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第9話 勇者の名は
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動けるけどゆっくりしか動けない、という状態の村人にとって、
目の前で大量のお宝を持っていかれる、というのは非常に憎たらしかっただろう。
まあ、盗品なのだから文句は言えないはずだが。
「つまり、昔からこっそり村ぐるみで盗賊行為をやっていたんだと思うよ。
村を通る旅人に目をつけて、近くの魔獣の森で正体を隠した強盗として金品を奪う。
でもここ最近までしばらくは、このあたりは魔王軍の勢力圏になって、旅人の数も少なくなったから細々と普通の農村生活していたんだろうね。
それが、最近魔王軍の勢力が弱まったから活動再開したんだろうね」
シルフィアは、自分の頭の整理も兼ねて口に出して解説した。
「けっ!そんな分かり切った話、いちいち説明しなくてもいいだろ」
隣を歩く勇者が悪態をつく。
「大体なんで一緒について来てるんだ」
「何言ってんの。助けてあげたんだから、ボクの言う通り一緒に行ってくれてもいいじゃん」
「あんなの助けなんて必要ない」
「そうかなー?村人を傷つけずに宝を持ち出すのは、キミ一人じゃ結構面倒くさかったと思うけど。
それに、一人じゃこんなに宝を持ち出せなかったでしょ」
「オレは自分の必要な分だけ持ち出せればよかったんだ」
「へー、そうですか」
軽口をたたきながら、シルフィアは心の中でこう思った。
(これは・・・かなり仲良くなってるんじゃない!?)
予想外のトラブルはあったが、そのおかげで自然と話せるようになった。
災い転じて福となす、というやつだ。
だがまだ油断してはいけない。このまま自然な流れで勇者と行動を共にしなければいけない。
「ちなみにこの宝ってどうするの?宝集めが好きなの?」
「違げーよ。次の村か町で適当に路銀に変えるるだけだ」
「ふーん」
思ったより話題が広がらなかった。
じゃあ、取り合えず次の町まで一緒に行こう、と提案してみるか。
でもそれだとその先一緒に行く口実をまた作らないといけないしなぁ・・・。
と考えていると、勇者が先に口を開いた。
「ハァー。
お前本当に、どこまでオレに着いてくるつもりだ?
これから魔王軍の本拠地にどんどん近づいていくんだぞ。
さっきは人間相手だったけど、魔族・・・それも四天王と呼ばれる奴らが出てくるはずだ。
四天王は・・・とてつもなく強い。そこそこの実力じゃ、命がいくつあっても足りないぜ?」
「・・・・」
シルフィアは、しばらく何も言わなかった。
勇者が急にちゃんと話してくれることに驚いたのもあるが、
四天王の名前が出たからだ。
そして、勇者が四天王をそれほどの実力者だと、警戒していることが分かったからだ。
「・・・そんなに強いの?勇者でも勝てない?」
「ハァ!?オレは負けねーよ!もう一人倒してるんだぞ!?」
怒りだしてしまった。少し使う言葉を間違えたようだ。
「まあ、残りの三人はもっと強いらしいから、気を引き締めないといけないけどな」
いいことなのか、悪いことなのか・・・・。いや、今の作戦としてはいいことだが、
四天王の残り三人の株はしっかり上がっているらしい。
「それなら一人じゃなくて、パーティーを組んで戦えばいいじゃん。
なんでキミは一人がいいの?」
勇者はその質問に、また面白くなさそうな顔をした。
「さっきも言っただろ。オレ以外じゃ生き残れない。
一緒に旅をしても傷ついて、どこかでいなくなるだけだろ」
(なるほど)
勇者の考えが少しわかった気がする。
「なるほどね!」
シルフィアはパンッと手をたたいて、元気な声でそう言った。
「分かった!もうキミに無理は言わないよ。
そりゃ、勇者と一緒なら色々安心だと思ったけど、本人が嫌ならしかたないよね」
シルフィアは手をひらひらと振って続けた。
「でも前にも言ったように、ボクにも目的があるからね。
たまたま道中会っちゃう事はあるかも知れない。
その時は無視しないで挨拶ぐらいはしてよね」
「・・・結局、一緒に着いていくって言ってるようなもんじゃないか」
勇者はジト目で睨みながらそう言ったが、以前のようにはっきり断ることはしなかった。
「じゃあ取り合えず、今更だけど自己紹介しようよ!
