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「てか、内務大臣って、何ですか?」
あたしの質問にロックが答える。
「内務大臣とは、秘密警察などを担当する役職だ。特にオフラーナは秘密警察のボスだからな。多くの革命家を逮捕してきた、オイラたちの不倶戴天の敵だ」
「でも、秘密警察のボスなら、警護も堅いんじゃないですか?」
「それでも、やらなきゃならない。あやつを倒さないと、革命運動は頓挫する一方だ」
ロックの熱弁の最中に、表がガヤガヤと騒がしくなり、ドカドカと大学内に踏み込む足音が響く。
「静まれ。リカンクンを殺した犯人が、学内に逃げ込んだという、目撃情報がある。捜索させろ」
ペトロが青ざめる。
「おい、まさか、リカンクンを殺したのって、ドミートリーじゃないだろうな?」
「そうだ。ソフィーに、僕たちへの忠誠心を試させようとしたんだ」
「バカか? リカンクンは、秘密警察の上層部が、俺たち革命家に先に手を出させて、後から犯人を一網打尽にするために、わざと泳がせていた人物だよ。そんな見えすいた罠に引っかかるなんて、ドミートリーはつくづく大バカ野郎だな」
ペトロが頭をかかえる。
「今は仲間どうしで罵り合ってる場合じゃないでしょ! とにかく、機密文書と武器を回収して、ずらかるわよ!」
タマラの言葉に、皆はハッとして、急いで荷物をまとめると逃げ出し始めた。さすがに皆、逃げるのは慣れているとみえて、またたく間にリュックやカバンに荷物をつめ終えると、さっさと逃げ出す。だが、外には、黒い制服を着た秘密警察が待ち構えていた。
「おい、貴様ら、その荷物の中身は何だ? あらためさせろ」
「いやですわ。私とこの子の下着ですよ」
タマラがクネクネと腰を揺らしながら答える。
「下着か。なら、なおさら見せてもらわねばならんな。下着の中に機密文書を縫いつけて隠すなど、革命家の常套手段だからな」
ヒゲの男が、いやらしそうな笑みを浮かべる。あたしは我慢できなくなって、気がついたらヒゲの男に金的をくらわしていた。ヒゲの男が目をむいて悶絶する。
「ソフィー、何てことを。秘密警察に手を出すなんて」
ペトロが顔に手を当てて嘆息するが、ドミートリーはすかさず、あたしから回収してたモーゼル拳銃を取り出すと、秘密警察めがけて発砲した。
「うぎゃー!」
「ぎゃああ! 貴様ら、こんなことをして、ただで済むと思ってんのか!」
だが、ドミートリーは平気だ。
「もちろん、思ってないさ。たから、逃げるぞ、皆」
あたしたちは一目散に逃げ出したが、背後から銃弾がダン、ダンと飛んでくる。そのうち、ドミートリーが「ぐわっ!」と悲鳴をあげて倒れる。どうやら、肺に命中したらしく、胸からドクドクと鮮血があふれてくる。
「僕は、どうせ助からない。ソフィーだけでも逃げろ。あと、モーゼル拳銃と弾倉は持って行け」
あたしはドミートリーからモーゼル拳銃と弾倉を受け取ると、三人と一緒に逃げ出した。だが、秘密警察のやせぎすの男が追いすがる。
「貴様ら、イワノフ伯爵の子息の悪友どもだな。連帯責任で逮捕だ」
そのまま掴みかかろうとするが、ペトロが腕を掴んで投げ飛ばす。
「俺は合気道をやってるんだ。簡単には捕まらないぞ」
「なら、弱そうな女から捕まえるまでだ」
だが、タマラはナイフで斬りつける。
「私は昔、サーカスにいて、そのときにナイフを仕込まれましたから。ナイフなら体の一部みたいに扱えます」
「なるほど。貴様ら二人が強いのは、よくわかった。だが、そのノッポだけは、いかにもひ弱そうだな。皆、こいつを集中的に狙え」
さすがにロックは青くなり、荷物の入ったカバンを大事そうにかかえたまま、逃げ続ける。ペトロやタマラと違い、ロックは弱いと、戦いの素人であるあたしにもわかる。
「まずい。とにかく、俺が死んでもここで秘密警察をくいとめるから、君らだけでも逃げろ」
ペトロは追いすがる秘密警察の集団の中に突っ込むと、一人の男をはがいじめにして、拳銃の盾にする。
「どうだ? 発砲できるもんならしてみろ。そのときは、こいつも道連れだがな」
だが、秘密警察の指揮官らしき男は、平気で男もろともペトロに発砲する。ペトロと秘密警察の男は、腹に銃弾を受けて、盛大に鮮血が吹き出す。
「貴様、仲間の命さえも、大事にしないのか?」
「人間の盾が使えず、残念だったな。我々は、いざというときは、仲間の命でさえ、犠牲にして良いことになってるんでな。貴様が盾にした男は、ちょうど兄弟が作った借金で借金地獄になって、一家心中まで考えてたんだ。殉職なら弔慰金で借金地獄から抜け出せるから、本望だろうよ」
「借金地獄だから何だってんだよ? 俺は、誰も不幸にならない国を目指してるんだ。借金地獄のやつでも救われるような、地上の天国をな。だから、借金で苦しんでるやつは、俺の側につけ。借金なんか帳消しになる国を作ろうじゃないか」
だが、そこでペトロに、さらに数発の銃弾が撃ち込まれる。ペトロは血を吐き、絶命した。
「皆、こいつらの言葉に耳を貸すな。皇帝陛下のお作りになった秩序は、即ち神がお作りになった秩序だ。神に逆らうなど、一介の反逆者ふぜいにできるはずがないではないか」
