奴は四天王最弱!~本当は一番強い奴が最初に倒されたけど、バレないようにごまかすしかない!~

長多 良

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第45話 四天王会議をもう一度

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 浦上ライカは、とある地方都市に暮らす学生だった。

 転生前の事はしっかり覚えているが、転生した時とその前後の事はよく覚えていない。

 気が付いたらこの世界で、子供の姿で放り出されていた。

 幸いにも親切な村人に保護してもらい(戦災孤児だと思われたらしい)
 温かく育ててもらえた。

 ファンタジーな異世界らしく、モンスターが出て村人が困ることはあるし、
 遠くで起きているという魔王軍との戦争で人間は困っている、ということも聞いていた。

 そんな中、自分は他人より特別強いらしいということを理解したライカは、
 それなら、と・・・
 つまり、異世界転生者らしく、魔王を倒す旅に出たのだ。

 もちろん不安はあった。
 なので、昔見たヤンキー漫画を参考に、なめられないように振る舞ってみた。

 もっともそれは、思ってたよりもライカに馴染んだのだが。

 ◆

「まぁまぁ、あのライカちゃんがお友達連れて帰ってきてくれるなんてねー」

 ライカの面倒を見てくれていたおばちゃんが、ニコニコ笑顔でそう言った。

 彼女は、日頃から農作業で体を動かしている人特有の健康的でがっしりとした体型をしている。
 その明るい性格もあって、とても包容力を感じる。

「やめろよ、おばちゃん!そういうんじゃねーって!!」

「あらあら、ライカちゃんも随分都会っぽい喋り方になっちゃって。
 カッコいいわよ!」

「あー、もう・・・」

 ライカのヤンキー言葉はこの村を出た後に始めたことなので、
 おばちゃんにとっては、「地元を離れた若者が都会に染まってやんちゃになった」
 くらいの感覚らしい。

 ライカは、居心地悪そうに頭をかいて、
 無理やり話題を逸らした。
 と言うか、元々話そうとしていたことなのだが。

「そんな事より、ゴメンな。
 魔王を倒すって出て行ったのに、結局倒せずに帰ってきちゃって」

「アッハッハ!そんな真面目に謝らなくても!
 だから言ってただろ?
 いくらあんたが村一番の力自慢だからって、魔王を倒すなんて無茶だって。
 そんな事より、あんたが無事に帰ってきてくれただけで充分さ」

 おばちゃんはライカの肩をバンバンと叩いた。
 こういう無遠慮さも、田舎のおばちゃんの特徴なのだろう。

「それにしても本当に、よく無事に帰ってきてくれたね。
 心配してたんだよ?
 行商人に聞いたんだけど、なんか最近、魔王軍の様子が変わったんだって?
 各地で戦争してた魔王軍が急に撤退したと思ったら、
 今まで見たこと無いようなモンスターが現れるようになったって・・・」

