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7. ドーロン伯爵家の日常
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アナスタシアの妹、キャシーはドーロン伯爵邸で優雅に過ごしていた。生まれた時からここで過ごし、優しい両親に囲まれ、何不自由のない生活を送っていた。彼女がアランと結婚してから早三年。夫となったアランの魅力に飽き始めていた。
「そういえば、お姉様はどうしているのかしら」
「アナスタシアのこと?」
そばで刺繍をしていた母親、ドーロン伯爵夫人がキャシーの声に素早く反応した。
「お金が入ってきているから、まだ働いているんじゃないかしら」
伯爵夫人はぶっきらぼうに答えた。アナスタシアには家に給料を入れさせていたが、それは当然のことと捉えており、アナスタシア自身に関心は微塵もなかった。
「まだ働いていたのか、すぐに根を上げると思っていたのだが……」
父親、ドーロン伯爵が嫌味ったらしい低い声音で言った。アナスタシアはアランと結婚しないとなると、すぐに、魔術研究所で働き始めたのだった。なぜ、あのような高名な研究所でアナスタシアなんぞが働いているのか、彼には甚だ疑問だった。
「あなた、何か知らない?」
キャシーは宮殿の護衛を務めている夫のアランに声をかけた。出勤の準備に忙しくしていたが、愛しの妻の声に耳を傾けた。
「……そういえば、侯爵家の息子と親しくしているらしいよ」
「え?」
地味で男を誘う手練手管を持ち合わせていないあんな女がどうして?とキャシーは驚いた。どうせたいしたことのないボンクラだろうと考えた。きっとうだつの上がらない冴えない男で、ついでに、だるんだるんでへどもどしているんだわと想像を膨らませた。
「ねぇ、どのような人?」
「それが、皇太子の護衛のダニエルだそうだ」
「何ですって?」
その名には聞き覚えがあった。まっすぐな黒髪に、キリッとした緑の目に薄く形の整った唇と整った容姿で裕福な侯爵家の長男であり、おまけに超がつくほどに優秀で、人当たりも良く、非常に若い女性に人気があった。
「何でもよくアナスタシアの研究室に出入りしているらしい」
「へぇ、そうなの……」
「僕はもう出かけるよ」
アランはいつものように愛しいキャシーの額に口付けを落として、仕事に出かけて行った。
「お父様、お母様」
キャシーはアランが出て行ったことを確認して、いつも用意させている濡れたハンカチで額を拭った。
「あのね、お願いがあるの」
「「どうしたの、かわいいキャシー」」
「私、ダニエル様が欲しいわ!!」
両親はキャシーの発言に驚きを隠せず、目を見張った。
「アランさんはどうするの?」
伯爵夫人は心配そうに言った。彼女はアランの妻となる女性がアナスタシアからキャシーに変わった際に、アランの両親を説得することに一役買っていたのだ。
「私がアラン様にお話するし、それに、お姉様に突っ返せば大丈夫よ」
そうすればアランはドーロン伯爵家の跡取りとしての地位を維持できる。
「それはつまり、あれをドーロン伯爵夫人にさせる気かな、キャシー」
伯爵は忌々しそうに吐き捨てた。彼は昔からアナスタシアのことを疎ましく思っていた。かわいいキャシーと比べて、愛嬌のない表情や何を考えているかわからない目をしていることから、アナスタシア用の仕置き部屋を設けるほど、彼は目の敵にしていた。
「お父様、突っ返したからと言って、お姉様が伯爵夫人になるまでお元気にしているとは限らないじゃない!」
キャシーはきゃらきゃらと邪気なく笑った。
「それもそうだな、キャシー」
ドーロン伯爵は満足そうにうんうんと頷いた。
「アランさんもあなたが説得すればきっと大丈夫よ」
伯爵夫人も夫と同じようになんとかなると頷いて笑った。
「ええ、そうよね!」
キャシーは両親をいとも容易く説得した。昔から二人はやさしいと彼女は微笑んだ。
「ダニエルさんという方もあなたに会えば、アナスタシアなんてどうでもよくなるわよ」
「ふふふ、そうよね。私の方がかわいいもの!!」
二人とも大好きとキャシーはパッと花が咲くような天真爛漫な笑顔を見せた。