あたしの質問にロックが答える。
「内務大臣とは、秘密警察などを担当する役職だ。特にオフラーナは秘密警察のボスだからな。多くの革命家を逮捕してきた、オイラたちの不倶戴天の敵だ」
「でも、秘密警察のボスなら、警護も堅いんじゃないですか?」
「それでも、やらなきゃならない。あやつを倒さないと、革命運動は頓挫する一方だ」
ロックの熱弁の最中に、表がガヤガヤと騒がしくなり、ドカドカと大学内に踏み込む足音が響く。
「静まれ。リカンクンを殺した犯人が、学内に逃げ込んだという、目撃情報がある。捜索させろ」
ペトロが青ざめる。
「おい、まさか、リカンクンを殺したのって、ドミートリーじゃないだろうな?」
「そうだ。ソフィーに、僕たちへの忠誠心を試させようとしたんだ」
「バカか? リカンクンは、秘密警察の上層部が、俺たち革命家に先に手を出させて、後から犯人を一網打尽にするために、わざと泳がせていた人物だよ。そんな見えすいた罠に引っかかるなんて、ドミートリーはつくづく大バカ野郎だな」
ペトロが頭をかかえる。
「今は仲間どうしで罵り合ってる場合じゃないでしょ! とにかく、機密文書と武器を回収して、ずらかるわよ!」
タマラの言葉に、皆はハッとして、急いで荷物をまとめると逃げ出し始めた。さすがに皆、逃げるのは慣れているとみえて、またたく間にリュックやカバンに荷物をつめ終えると、さっさと逃げ出す。だが、外には、黒い制服を着た秘密警察が待ち構えていた。
「おい、貴様ら、その荷物の中身は何だ? あらためさせろ」
「いやですわ。私とこの子の下着ですよ」
タマラがクネクネと腰を揺らしながら答える。
「下着か。なら、なおさら見せてもらわねばならんな。下着の中に機密文書を縫いつけて隠すなど、革命家の常套手段だからな」
ヒゲの男が、いやらしそうな笑みを浮かべる。あたしは我慢できなくなって、気がついたらヒゲの男に金的をくらわしていた。ヒゲの男が目をむいて悶絶する。
「ソフィー、何てことを。秘密警察に手を出すなんて」
ペトロが顔に手を当てて嘆息するが、ドミートリーはすかさず、あたしから回収してたモーゼル拳銃を取り出すと、秘密警察めがけて発砲した。
「うぎゃー!」
「ぎゃああ! 貴様ら、こんなことをして、ただで済むと思ってんのか!」
だが、ドミートリーは平気だ。
「もちろん、思ってないさ。たから、逃げるぞ、皆」
あたしたちは一目散に逃げ出したが、背後から銃弾がダン、ダンと飛んでくる。そのうち、ドミートリーが「ぐわっ!」と悲鳴をあげて倒れる。どうやら、肺に命中したらしく、胸からドクドクと鮮血があふれてくる。
「僕は、どうせ助からない。ソフィーだけでも逃げろ。あと、モーゼル拳銃と弾倉は持って行け」
あたしはドミートリーからモーゼル拳銃と弾倉を受け取ると、三人と一緒に逃げ出した。だが、秘密警察のやせぎすの男が追いすがる。
「貴様ら、イワノフ伯爵の子息の悪友どもだな。連帯責任で逮捕だ」
そのまま掴みかかろうとするが、ペトロが腕を掴んで投げ飛ばす。
「俺は合気道をやってるんだ。簡単には捕まらないぞ」
「なら、弱そうな女から捕まえるまでだ」
だが、タマラはナイフで斬りつける。
「私は昔、サーカスにいて、そのときにナイフを仕込まれましたから。ナイフなら体の一部みたいに扱えます」
「なるほど。貴様ら二人が強いのは、よくわかった。だが、そのノッポだけは、いかにもひ弱そうだな。皆、こいつを集中的に狙え」
さすがにロックは青くなり、荷物の入ったカバンを大事そうにかかえたまま、逃げ続ける。ペトロやタマラと違い、ロックは弱いと、戦いの素人であるあたしにもわかる。
「まずい。とにかく、俺が死んでもここで秘密警察をくいとめるから、君らだけでも逃げろ」
ペトロは追いすがる秘密警察の集団の中に突っ込むと、一人の男をはがいじめにして、拳銃の盾にする。
「どうだ? 発砲できるもんならしてみろ。そのときは、こいつも道連れだがな」
だが、秘密警察の指揮官らしき男は、平気で男もろともペトロに発砲する。ペトロと秘密警察の男は、腹に銃弾を受けて、盛大に鮮血が吹き出す。
「貴様、仲間の命さえも、大事にしないのか?」
「人間の盾が使えず、残念だったな。我々は、いざというときは、仲間の命でさえ、犠牲にして良いことになってるんでな。貴様が盾にした男は、ちょうど兄弟が作った借金で借金地獄になって、一家心中まで考えてたんだ。殉職なら弔慰金で借金地獄から抜け出せるから、本望だろうよ」
「借金地獄だから何だってんだよ? 俺は、誰も不幸にならない国を目指してるんだ。借金地獄のやつでも救われるような、地上の天国をな。だから、借金で苦しんでるやつは、俺の側につけ。借金なんか帳消しになる国を作ろうじゃないか」
だが、そこでペトロに、さらに数発の銃弾が撃ち込まれる。ペトロは血を吐き、絶命した。
「皆、こいつらの言葉に耳を貸すな。皇帝陛下のお作りになった秩序は、即ち神がお作りになった秩序だ。神に逆らうなど、一介の反逆者ふぜいにできるはずがないではないか」
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