「あー、まあな。大変っちゃ、大変だったかな」

 ライカの歯切れが悪いのは、
 久しぶりの地元で、子供時代の自分を知っている人の前だから、だけではなかった。

「まあなんにせよ良かった!
 おっと、ごめんね、お友達が向こうで待ってるよ。
 早く行ってやんな!」

 おばちゃんに促され、これ幸いとライカはその場を離れ、
 村の畑や牧場の景色を見てはしゃいでいる少女の元に向かった。

「いやー、のどかでいいところじゃのう!
 何よりポカポカしてるのがいい!
 ワシ等の城は北の方で寒かったし、基本陰気な場所じゃったからな」

 魔王アイサシスが、ニコニコしながらライカの故郷を誉めた。

「長生きしてる魔王様のくせに、こんな田舎の村で随分楽しそうじゃねぇか」

「何言っとる。年齢はそうじゃが、ワシの精神年齢は見た目通りの幼子じゃからな!」

 自慢にならない気がしたが、魔王はエッヘンと胸を張った。

「それにワシは生まれてからずっとグリードを封印するためにあの部屋に缶詰めじゃったから、思う存分青春を取り戻す権利がある!」

 まあライカもその点は異論は無かった。
 だからこの村にも連れてきたのだし。

「おやおや、アイサシスちゃんに私たちの村を気に入ってもらえて光栄だね」

 おばちゃんには、魔王のことは「旅の途中の国で出会ったお嬢様」だと伝えている。

「うむ!村の人も優しいしのぅ!
 そうだ!ワシの事はアイちゃんと呼んでくれ!!」

「あらあら、かわいいわねぇ。アイちゃん!」

 魔王とおばちゃんはしばらくウフフ、アハハとおしゃべりしていた。

「ところで、他のお友達は来てないのかい?
 前に来てくれたシルフィアちゃんとか」

「あー、あいつらは、移住の作業で忙しくてさ」

「あらまぁ。じゃあ今度、手伝いに行ってあげようかしら」

「うーん・・・、必要そうだったらオレから村の皆に頼むよ。
 丁度これからあっちの村に行くからさ」

 そんな会話をして、ライカ達はおばちゃんと別れたのだった。

 ◆

 グリードを倒した後・・・・。

 異世界とつながるゲートは、結局無くならなかった。

 グリードが封印されていた大きなゲート自体はグリードと共に消滅したし、
 北の果て、グリードの手下のドラゴン達が沸いて出ていたゲートも消滅したらしいので、当面の危機は去ったようだが・・・・。

「つまり、でっかい水漏れを修理したら、他のいろんな場所からちっさい水漏れが出てきたって感じか?」

「まあ、イメージとしてはそんな感じじゃな」

 ライカの問いに、魔王アイサシスは頷いた。

「結局、大昔から召喚魔術の暴走は続いていたらしいからな。
 魔術の暴走はグリードとは関係ないし・・・そのまんまじゃ」

「むしろ今までは、グリードが巨大なゲートを塞ぐ形で封印されていたことで、
 召喚魔術の暴走が抑えられていたようですね。
 歪みを一カ所に集中させて抑え込めていたというか・・・」

 魔王アイサシスとファイレーンは、
 グリードが話した事と、その後の分析結果から仮説を立て合っていた。

「つまり・・・、グリードを倒したせいで、
 これまでよりもっと異世界に繋がりやすくなった・・・?」

 シルフィアがそう言うと、
 今までグリードを倒してお祝いムードだったはずが、一転して気まずい雰囲気になった。

「てめぇら、グリードを倒したらどうなるか、とか全然考えてなかったのかよ」

 ライカは魔王とファイレーンの事をギロリと睨んだ。

「うう・・・。
 北の地のゲートを閉じる方法は研究していましたが、
 グリードを倒した時の事は考えてませんでしたね・・・。
 やつが封印され続けている事が当たり前になっていたというか・・・」

「なんとも、滑稽ながら情けない話じゃなぁ・・・」

 ファイレーンはシュン、とうなだれたが、魔王あまり深刻そうではなかった。

「てめぇ、随分他人事みたいにしゃべるじゃねぇか」

 ライカが凄むが、魔王はあっけらかんとしたものだ。

「だって、しょうがないじゃろ。
 グリードは勝手に復活したんじゃし、
 グリードを倒さないと、この世界は侵略されて終わりじゃったんじゃぞ。
 今できる最善を尽くした、というやつじゃな」

「まあそりゃそうだ」

 ライカもそこは同意見だった。
 問題は、今後の事だ。

「でもどうするの?
 これからも、ドラゴン相手にしてたみたいに、魔王軍が異世界の侵略者と戦うの?」
「戦うって、いつ、どこから、何が現れるかも分からないのに、ですか?」

 シルフィアとファイレーンが不安そうに話している。
 ちなみにグランザはずっと難しい顔をして話を聞いている。
 ウォーバルはダメージが大きいのであまり話す気力がないようだ。

「お前ら、それなら・・・・」

 そんな様子を見て、ライカは一つの提案をした。

「みんなでコッソリ逃げちゃえばいいんじゃないか?」


 ◆

「まさかあの時、ライカがあんな提案をしてくれるとはな。
 魔族一同、感謝しておるぞ」

「ケッ、別に・・・。
 あのまま本当の事がバレたら、グリードを倒したオレも面倒くさいことになると思っただけだよ」

 ライカは、魔族全員の人間領への移住を提案した。

 移住と言っても、魔族としてではない。
 のだ。

 さしあたり、ライカの故郷の近くを開拓して村を作ることにした。
 よその土地から開拓者が来るのは珍しいことではないので、
 ライカが村に説明したら大した混乱は起きなかった。

 魔族は元々人間と大きく見た目が変わらないし、魔術で誤魔化すこともできる。

 ただし、魔王軍が解散したとは人間族には秘密である。
 人間族は未だに、北の地の魔王城に魔王がいると思っている。

「魔王軍と人間軍の戦争は終わらせる」
 これがライカの出した絶対条件だ。
 元々魔王軍も戦争を好きで続けていたわけではないので、異論は無かった。
 全ての魔王軍は撤退して、戦争は終わった。
 これには人間軍は困惑したが、
 しばらくすると、今まで見たこと無いモンスター達が現れるようになった。

