奴は四天王最弱!~本当は一番強い奴が最初に倒されたけど、バレないようにごまかすしかない!~

長多 良

文字の大きさ
43 / 45

第43話 規格外

しおりを挟む
 一連のドタバタで、グリードの攻撃は止まっていたが、
 ファイレーンは炎の鎧巨人を解除はせずに、制御のために未だ空中にいた。
 なので、地上にいるグランザとは距離が離れているのだが、
 どうしても我慢できず、遠くから大声で問いただした。

「ちょっと、何なんですかあれ!」

「どうした?ファイレーン」

 グランザはキョトンとしている。

「あなた、あんなにすごい攻撃まで出来たんですか!?」

 強いことは前から分かっていたが、あんなに大量のドラゴンを一気に!?
 それなら、これまでのドラゴンとの戦争でも使ってくれてもよい気がするが・・・。

「なるほど、そのことか」

 グランザは真面目な顔で頷いて説明を始めた。

「俺はグリードに操られている間も、かすかに自意識は残っていた。
 その意識の中で、自分への不甲斐なさから、精神修行を続けていたのだ。
 あと、勇者ライカと死闘を繰り広げたことで、
 何か強くなる切っ掛けを掴んだような気もする。
 そのおかげだな」

「えええ・・・」

 これはウォーバルのうめき声だ。

 自分も頑張って修行したのだが、グランザは精神修行でこんなにパワーアップを?
 いや、その修行後のグランザに勝ったのだから、別にいいのか?

「グランザは何かやっぱりおかしいよ・・・・」

 シルフィアは警戒のため空中にいたままだが、話を聞いて呆れてそう呟いた。

 だがそれ以外にも気になることがあった。
 グリードが何も行動を起こさないのだ。

 先ほどから、時々体を蠢かせているだけだ。

 そう言えば、と思い、シルフィアはグランザとウォーバルの近くに降りてきた。

「さっきの攻撃で、グリードも倒せないかな?」

 せっかくなら、このまま倒せてしまう方がいいのだが。
 だが、グランザは淡々と否定した。

「さっきの術では難しそうだな。
 先ほども、剣の何本かはグリードに攻撃したが、
 さすがに本体は防御が固いようで弾かれてしまった」

 もうグリードにも攻撃していたのか。
 グランザは、このようにそつなく淡々と仕事をこなす男だった。

「グリードが行動を起こさないうちに何とかすべきだが・・・」
「何であいつは何もしなくなったんだ?」

 四人は改めてグリードの方を見る。
 炎の鎧巨人と対峙したままだが、そちらの方すら見ていない。
 顔はうなだれているが、よく見ると目は見開き、歯を食いしばっている。
 そして時々体を蠢かせながら・・・
 何か喋っている?

 シルフィアは再び上空に飛んでいき、グリードの様子を見に行った。

『・・・たい・・・たい・・・たい・・・』

「??」

『いたーーーーーい!!!!』

 急にグリードが体をのけぞらして叫んだ!!

 と、同時に――――

 グリードの背中、首の付け根辺りで

 バリィ!!

 と、短く鈍い音が鳴った。

「うりゃぁあああ!これでもくらえぇぇええ!!!」

 そして、シルフィアにとっては聞きなれた罵声が聞こえる。


「ええ!?ライカ!!?」

 声のする方を見に行くと、
 ライカがグリードの背中で・・・・
 グリードの巨大な鱗を剣でガンガン叩いた後、素手でメリメリと引きちぎっている。

「うわっ・・・!」

 シルフィアは自分の爪がはがされたら、という想像をして寒気がしてしまった。

 ライカはその鱗を力任せに引きはがした。

 バリィ!!

 さっきの音はこれか。

『痛い!!さっきから!やめろぉおおお!!』

 グリードは身を悶えさせるが、ドラゴンの体型では首の付け根には手も口も届かない。
 それでも耐え難く、天を仰ぐように体を垂直に立てたかと思うと、
 思いっきり背中から地面の方に倒れこんだ。

「おっとっと」

 ライカは軽く声を上げると、潰されるギリギリ前にジャンプしてグリードから離れた。

 ドォォォオオン・・・!!