勇者!じゃ呼びにくいから、名前は?」
「お前、オレの名前知らないで絡んできてたのかよ」
「しょうがないじゃん!知らないし。キミも名乗ってくれなかったんだから。
別に、秘密にしてるってわけでもないんでしょ?」
勇者はしばらく考えたあと、観念したように頭をかいて
「ライカだ。オレの名前はライカ。お前は?」
「ありがとう!ボクの名前は、シア。シアだよ!」
(よっしゃ!)
シルフィアは心の中でガッツポーズを取った。
仲良くなって名前までゲットだ!
ちなみにシアという偽名はファイレーンと一緒に考えた。
名前が分かったら次は・・・性別だっけ?
でも何て聞けばいいんだろうか?ストレートに聞くのは気が引けるし・・・。
そもそも性別って重要なのか?
色々考えていると、先にライカが質問してきた。
「それで、お前はこれからどこに向かうつもりなんだ?ヒマだから聞くだけ聞いてやる」
この後どこに行くか。そうだ、これも重要なミッションだった。
シルフィアは、さっきまでの明るい表情から一変、真剣な顔になり、
声のトーンを落としてこう言った。
「最終的な目標は魔王だよ。でもその前に・・・
ボクにはどうしても、行かなきゃいけない場所があるんだ」
シルフィアは、ライカの目を見据えて告げた。
「数多の人間の命を弄ぶ、狂気の錬金術師。四天王の中でも最も残虐な魔女。
『赤命のファイレーン』
その居城がこの近くにある。そこに行かなきゃいけないんだ・・・!」
目の前で大量のお宝を持っていかれる、というのは非常に憎たらしかっただろう。
まあ、盗品なのだから文句は言えないはずだが。
「つまり、昔からこっそり村ぐるみで盗賊行為をやっていたんだと思うよ。
村を通る旅人に目をつけて、近くの魔獣の森で正体を隠した強盗として金品を奪う。
でもここ最近までしばらくは、このあたりは魔王軍の勢力圏になって、旅人の数も少なくなったから細々と普通の農村生活していたんだろうね。
それが、最近魔王軍の勢力が弱まったから活動再開したんだろうね」
シルフィアは、自分の頭の整理も兼ねて口に出して解説した。
「けっ!そんな分かり切った話、いちいち説明しなくてもいいだろ」
隣を歩く勇者が悪態をつく。
「大体なんで一緒について来てるんだ」
「何言ってんの。助けてあげたんだから、ボクの言う通り一緒に行ってくれてもいいじゃん」
「あんなの助けなんて必要ない」
「そうかなー?村人を傷つけずに宝を持ち出すのは、キミ一人じゃ結構面倒くさかったと思うけど。
それに、一人じゃこんなに宝を持ち出せなかったでしょ」
「オレは自分の必要な分だけ持ち出せればよかったんだ」
「へー、そうですか」
軽口をたたきながら、シルフィアは心の中でこう思った。
(これは・・・かなり仲良くなってるんじゃない!?)
予想外のトラブルはあったが、そのおかげで自然と話せるようになった。
災い転じて福となす、というやつだ。
だがまだ油断してはいけない。このまま自然な流れで勇者と行動を共にしなければいけない。
「ちなみにこの宝ってどうするの?宝集めが好きなの?」
「違げーよ。次の村か町で適当に路銀に変えるるだけだ」
「ふーん」
思ったより話題が広がらなかった。
じゃあ、取り合えず次の町まで一緒に行こう、と提案してみるか。
でもそれだとその先一緒に行く口実をまた作らないといけないしなぁ・・・。
と考えていると、勇者が先に口を開いた。
「ハァー。
お前本当に、どこまでオレに着いてくるつもりだ?