キャシーは父親と母親を愛している。なぜなら、自分の望みや願いを叶え、あらゆることを思い通りにしてくれるために、大事な存在であるからだ。
まずはお姉様の様子を見に行こうかしらと、キャシーは両親に見えないようににんまりと笑った。どういうわけかキャシーは姉が大切にしているものや気に入っているものを見ると、より一層欲しくてたまらなくなるのだ。
「そういえば、お姉様はどうしているのかしら」
「アナスタシアのこと?」
そばで刺繍をしていた母親、ドーロン伯爵夫人がキャシーの声に素早く反応した。
「お金が入ってきているから、まだ働いているんじゃないかしら」
伯爵夫人はぶっきらぼうに答えた。アナスタシアには家に給料を入れさせていたが、それは当然のことと捉えており、アナスタシア自身に関心は微塵もなかった。
「まだ働いていたのか、すぐに根を上げると思っていたのだが……」
父親、ドーロン伯爵が嫌味ったらしい低い声音で言った。アナスタシアはアランと結婚しないとなると、すぐに、魔術研究所で働き始めたのだった。なぜ、あのような高名な研究所でアナスタシアなんぞが働いているのか、彼には甚だ疑問だった。
「あなた、何か知らない?」
キャシーは宮殿の護衛を務めている夫のアランに声をかけた。出勤の準備に忙しくしていたが、愛しの妻の声に耳を傾けた。
「……そういえば、侯爵家の息子と親しくしているらしいよ」
「え?」
地味で男を誘う手練手管を持ち合わせていないあんな女がどうして?とキャシーは驚いた。どうせたいしたことのないボンクラだろうと考えた。きっとうだつの上がらない冴えない男で、ついでに、だるんだるんでへどもどしているんだわと想像を膨らませた。
「ねぇ、どのような人?」
「それが、皇太子の護衛のダニエルだそうだ」
「何ですって?」
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「何でもよくアナスタシアの研究室に出入りしているらしい」
「へぇ、そうなの……」
「僕はもう出かけるよ」
アランはいつものように愛しいキャシーの額に口付けを落として、仕事に出かけて行った。
「お父様、お母様」
キャシーはアランが出て行ったことを確認して、いつも用意させている濡れたハンカチで額を拭った。
「あのね、お願いがあるの」
「「どうしたの、かわいいキャシー」」
「私、ダニエル様が欲しいわ!!」
両親はキャシーの発言に驚きを隠せず、目を見張った。
「アランさんはどうするの?」
伯爵夫人は心配そうに言った。彼女はアランの妻となる女性がアナスタシアからキャシーに変わった際に、アランの両親を説得することに一役買っていたのだ。
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そうすればアランはドーロン伯爵家の跡取りとしての地位を維持できる。
「それはつまり、あれをドーロン伯爵夫人にさせる気かな、キャシー」
伯爵は忌々しそうに吐き捨てた。彼は昔からアナスタシアのことを疎ましく思っていた。かわいいキャシーと比べて、愛嬌のない表情や何を考えているかわからない目をしていることから、アナスタシア用の仕置き部屋を設けるほど、彼は目の敵にしていた。
「お父様、突っ返したからと言って、お姉様が伯爵夫人になるまでお元気にしているとは限らないじゃない!」
キャシーはきゃらきゃらと邪気なく笑った。
「それもそうだな、キャシー」
ドーロン伯爵は満足そうにうんうんと頷いた。
「アランさんもあなたが説得すればきっと大丈夫よ」
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「ええ、そうよね!」
キャシーは両親をいとも容易く説得した。昔から二人はやさしいと彼女は微笑んだ。
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まずはお姉様の様子を見に行こうかしらと、キャシーは両親に見えないようににんまりと笑った。どういうわけかキャシーは姉が大切にしているものや気に入っているものを見ると、より一層欲しくてたまらなくなるのだ。
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