 実はそれは異世界から来た侵略者たちだ。

 しかし人間軍は、
 魔王軍が新たな戦力で、新たな戦略を仕掛けてきた、としか思っていないのだ。
 つまり、その点では人間族の日常は大して変わらなかったと言える。

「まあ確かに、下手に「魔族と人間族で協力して異世界と戦おう」とか言ったら、
 責任問題とか主導権争いとか、面倒くさいじゃろうからな」

 元々、魔王の正体や魔王軍の実態を人間族が知らなかったのも都合がよかった。

 しかし一方で、人間族にとって変化も起きつつあった。
 異世界からの訪問者は敵対的なモンスターだけではない。
 人間族と交流を持とうとする者も現れているようだ。
 恐らく、ライカやファイレーンのように、転生してきている者もどこかに現れているかもしれない。

「異世界人がみんな悪い奴ってわけでもないだろ」

 とはライカの言葉だった。

「それに、異世界へのゲートが開かれていれば、
 おぬしやファイレーンも元の世界に帰れるかもしれんしのう」

 魔王はそう言ったが、ライカはそれには何も答えなかった。

 そうこうしているうちに、魔族が開拓した村にたどり着いた。

 村には、四天王全員と、魔族の一部が移住してきている。
 魔族全員をいきなり一カ所に移住させるのは難しいので、
 まずは一部の者で基盤づくりをしてから、徐々に移住者を増やしたり、
 他の開拓地を広げていく計画だ。

 シルフィアが村づくりのリーダーに、
 それと並行して、ファイレーンは召喚魔術の研究を、
 グランザとウォーバルは、周囲に異世界の敵対勢力が現れた時の対応部隊をしている。

「あ!まおうさ・・・アイサシス!ライカ!!」

 ちょうど通りがかったシルフィアが、笑顔で駆け寄ってくる。
 ちなみに、勿論「魔王」という言葉は禁句だ。
 ついでに、敬語も禁止にしている。

「どうだった?ライカの村は」
「うむ、やはりいい村じゃな。ライカのおばちゃんとも仲良くなったぞ」
「そうでしょー。ボクもあのおばちゃん大好き!」

 シルフィアは片手をパタパタさせながら、より一層笑顔を明るくさせた。

「ところで2人は何話してたの?」

 シルフィアは2人の、特にライカの顔を覗き込んで聞いてきた。
 恐らく、シルフィアが話しかける前の2人が真面目な顔をしていたからだろう。

 すると魔王はいたずらっぽく笑った。

「いや、なに。ライカに、もし元の世界に帰れるとしたらどうする?
 と聞いたんじゃ?」

「・・・・」

 ライカは何か言おうとしたが・・・、
 その前にシルフィアが深く考えずに思ったことを口にした。

「あー、それはいいね!
 ライカとファイレーンの世界に、ボクも行ってみたいよ」

 それを聞いて・・・・
 ライカはいたずらっぽく微笑んだ。

「そうだな。異世界も結構、面白いもんだ」


 ◆ 完 ◆


 ◆ エピローグ ◆

「シルフィア!
 ・・・・あ、アイサシスとライカさんも!!」

 3人が立ち話をしていると、小屋の中からファイレーンが飛び出してきた。

「どうしたんじゃ、大慌てで」

「大慌てなんてもんじゃないですよ!早く来てください!!」

 そう言ってファイレーンは、3人を村の開拓本部・・・
 四天王の会議部屋に連れて行った。

 中ではウォーバルが、映像魔術を見て声を張り上げている。

「一体何があった!タウ、スイ!!」

 映像には、ウォーバルの部下の兵士2人が映っていた。
 慌てた顔で、お互いに画面を取り合おうと、押し合いへし合いをしながら報告している。

 彼らはグランザと一緒に、山を越えたところに最近現れた謎の城――――
 恐らく異世界からの転移者の城、を偵察に行ったはずだが・・・。

『奴らは自分たちを「ヴァンパイア族」と称し、襲い掛かってきたのですが・・・。
 グランザ様が・・・・!!』

「え・・・・!」
「まさか・・・・!?」
「グランザが・・・!?」

 シルフィア、ファイレーン、ウォーバルの三人は思わず体を乗り出した。

『その・・・グランザ様は実力的には勝っていたんですが、
 相手の洗脳魔術に引っかかってしまったみたいで、
 敵に捕らわれちゃいました!!!』

「またですかぁぁぁぁああああ!!?」

 ファイレーンがあまりのショックに、叫びながらテーブルに突っ伏した。
 何なんだあいつは。洗脳系に弱すぎるのか!?

『あ、でもグランザ様が、洗脳される前に「俺は四天王最弱だから大丈夫」って』

「「うるせーよ!!!」」

 シルフィアとウォーバルも怒り狂ってテーブルに拳を叩きつけた。

 そして――――、緊急四天王会議が始まった。

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