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17. 久しぶりに職場に行くと少しだけわくわくする
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ソフィアは久しぶりに魔法省に出勤した。体調を崩して以来、なんやかんやで職場には顔を出していなかった。ハプニングのせいで山歩きから強制送還をされたが、欲しいものは手に入り、結果的には帰る時間の短縮になったとほくほくしていた。
「ソフィアさん!大丈夫ですか?」
勤務態度が改善された後輩のイライザが駆け寄って来た。ソフィアは目にかけている年下の顔はきちんと覚えている。
「イライザ。今はもう平気だよ、心配かけたかな」
「言われた仕事を片付けて自慢しようと思ったら、体調崩しててびっくりしました」
「そっか。少し見たけれど、早くて正確でとてもよかったよ」
「でしょう!!」
イライザは褒められて喜んでいた。可愛げのあるとソフィアは微笑んだ。
「でも、皆さんにいろいろアドバイスをいただいたおかげもあるんです。私の質問に快く答えてくれて、うれしかったです」
「それはよかったね」
イライザはたしかに勤務態度良くなかったが、まだ新人ということもあり、同僚達は心を入れ替えてくれて嬉しいと感じ、助けてあげたのだろう。そう思わない人であっても、あの仕事量にドン引きして力を貸したはずだ。
「あっ、早く出しに行かないと!」
イライザは用件を思い出したようだった。
「あの、いきなり呼び止めてしまってすみませんでした」
「大丈夫だよ。またね、イライザ」
イライザと別れたソフィアはドミトリーにラーラの人形を見せてもらおうと思い、彼が居そうなところを訪れた。
「ドミトリー!頼みがあるんだーっ!!」
「断りたい」
「あの人形見せて」
ソフィアは声をひそめておねだりした。
「だめだ。殿下からそう仰せつかっている」
「私があの人形に印を付けたんだが、それはどこか見つけたかな?」
「いや、そんな報告は……」
「知りたくない?どこにあるのか、どうやって付けたのか……」
ドミトリーはぐぬぬ知りたいという顔をした。そして、ソフィアを人形のもとに案内した。
「とてもいい。素晴らしい呪い人形だ」
ソフィアはしみじみと頷き、ラーラの死を悼んだ。
「印はどこにある?」
「無いよ」
「は?」
ドミトリーは激怒した。必ず、この邪智暴虐な女を除かなければならぬと決心しそうになった。
「いきなり怒んないでよ、怖いな。今は無いの。だから、報告が上がらなくても仕方ない」
ドミトリーは早く説明しろと首をしゃくって促した。
「呪われた時に、一瞬呪った側からの糸みたいな、アクセスを感じたんだ」
「それを逆探知して印をつけたと?」
「そう、その時はどうやって呪われたかは詳しくわからなかった。でも、とりあえず呪われた物という概念に印はつけることができたってワケ」
「この人形に直接付けたわけではなく、ソフィアを呪った物に印付けをしたのか……」
「うん、話が早い。今は解呪されているから、印は消え、私はこれを引き寄せられない。だが、また、この人形が私を呪うという効力を持てば、印はまた使えるようになる」
「それをやりながら、応急処置もしていたのか?油断も隙もない」
「ふふふ、私は魔法が得意なんだよ。ドミトリーには劣るかもだけれど」
「よく言う」
学生時代、二人はよく魔法使用ありの模擬試合をしており、たいていドミトリーが勝っていた。しかし、ルール無用、不意打ち上等といった状況では、ソフィアが有利だとドミトリーはみていた。
「んで、この人形は確かにラーラさんが作ったんだね」
「ああ、半年程前だそうだが、侍女が作っているところを見ていた」
「髪を巻きつけたのは、いつ?」
「それは知らないと言っていた」
「わりと突発的だったのかな」
「入念に準備された形跡はなかった。それに、あれは憎いという気持ちのみで行う呪いであるから、確実性が薄い」
「ふふふ、随分恨まれたわけだ」
「ソフィア」
ドミトリーはラーラに呪われた自覚があるのかと問いただしたくなった。
「ドミトリー、妹君のご様子は?」
「……あまり仲が良くないのは知っているだろう」
「うん、でも、皇太子妃殿下であられるわけだよ。ちょっと心配とかない?」
「何が言いたい?」
「あの立場でやばいことしたら取り返しがつかなくなるよ」
ソフィアは神妙な顔をした。
「何を知っている?」
「ラーラさんにどうして私を呪ったのか聞いたんだ。そうしたら、殿下が私だけを愛してるって言ってた」
「それは事実だぞ」
「肝に銘じよう」
ソフィアは大袈裟に胸を張った。
「そんで、なぜそう思ったのか聞いたら、殿下の行動をつらつらあげていったんだが、きっかけは皇太子妃殿下のお言葉だったそうだ」
「そうか」
「詳しくは聞けなかったが、皇太子妃がラーラさんに私を呪わせたわけではないとは言い切れないような……」
「それで心配しろと」
「うん、殿下にご報告するのにはちょっと根拠が足りない。だからドミトリー、ハルを守るためにマリアナを気にかけておやりよ」
「……わかった」
ドミトリーよろしく!とソフィアは立ち去った。一度街にある研究室に寄ろうと思い、ルンルンとしながら足を向けた。
「ソフィア様!!!」
すると、急いでいる様子のサーシャがこちらに向かって来た。
「どうしたの、サーシャ」
「あの、タチアナ様がお呼びです」
「え?なんで?」
「何でも緊急事態だとかで、詳しく事情を話してくれないんです」
タチアナは側室オンリーのお茶会であって以来だった。ソフィアにはあまり強い印象は残っていなかった。ジュリアに印象負けをしていたのだろう。