これから魔王軍の本拠地にどんどん近づいていくんだぞ。
さっきは人間相手だったけど、魔族・・・それも四天王と呼ばれる奴らが出てくるはずだ。
四天王は・・・とてつもなく強い。そこそこの実力じゃ、命がいくつあっても足りないぜ?」
「・・・・」
シルフィアは、しばらく何も言わなかった。
勇者が急にちゃんと話してくれることに驚いたのもあるが、
四天王の名前が出たからだ。
そして、勇者が四天王をそれほどの実力者だと、警戒していることが分かったからだ。
「・・・そんなに強いの?勇者でも勝てない?」
「ハァ!?オレは負けねーよ!もう一人倒してるんだぞ!?」
怒りだしてしまった。少し使う言葉を間違えたようだ。
「まあ、残りの三人はもっと強いらしいから、気を引き締めないといけないけどな」
いいことなのか、悪いことなのか・・・・。いや、今の作戦としてはいいことだが、
四天王の残り三人の株はしっかり上がっているらしい。
「それなら一人じゃなくて、パーティーを組んで戦えばいいじゃん。
なんでキミは一人がいいの?」
勇者はその質問に、また面白くなさそうな顔をした。
「さっきも言っただろ。オレ以外じゃ生き残れない。
一緒に旅をしても傷ついて、どこかでいなくなるだけだろ」
(なるほど)
勇者の考えが少しわかった気がする。
「なるほどね!」
シルフィアはパンッと手をたたいて、元気な声でそう言った。
「分かった!もうキミに無理は言わないよ。
そりゃ、勇者と一緒なら色々安心だと思ったけど、本人が嫌ならしかたないよね」
シルフィアは手をひらひらと振って続けた。
「でも前にも言ったように、ボクにも目的があるからね。
たまたま道中会っちゃう事はあるかも知れない。
その時は無視しないで挨拶ぐらいはしてよね」
「・・・結局、一緒に着いていくって言ってるようなもんじゃないか」
勇者はジト目で睨みながらそう言ったが、以前のようにはっきり断ることはしなかった。
「じゃあ取り合えず、今更だけど自己紹介しようよ!
勇者!じゃ呼びにくいから、名前は?」
「お前、オレの名前知らないで絡んできてたのかよ」
「しょうがないじゃん!知らないし。キミも名乗ってくれなかったんだから。
別に、秘密にしてるってわけでもないんでしょ?」
勇者はしばらく考えたあと、観念したように頭をかいて
「ライカだ。オレの名前はライカ。お前は?」
「ありがとう!ボクの名前は、シア。シアだよ!」
(よっしゃ!)
シルフィアは心の中でガッツポーズを取った。
仲良くなって名前までゲットだ!
ちなみにシアという偽名はファイレーンと一緒に考えた。
名前が分かったら次は・・・性別だっけ?
でも何て聞けばいいんだろうか?ストレートに聞くのは気が引けるし・・・。
そもそも性別って重要なのか?
色々考えていると、先にライカが質問してきた。
「それで、お前はこれからどこに向かうつもりなんだ?ヒマだから聞くだけ聞いてやる」
この後どこに行くか。そうだ、これも重要なミッションだった。
シルフィアは、さっきまでの明るい表情から一変、真剣な顔になり、
声のトーンを落としてこう言った。
「最終的な目標は魔王だよ。でもその前に・・・
ボクにはどうしても、行かなきゃいけない場所があるんだ」
シルフィアは、ライカの目を見据えて告げた。
「数多の人間の命を弄ぶ、狂気の錬金術師。四天王の中でも最も残虐な魔女。
『赤命のファイレーン』
その居城がこの近くにある。そこに行かなきゃいけないんだ・・・!」
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