 グリードが地面に倒れこむ。

「すげぇな。あれが『逆鱗に触れる』ってやつか。
 あんなに怒るとは」

「いや、『逆鱗』って、鱗を逆向きにに引っぺがす、って意味じゃないですよ・・・」

 ライカの天然発言にファイレーンが突っ込む。

 取り合えず、グリードが倒れたから・・・と言うか、
 気になるところが多すぎて、ファイレーンも地上に降りてきた。

 ライカの周りに、四天王が集まった。

「おっ!グランザじゃねぇか。やんのかぁ?」

 ライカはグランザを見るなりガンつけてきた。なんでそんなにケンカ腰なのか。
 グランザはグランザで「遠慮しておく」の一言でスルーしたが。

「そんな事より!無事だったの!?」

 シルフィアが問いかける。

 ライカはグリードの雷の直撃を受けて、その背中から剣だけ残していなくなったはずだ。
 シルフィアは、ライカが死んだとは思っていなかったが、まさかグリードの背中から出てくるとは。

 よく見ると、ライカは雷のせいかちょっと焦げてるような気がするが・・・。
 それよりもグリードの鱗を引っぺがした時のものか、返り血まみれになっている。
 見た目かなり怖い。
 それ以外は全く元気なようだ。

 ライカは面倒くさそうだが、一応説明してくれた。

「ああー。驚かせちゃったか。
 あの雷は正直結構ヤバかったな。ビリビリしたし。
 ヤバい!と思ったけど、グッと体に力を入れたら何か体が光って、
 何か無事だったんだよね。ちょっと体の表面は焦げたけど」

「そんなことあるの!?」

 シルフィアはとても信じられない!という顔をしたが、
 ファイレーンは思い当たることが合って考え込んだ。

(そう言えば・・・最初にグランザと戦ってピンチになった時も、体が光ってましたね。
 やっぱりあれがライカさんの転生者としての力・・・?)

 そんな考察は知る由もなく、ライカは説明を続ける。

「でもまあ、ちょっとダメージはあったし、体の表面は焦げてるから、
 しばらくグリードの鱗の下に隠れて休んでたんだ。
 で、回復してきたんだけど、
 最初の攻撃で鱗を破壊できなかったのがムカついたから、
 鱗の下にもぐって、鱗を破壊できるまでひたすら剣でぶっ叩いてたんだよね。
 そしたら段々壊せるようになって・・・」

『そうだ!!貴様ぁあああ!!』

 倒れていたグリードが素早く起き上がり、ライカに顔を迫った。

『よくも俺の鱗の下で、ずっと暴れてくれたな!!!』

 だがライカは煽り顔で反撃した。

「へっ!偉そうに!!
 俺にやられて痛いくせに、シアたちにバレるのが恥ずかしくて、何でもないふりして戦ってたんだろ!?
 見栄っ張りはろくなことにならないな!」

「え!じゃあ、ボク達が戦っている間、ずっとライカさんはグリードに攻撃してたたの!?」

(なるほど・・・・)

 ファイレーンは声に出さずに納得した。

(私たちも頑張ったとは言え、グリード相手にここまで粘れたのは、
 ライカさんの攻撃で本調子じゃなかったからなんですね)

 自分たちの力だけではなかった事はちょっと残念だが、納得ではある。

(それにしても、威厳を保つために痛いのを我慢して虚勢を張るなんて・・・)

 ファイレーンは、自分たちが威厳を保つために強いふりをしようとしたことを思い出して、すこし恥ずかしくなった。

『おのれ・・・・』

 グリードはすっかりペースを奪われて苦々しく唸った。

 勇者ライカがこんなでたらめをするとは思わなかった。
 雷で消し飛んだと思ったら、しばらくしたら背中に違和感を覚え・・・
 その後すぐに、自分の背中でひたすら破壊され続けるとは続けるとは・・・。


「でも戦ってる最中も、背中から雷出したり、色々されたでしょ?」
「ケッ!あんな雷なんて、一回耐えるコツ掴んだら平気平気。
 むしろ何か水の槍みたいなのにもうちょっとで刺されそうになったけどな」

 ライカはそう言うとウォーバルの方をジロリと睨んだ。
 ウォーバルも睨まれる筋合いはないので、睨み返したが。


『そんなデタラメなことが・・・・』

 グリーズは困惑と屈辱で歯ぎしりした。
 ドラゴンの体型が災いして直接つまみ出すこともできなかった。
 こんなことならグリーズを吸収するんじゃなかった・・・。

 そんなネガティブな考えが浮かぶことが我慢ならなかった。

『絶対に許さん・・・!
 貴様らだけは、この身がどうなってもぶち殺してやる!!』


 そう叫ぶと、グリードは再び空に浮かび上り・・・・
 そして、彼自身、使うつもりのなかった、使いたくなかった禁断の魔術を発動した。

『全てを焼き尽くしてくれる!!!!
 メルド・メギオン!!!』

 そしてグリードの体から、灼熱の炎が噴き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...