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第135話 俺、ビーディと一緒にエルフ達を救出する

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 檻の中ですすり泣くエルフ達。
 俺は目の前にある鉄格子を両手で左右に押し曲げ手を差しのべる。

「あ、貴方達は……」
「良いから早く。もうこんな所にいる必要はない」

 手を掴んで牢からエルフを救い出した。顔つきから恐らく男性のエルフだろう。皆同じ様なボロ絹を着せられているようだ。

 俺が他の檻に手をかけようとした瞬間、一斉に店内全ての鉄格子がお菓子の入った袋を引き破くかの如く開かれエルフ達は自身が自由になったとわかると狂喜の歓声を上げた。

『はーい、エルフの皆さーん宜しいですかぁ? この街に同じ様な扱いを受けた、もしくは奴隷商のお店を知っているって人いますかぁ?』

 エルフ達は互いを見合わせ、ビーディの方へ向き直ると先程俺が助けた男性のエルフが口を開いた。

「この国はそこら中に奴隷商の店があるんです。全部助け出すとなるとどれ程の規模となるか……」
『なるほど~よくわかりました』

 ビーディが俺のそばへとやってくる。

『なんかむちゃくちゃ数いるっぽいよ? 助け出すにしても輸送手段どうする?』
「俺は輸送機に変形できるライトニングボルトがある」
『マジ? 良かったぁ。俺輸送手段に適したパワードギアなんて持ってないからさぁ』
「え? お前電車に変形できるパワードギアのナイトパーティがあるだろ」
『いや線路ないし』
「線路がないと走れないって誰が決めた?」
『いやいや無理だから』
「できねぇじゃねぇんだよ。やるんだよ。それに列車砲型のパワードギアである強襲型弩級装甲列車きょうしゅうがたどきゅうそうこうれっしゃジークフリート九七式改お前持ってただろ」
『そうか! キューナナ改には自生線路機能が付いてる! あいつにナイトパーティを連結させれば走行可能になるし乗車人数も増やせて一石二鳥! けんちゃんって変な所で地頭いいよなぁ』
「うっせー」
『という訳でエルフの皆さんは外へどうぞ』

 店の外壁が何の前触れもなく一気に崩れさり大きな穴ができた。

「サイコキネシス便利だなぁ」
『でしょ~。これがあると人間の骨や肉をいとも簡単にひん曲げたり破裂されられるから凄くるんだよ~』
「何がどう捗るのかなんとなくわかる」
『それはもちろん――』
「その情報いらないでーす」
『けんちゃんエルフ好きだよねー』
「は? エルフ最高だろ 美男美女しかいないし耳めっちゃ長いんだぞ。長命だぞ長命。とまぁ下らん話はこれくらいにしてと――」

 俺と彼はももを叩きガラスのケースを取り出し、各自目的の歯車を掴むと外に向かって放る。

 次々歯車は分裂し巨大な深い緑色の輸送機が1機、その輸送機の何倍もの巨大な主砲を備え、厚い装甲板でフロント部分が強化された黒い蒸気機関車とごく一般的な赤い色の電車が出来上がった。

