奴は四天王最弱!~本当は一番強い奴が最初に倒されたけど、バレないようにごまかすしかない!~

長多 良

文字の大きさ
9 / 45

第9話 勇者の名は

しおりを挟む
 動けるけどゆっくりしか動けない、という状態の村人にとって、
 目の前で大量のお宝を持っていかれる、というのは非常に憎たらしかっただろう。
 まあ、盗品なのだから文句は言えないはずだが。

「つまり、昔からこっそり村ぐるみで盗賊行為をやっていたんだと思うよ。
 村を通る旅人に目をつけて、近くの魔獣の森で正体を隠した強盗として金品を奪う。
 でもここ最近までしばらくは、このあたりは魔王軍の勢力圏になって、旅人の数も少なくなったから細々と普通の農村生活していたんだろうね。
 それが、最近魔王軍の勢力が弱まったから活動再開したんだろうね」

 シルフィアは、自分の頭の整理も兼ねて口に出して解説した。

「けっ!そんな分かり切った話、いちいち説明しなくてもいいだろ」

 隣を歩く勇者が悪態をつく。

「大体なんで一緒について来てるんだ」
「何言ってんの。助けてあげたんだから、ボクの言う通り一緒に行ってくれてもいいじゃん」
「あんなの助けなんて必要ない」
「そうかなー?村人を傷つけずに宝を持ち出すのは、キミ一人じゃ結構面倒くさかったと思うけど。
 それに、一人じゃこんなに宝を持ち出せなかったでしょ」
「オレは自分の必要な分だけ持ち出せればよかったんだ」
「へー、そうですか」

 軽口をたたきながら、シルフィアは心の中でこう思った。

(これは・・・かなり仲良くなってるんじゃない!?)

 予想外のトラブルはあったが、そのおかげで自然と話せるようになった。
 災い転じて福となす、というやつだ。

 だがまだ油断してはいけない。このまま自然な流れで勇者と行動を共にしなければいけない。

「ちなみにこの宝ってどうするの?宝集めが好きなの?」
「違げーよ。次の村か町で適当に路銀に変えるるだけだ」
「ふーん」

 思ったより話題が広がらなかった。
 じゃあ、取り合えず次の町まで一緒に行こう、と提案してみるか。
 でもそれだとその先一緒に行く口実をまた作らないといけないしなぁ・・・。
 と考えていると、勇者が先に口を開いた。

「ハァー。
 お前本当に、どこまでオレに着いてくるつもりだ?
 これから魔王軍の本拠地にどんどん近づいていくんだぞ。
 さっきは人間相手だったけど、魔族・・・それも四天王と呼ばれる奴らが出てくるはずだ。
 四天王は・・・とてつもなく強い。そこそこの実力じゃ、命がいくつあっても足りないぜ?」
「・・・・」

 シルフィアは、しばらく何も言わなかった。
 勇者が急にちゃんと話してくれることに驚いたのもあるが、
 四天王の名前が出たからだ。
 そして、勇者が四天王をそれほどの実力者だと、警戒していることが分かったからだ。

「・・・そんなに強いの?勇者でも勝てない?」
「ハァ!?オレは負けねーよ!もう一人倒してるんだぞ!?」

 怒りだしてしまった。少し使う言葉を間違えたようだ。

「まあ、残りの三人はもっと強いらしいから、気を引き締めないといけないけどな」

 いいことなのか、悪いことなのか・・・・。いや、今の作戦としてはいいことだが、
 四天王の残り三人の株はしっかり上がっているらしい。

「それなら一人じゃなくて、パーティーを組んで戦えばいいじゃん。
 なんでキミは一人がいいの?」

 勇者はその質問に、また面白くなさそうな顔をした。

「さっきも言っただろ。オレ以外じゃ生き残れない。
 一緒に旅をしても傷ついて、どこかでいなくなるだけだろ」

(なるほど)

 勇者の考えが少しわかった気がする。

「なるほどね!」

 シルフィアはパンッと手をたたいて、元気な声でそう言った。

「分かった!もうキミに無理は言わないよ。
 そりゃ、勇者と一緒なら色々安心だと思ったけど、本人が嫌ならしかたないよね」

 シルフィアは手をひらひらと振って続けた。

「でも前にも言ったように、ボクにも目的があるからね。
 たまたま道中会っちゃう事はあるかも知れない。
 その時は無視しないで挨拶ぐらいはしてよね」
「・・・結局、一緒に着いていくって言ってるようなもんじゃないか」

 勇者はジト目で睨みながらそう言ったが、以前のようにはっきり断ることはしなかった。

「じゃあ取り合えず、今更だけど自己紹介しようよ!
 勇者!じゃ呼びにくいから、名前は?」
「お前、オレの名前知らないで絡んできてたのかよ」
「しょうがないじゃん!知らないし。キミも名乗ってくれなかったんだから。
 別に、秘密にしてるってわけでもないんでしょ?」

 勇者はしばらく考えたあと、観念したように頭をかいて

「ライカだ。オレの名前はライカ。お前は?」
「ありがとう!ボクの名前は、シア。シアだよ!」

(よっしゃ!)

 シルフィアは心の中でガッツポーズを取った。
 仲良くなって名前までゲットだ!
 ちなみにシアという偽名はファイレーンと一緒に考えた。

 名前が分かったら次は・・・性別だっけ?
 でも何て聞けばいいんだろうか?ストレートに聞くのは気が引けるし・・・。
 そもそも性別って重要なのか?

 色々考えていると、先にライカが質問してきた。

「それで、お前はこれからどこに向かうつもりなんだ?ヒマだから聞くだけ聞いてやる」

 この後どこに行くか。そうだ、これも重要なミッションだった。
 シルフィアは、さっきまでの明るい表情から一変、真剣な顔になり、
 声のトーンを落としてこう言った。

「最終的な目標は魔王だよ。でもその前に・・・
 ボクにはどうしても、行かなきゃいけない場所があるんだ」

 シルフィアは、ライカの目を見据えて告げた。

「数多の人間の命を弄ぶ、狂気の錬金術師。四天王の中でも最も残虐な魔女。
赤命せきめいのファイレーン』
 その居城がこの近くにある。そこに行かなきゃいけないんだ・・・!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...