「……これから特別やることもないしなー。じゃあ行こうかー。タチアナさんはどこに?自分の宮?」
「はい、セキエイ宮です」
「じゃあ行こうか!」
ソフィアはサーシャをがしりと掴むと、転移魔法を使ってセキエイ宮に向かった。
「ソフィアさん!大丈夫ですか?」
勤務態度が改善された後輩のイライザが駆け寄って来た。ソフィアは目にかけている年下の顔はきちんと覚えている。
「イライザ。今はもう平気だよ、心配かけたかな」
「言われた仕事を片付けて自慢しようと思ったら、体調崩しててびっくりしました」
「そっか。少し見たけれど、早くて正確でとてもよかったよ」
「でしょう!!」
イライザは褒められて喜んでいた。可愛げのあるとソフィアは微笑んだ。
「でも、皆さんにいろいろアドバイスをいただいたおかげもあるんです。私の質問に快く答えてくれて、うれしかったです」
「それはよかったね」
イライザはたしかに勤務態度良くなかったが、まだ新人ということもあり、同僚達は心を入れ替えてくれて嬉しいと感じ、助けてあげたのだろう。そう思わない人であっても、あの仕事量にドン引きして力を貸したはずだ。
「あっ、早く出しに行かないと!」
イライザは用件を思い出したようだった。
「あの、いきなり呼び止めてしまってすみませんでした」
「大丈夫だよ。またね、イライザ」
イライザと別れたソフィアはドミトリーにラーラの人形を見せてもらおうと思い、彼が居そうなところを訪れた。
「ドミトリー!頼みがあるんだーっ!!」
「断りたい」
「あの人形見せて」
ソフィアは声をひそめておねだりした。
「だめだ。殿下からそう仰せつかっている」
「私があの人形に印を付けたんだが、それはどこか見つけたかな?」
「いや、そんな報告は……」
「知りたくない?どこにあるのか、どうやって付けたのか……」
ドミトリーはぐぬぬ知りたいという顔をした。そして、ソフィアを人形のもとに案内した。
「とてもいい。素晴らしい呪い人形だ」
ソフィアはしみじみと頷き、ラーラの死を悼んだ。
「印はどこにある?」
「無いよ」
「は?」
ドミトリーは激怒した。必ず、この邪智暴虐な女を除かなければならぬと決心しそうになった。
「いきなり怒んないでよ、怖いな。今は無いの。だから、報告が上がらなくても仕方ない」
ドミトリーは早く説明しろと首をしゃくって促した。
「呪われた時に、一瞬呪った側からの糸みたいな、アクセスを感じたんだ」
「それを逆探知して印をつけたと?」
「そう、その時はどうやって呪われたかは詳しくわからなかった。でも、とりあえず呪われた物という概念に印はつけることができたってワケ」
「この人形に直接付けたわけではなく、ソフィアを呪った物に印付けをしたのか……」
「うん、話が早い。今は解呪されているから、印は消え、私はこれを引き寄せられない。だが、また、この人形が私を呪うという効力を持てば、印はまた使えるようになる」
「それをやりながら、応急処置もしていたのか?油断も隙もない」
「ふふふ、私は魔法が得意なんだよ。ドミトリーには劣るかもだけれど」
「よく言う」
学生時代、二人はよく魔法使用ありの模擬試合をしており、たいていドミトリーが勝っていた。しかし、ルール無用、不意打ち上等といった状況では、ソフィアが有利だとドミトリーはみていた。
「んで、この人形は確かにラーラさんが作ったんだね」
「ああ、半年程前だそうだが、侍女が作っているところを見ていた」
「髪を巻きつけたのは、いつ?」
「それは知らないと言っていた」
「わりと突発的だったのかな」
「入念に準備された形跡はなかった。それに、あれは憎いという気持ちのみで行う呪いであるから、確実性が薄い」
「ふふふ、随分恨まれたわけだ」
「ソフィア」
ドミトリーはラーラに呪われた自覚があるのかと問いただしたくなった。
「ドミトリー、妹君のご様子は?」
「……あまり仲が良くないのは知っているだろう」
「うん、でも、皇太子妃殿下であられるわけだよ。ちょっと心配とかない?」
「何が言いたい?」
「あの立場でやばいことしたら取り返しがつかなくなるよ」
ソフィアは神妙な顔をした。
「何を知っている?」
「ラーラさんにどうして私を呪ったのか聞いたんだ。そうしたら、殿下が私だけを愛してるって言ってた」
「それは事実だぞ」
「肝に銘じよう」
ソフィアは大袈裟に胸を張った。
「そんで、なぜそう思ったのか聞いたら、殿下の行動をつらつらあげていったんだが、きっかけは皇太子妃殿下のお言葉だったそうだ」
「そうか」
「詳しくは聞けなかったが、皇太子妃がラーラさんに私を呪わせたわけではないとは言い切れないような……」
「それで心配しろと」
「うん、殿下にご報告するのにはちょっと根拠が足りない。だからドミトリー、ハルを守るためにマリアナを気にかけておやりよ」
「……わかった」
ドミトリーよろしく!とソフィアは立ち去った。一度街にある研究室に寄ろうと思い、ルンルンとしながら足を向けた。
「ソフィア様!!!」
すると、急いでいる様子のサーシャがこちらに向かって来た。
「どうしたの、サーシャ」
「あの、タチアナ様がお呼びです」
「え?なんで?」
「何でも緊急事態だとかで、詳しく事情を話してくれないんです」
タチアナは側室オンリーのお茶会であって以来だった。ソフィアにはあまり強い印象は残っていなかった。ジュリアに印象負けをしていたのだろう。
「……これから特別やることもないしなー。じゃあ行こうかー。タチアナさんはどこに?自分の宮?」
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