『ハイ、皆さ~ん、順番に乗ってくださ~い。他のお仲間をどんどん連れて来ますからね~』

 自由になったエルフ達は一目散に外へ出ると例の野ざらしにされたエルフの元へ駆け寄った。

「お願いします! 彼女を!」

 俺は外へ出ると檻をぶっ壊しやせ細るエルフを抱きかかえ、輸送機の中へと運び、他のエルフ達が見守る中椅子に座らせシートベルトを着用させる。

 消え入る様なか細い声で同じ様な台詞を呟き続けている。

「この人はずっとこうなのか」
「えぇ……彼女だけはずっと抵抗を続けていましたから……」
「そうか……助けてやりたいが精神面の問題は俺にもどうする事もできん」

「あ、あの……貴方達は一体……」

 女性のエルフが俺を見ている。その表情から明らかに怯えてはいるが敵ではない何か得体のしれない者だと言う事がうかがい知る事ができた。

「えっと俺達は通りすがり――」
『正義の味方1号2号です! 紅くて白髪生やしてる彼が1号! 角生やした俺が2号!』
「えっ!?」

 いつの間に俺の隣に。

「正義の……味方……。あ、ありがとうございます! 仲間達をお願いします!」
「あぁ……うん。いいか、皆座って大人しく待ってるんだ!」

 俺とビーディは輸送機のカーゴドアを閉まったのを確認し再び帝国へと向かった。

 帝国の入口へ近づくと甲冑を着けた兵士達が大勢お出迎えしてくれた。

「きき貴様ら何者だぁ! ここへ何しにやってきたぁ」
『ね? ね? 先行貰っていい?』
「どうぞご自由に」
『俺のターン!』

 彼の両手にミニガンが装着され、発射された弾丸は易易やすやすと兵士達の甲冑に穴を開け、鮮血に染め上げていく。

 ミニガンの駆動音が終わると目の前には人間であったであろう血溜まりに沈む肉塊だけが佇んでいた。

『ウ……ウゥ……グス……』

 何だこいつ泣いてるのか?
 流石のこいつも良心が咎めたのか。

『感動的だー!! まさかアダマンチウム製劣化ウラン弾で生きた人間を蜂の巣にできる日が実際に来るなんて! 死んで良かったぁ! この事実だけで1週間はできる・・・よー! けんちゃん!』
「そう……」

 やっぱりタナポンはタナポンだった。

『よぉし今度は対物ライフル使お♡』
「おい、いいか? 堅気を殺すのは禁止な」
『どぼじでぞんなごど言うのー!! せっかくテンションマックスなのにー!』
「あのなぁ! 俺達はVRクライムアクションゲームやりに来たんじゃないの! エルフ解放の為に来たの!」
『じゃあ奴隷のお店は?』
「好きにしろ」
『対物ライフルとドリルアームで顔面に穴開けてやろ! 火炎放射器で生きたまま燃やすのもいいなーよっしゃ! どんどん処理するぞー!』

 彼と俺は適当に奴隷商の店を周り、店内の人間を皆殺しにするとエルフを開放していく。

 今襲っているのは恐らく最も羽振りのいい店だ。店先のショウウインドウには全裸にされた女性のエルフが楔に繋がれていた。

「ひぃぃ助けて! 命だけはぁあ!!」
「あ? てめぇ間抜けか? チンカス野郎がよぉ!! ビーディ! 死体で遊んでないでこっちこい!」
『んー何?』
助けてほしい・・・・・・んだとよ。どうする?」

 ビーディは今しがた遊んでいた人間の頭蓋を渾身の力でむしり男の前へ放おった。

『食え』
「はぁあえ!?」
『それ食ったら逃してやってもいい』
「こ、ここ、これは……」
『人間の頭だったもの脳みそ髪の毛を添えて。フランス料理みたいでいい名前だろ? 早く食え』
「そ、そんなむちゃな……」
『自分の命がかかってるんだぞ? そんな事もできないの? そんなんじゃ甘いよ。お前も自分の頭が破裂する感覚を味わいたいのか?』

 男から黄色い液体が流れだし地面をぬらす。

「おい、おっさんこの国で最初にエルフを捕まえようって言い出したのはどこのどいつだ?」
「そ、それはこの国の大臣であるジュヴェルニアだ! 後生です! 助けてくださいぃぃい!! 我々は彼に従ってエルフを集めていただけなんですうぅぅうう!」
「だってよ」
『ふーん、どうするの?』
「そりゃあお前エルフはもうあらかた助けたし、ちょっくらカチコミ決めるか」
『いいねー。流石だねぇ』

 俺は持っていたデザートイーグルの引き金を男の眼前で引く。

 顔の中心に大きな赤い色花を咲かせた男は前のめりになり、そのままグチャリと音を立てて動かなくなった。

 エルフの入った檻を破壊しファストトラベルの杖を使い電車に乗せ、再び例の店の前に舞い戻った俺達は一路帝国の城を目指し進むのだった。
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