやめてもらおうか……」


突然現れたドラゴンに俺たちは戸惑った。だがすぐに冷静さを取り戻すと、質問をした。


「どうしてだ？」


するとドラゴンは語り始めた。どうやらこの白い花は一年に一度しか咲かないという貴重な花で、それを独占して大金を稼ぐ者たちがいるのだという。この山にはドラゴンたちの住処があり、彼らはその者たちに怒りを覚えているのだ。


「その薬草が必要な人が多いんです。どうか見逃してくれませんか？」


エレナは頭を下げた。するとドラゴンは深くため息をつく。


「ならば我を倒してみるがいい。そうすれば薬草は自由に採ってよい。ただし、我に勝てたらの話だが……」


俺はエレナと目を合わせた。どうやら戦うしかなさそうだ。


「望むところだ！ 行くぞ！」


俺とエレナは同時に攻撃を仕掛ける。だがドラゴンの鱗は想像以上に硬く、全くダメージを与えられない。それどころかこちらの攻撃は全て弾かれてしまう始末であった……


「《氷結の嵐》！」


エレナは再び魔法で攻撃する。しかしそれでもドラゴンには通用しなかった……


「この程度か……これで終わりだ」


ドラゴンは吹雪のブレスを吐き出す。


「《暗黒の獄炎（ダーク・インフェルノ）》！！」


俺はエレナの援護をするように呪文を唱えた。すると目の前に巨大な漆黒の炎が現れ、吹雪のブレスを相殺する。


「なにっ！？」


ドラゴンは驚愕の表情を浮かべる。俺は剣を構えると一気に駆け抜けた。そして一閃する。


「我の負けだ……」


ドラゴンは倒れると絶命した。そして俺たちは薬草を採取すると、山頂を後にした。