世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

24

海から上がると、ちょうど昼時だったので昼食を取ることにする。パラソルを立ててその下にレジャーシートを広げるとその上に座り込む……リリアナが準備してくれた昼食を食べ終えると、俺は彼女たちに尋ねた。


「これからどうする？」


すると二人とも考え込むような仕草を見せた後、ほぼ同時に口を開いた。


「アベルさんと一緒に居たいです」


「アベル様と一緒に居たいです……」


見事に被ったな……だが俺としてはどちらと過ごすべきか迷うところだ……俺は少し考えてから口を開いた。


「二人とも、どっちがいい？」


俺がそう尋ねると、二人は顔を見合わせて頷いた。どうやら意見は一致しているようだ……さてどうしたものかな……俺が悩んでいるとリリアナが提案してきた。


「三人で遊びませんか？せっかく海に来たんだし……」


リーゼロッテも同意するように頷く。そうだな、確かにここで悩んでいても仕方がない……俺は二人の言葉に甘えることにした。


「わかった、三人で遊ぼう」


俺がそう言うと二人は嬉しそうな表情を浮かべた。そして俺たちは海で遊ぶことにしたのだが……しばらくして俺はふとあることを思いついた。せっかくだし二人に俺の泳ぎを見せてやろうかな？ 俺は立ち上がると二人に声をかけた。


「ちょっと泳いでくるよ」


俺の言葉に二人はきょとんとした表情を浮かべるが、すぐに笑顔で送り出してくれた。さてとまずは軽く泳ぐかな……そんなことを考えながら波打ち際まで歩いていくと、足先からゆっくりと水に入っていく……最初は冷たさを感じたがすぐに慣れた。そのままある程度の深さまで来たところで、俺は一気に泳ぎ始めた……しばらく泳いでいると、ふと後ろを振り返ってみる……二人とも俺のことを見てくれているな……少し恥ずかしい気もしたが俺は二人に見せつけるように泳ぐことにした。


「アベルさんすごいです！」


リリアナがはしゃいでいるな……リーゼロッテは微笑んでいるだけかと思っていたが、どうやら彼女も嬉しいみたいだ。俺はその後も何往復も泳いだあと砂浜に戻ってきた。俺を見ていた三人もこちらにやってきた。


「アベル様、素敵でした」


リーゼロッテがそう言って褒めてくれる……少し照れるな……俺は誤魔化すように咳払いすると、二人に尋ねた。


「次は何をしようか？」


俺の言葉にリリアナが元気よく手を挙げた。


「砂でお城を作りましょう！」


どうやらお城を作るつもりらしいな……まあいいだろう、せっかくだから俺も挑戦してみるとするか。三人で砂浜に向かうとリリアナはせっせと穴を掘り始めた……器用なものだな……感心しながら見ていると、リリアナは俺に向かって話しかけてきた。


「アベルさん、見ててください！ 私が立派なお城を作りますから！」


俺は微笑みながら頷くと、リーゼロッテに声をかけた。


「俺たちも始めるか？」


彼女はコクリと頷いた。リーゼロッテは指で砂に絵を描き始めた……どうやら鳥をイメージしているらしいな……なかなか上手く描けているじゃないか……感心していると彼女は恥ずかしそうに俯いた。


「こんなのしか描けません……」


確かに上手とは言い難いかもしれないが、一生懸命描いたんだろうなということは伝わってくるぞ。俺は彼女を励ましながら作業を続けた……しばらくしてリリアナのほうを見ると、彼女のほうはもう完成したらしい……立派なお城ができていたな……しかし俺のほうはまだだった。


「アベル様、手伝いましょうか？」


リーゼロッテが心配そうな表情で尋ねてくるので俺は首を横に振った。


「いや、もう少しかかりそうだから一人で頑張るよ」


そう言うと彼女は心配そうにしながらも頷いてくれた。それからしばらく黙々と作業を続けているとようやく完成した。我ながら見事な出来栄えだ！ 俺が満足げに眺めているとリリアナが声をかけてきた。


「アベルさん、こっちも出来ましたよ！」


彼女のほうを見ると立派な城が出来上がっていた。さすがはリリアナだな……リーゼロッテのほうを見てみると彼女もまた可愛らしいお城を完成させていた……これも見事だな！俺が褒めると二人は嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます」


「えへへっ、ありがとうございます♪」


それから俺たちは昼食を取ることにした……今度はリーゼロッテが作った弁当を食べることになったのだが、これがまた絶品だった！ 思わず感動してしまったほどだ……！ その後俺たちは三人でビーチバレーをすることになった。最初はうまくいかなかったが徐々にコツを掴んでいき、それなりに楽しむことができたと思う。


「楽しかったですね！」


リリアナが満足そうな表情で話しかけてくる。リーゼロッテも笑顔を浮かべているな。俺も楽しかったと思っているよ……その後はしばらく休憩したあと、三人で水をかけあったりして遊んだりした……やがて日が落ちてきたので俺たちは帰ることにした。帰りの馬車の中で俺は二人に話しかけた。


「今日は楽しかったか？」


そう尋ねると二人は笑顔で答えてくれた。


「はい！とても楽しかったです！」


「私もです……」


そう言ってくれると嬉しいものだな……俺は微笑みながら二人に言った。


「また三人で遊びたいな」


すると二人は笑顔で頷いてくれた……今度はもっと大きなイベントを起こしてやろう……そんなことを考えながら馬車は屋敷へと向かっていくのだった……