追放された魔界のプリンスは人間界で無自覚に無双する～え、ドラゴンくらいワンパンで倒せるでしょ～

11

ある日のこと、俺たちは旅の途中で温泉宿に訪れていた。


「やっと着いたな」


「疲れた……」


エレナと俺は旅館に入り、早速温泉に浸かることにした。何でもこの温泉は美肌効果があるらしく、女性客に人気のスポットだという。


「じゃあ行くか」


俺が服を脱ぎ始めると、エレナも恥ずかしそうにしながら脱衣を始めた。そしてお互い生まれたままの姿になると浴室へと向かう。


「おおー！ すげー！！」


そこはまるで楽園のようだった。雄大な山々を一望でき、露天風呂からは湯気が立ち込めているのが見えた。俺とエレナは早速湯船に浸かる。すると全身に染み渡るような感覚が広がり心地よい気分になった。


「はあ……気持ちいい……」


エレナは幸せそうに目を細める。俺もその心地よさに身を委ねた。


「デウスくん、背中流してあげるね」


エレナが笑顔で言う。俺は喜んでお願いすることにした。すると彼女はタオルを手に取り、俺の背中を洗い始める……のだが、なぜか手つきが妙にいやらしいような気がする。


「おい、エレナ……何やってんだよ？」


「何って……洗ってあげてるんだけど？」


エレナは平然と答える。だがその手つきは明らかにいやらしかった。俺は彼女の手を掴んで止めると、そのまま湯船から上がる。


「もう十分だ！ 出るぞ！」


俺は慌てて浴室を出たのだった。


「湯上がり御膳でございます」


仲居さんが料理を運んでくる。俺は早速箸を手に取り、料理を口に入れた。すると口の中に広がる旨味に思わず顔がほころぶ。一方エレナはというと、なぜか不満げな表情だった。


「どうしたんだ？」


俺が尋ねると、エレナは頬を膨らませる。そして拗ねたように答えた。


「だってデウスくんの背中流したかったんだもん……」


どうやらさっきのことを根に持っているようだ。俺は苦笑しながら言った。


「また今度な」


するとエレナの表情がパッと明るくなる。


「本当？ 約束だからね！」


こうして俺たちは食事を続けたのであった。そして完食すると、今度は色々な温泉に入っていく。


「まずは砂風呂だな！」


俺とエレナは砂の中に身を沈めた。すると体の表面がサラサラになっていくような感覚がする。しばらく浸かっていると、だんだん身体が火照ってきた。そしてしばらくすると肌がツルツルになった気がする。


「次は温泉プールだ！」


エレナと共にプールに入る。水の中はひんやりとしていてとても心地良かった。俺は浮き輪に乗ってプカプカ浮いていると、突然後ろから押されるような感覚に襲われた。振り返るとそこには水着姿のエレナがいるではないか！


「えへへ……押してあげるよ！」


エレナはニコニコ笑いながら、勢いよく押してきた。俺はジタバタするが全く逃れることができず、水の中に沈んでいく……そして水面から顔を出すと、そこには無邪気な笑みを浮かべるエレナがいた。俺は少し悔しかったが、彼女の笑顔を見ると怒る気にはなれなかった。


「次は炭酸泉だ！」


俺とエレナは勢いよく湯船に飛び込んだ。すると身体の中に細かい泡が入り込んでくるような感じがした。さらに炭酸ガスによって血行が良くなり、全身が活性化していくような感覚を覚える。


「次は洞窟風呂だ！」


俺たちは洞窟の奥に進んでいくと、そこは大きな岩壁でできた天然の浴場があった。中に入ると心地よい熱気が身体を包み込み、心身ともに癒されていくようだった。しばらくすると身体中から汗が噴き出るのを感じた。だがそれがまた心地よくて堪らない……気がつくと俺は夢心地になっていた……


「最後は岩盤浴だ！」


俺とエレナは室内に入ると、大きな岩盤の上に横になった。すると身体中から熱が発生してきて、血行が促進されていく。さらに大量の汗が流れ出し、体内の老廃物や毒素が排出されていくような感覚があった。俺はあまりの気持ちよさに意識を失いかけてしまった……


「ふう～最高だな～」


俺たちは旅館でのんびりしていた。窓から差し込む月明かりに照らされた夜空には満天の星が輝いている。そんな中でふとエレナが言った。


「今日は楽しかったね！」


俺は微笑みながら答える。


「ああ、また一緒に来ような」


するとエレナは嬉しそうな顔で言った。


「うん！ 約束だよ！」


こうして俺たちは最高の思い出を作ることができたのであった。