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あたしはまず、生徒会を通さずに、全校生徒に直接訴えることを考えた。といっても、校内の掲示板にビラを貼るのは、生徒会の許可が必要なので、SNSを使って生徒の間に徐々に支持を広げていくしかない。
「あたしたち歴史クラブは、教科書に載ってないような、歴史の真実を明らかにする部です。なのに、文化祭で中国の少数民族にまつわる展示をしようとすると、生徒会顧問の六嶋先生に却下されました。六嶋先生は中国共産党の習近平の走狗です。生徒の皆さん、六嶋先生の横暴を許してはいけません」
書き込んでからしばらくは、生徒たちから「そうだ、そうだ」と、あたしたちを支持する書き込みがあったが、翌日には無くなってしまった。それどころか、三日もたつと、田井中部長が生徒会に呼び出され、「歴史クラブは無期限活動停止!」と言い渡され、部室も使用禁止、部費も凍結された。
「何でですか? 生徒会の横暴もいいところですよ」
放課後、高校の近くの喫茶店『陳雲』でコーヒーを飲みながら、あたしたち三人は臨時の会議を開いていた。田井中部長によれば、校内だと、生徒会のスパイがどこにいるか、わからないからだ。
「かすみちゃんは憤慨するけどな、生徒が誰でも閲覧できるSNSってのは、生徒会のスパイにも簡単に見つかるんやで。かすみちゃんの行動は軽はずみや。もっと慎重にいかんとな」
「でも、生徒会のスパイって、そんなに大勢いるんですか?」
「そりゃ、おるで。六嶋は、生徒会に協力する生徒には、内申点を大盤振る舞いしとるからな。内申点欲しさに協力する輩は、山ほどいる。かすみちゃんの書き込んだSNSも、生徒会に目をつけられて、今頃は生徒会に乗っ取られとんやないか?」
「そんな!? 教師の職権乱用じゃないですか。教育委員会に訴えましょうよ」
「訴えたところで、何も変わらん。SNS上の書き込みなんて、誰でもできる無責任なものやし、SNSを生徒会が乗っ取ったと訴えたところで、生徒会は証拠隠滅なんて簡単にできるしな。歴史クラブの活動停止の理由にしても、教師や学校の方針に逆らったとでも何とでも理由をつけられるもんよ。だいたい、ウチらが活動するための部室も部費も、生徒会から支給されとんやからな」
「とにかく、部室を没収されたぐらいでは、あたしは引き下がりませんよ。別に部室が無くても部活はできますから。こうなりゃ、三國志の桃園の誓いみたいに、この喫茶店『陳雲』で決起集会をしましょうよ」
「そうですね。なら、コーヒーの他にケーキも頼みましょうよ。桃園の誓いになぞらえて、僕は白桃のケーキにしますね」
「なら、ウチも白桃」
「あたしも白桃にします」
こうして、コーヒーのおかわりと、白桃ケーキが三個運ばれてくる。あたしたちは改めてコーヒーで乾杯した。
「それでは、反動派教師、六嶋打倒を祈って乾杯!」
「「乾杯!」」
田井中部長の音頭で乾杯すると、あたしたちは白桃ケーキをほおばる。
「ところで、歴史クラブの顧問って、誰なんですか? あたし、今まで会ったこともないんですが」
「倫理政経の後藤昇太先生や。大学出たてで教師ニ年目やから、まだ学生気分の抜けない人やけどな。どうせ、学生時代は帰宅部で頼りにならん人やったんやろうから、ウチらみたいな変人の集まりである歴史クラブの顧問を押し付けられたんやろうけど」
「その後藤先生って、こういうときに頼りにならないんですか?」
「頼りにはならんと思うで。部活にもあまり顔を出さんしな。文化部やから、顧問が出席せんでも済むと思って、なめとるんやろう。そんなやつやから、歴史クラブが無期限活動停止になって、むしろ喜んどるやろうな」
あたしたちの間に沈黙が流れる。
「わかりました。あたしが後藤先生を説得して、味方につけてみます」
「無理やと思うで。後藤先生は六嶋の大学の後輩や。しかも、六嶋以上に極左の歴史観を持っとるからな。ウチらとはわかり合えん」
冷めたように言う田井中部長に対し、あたしは食い下がる。
「そうとわかれば、ますます説得し甲斐があります。同時に後藤先生の歴史観も正してみましょう」
「あたしたち歴史クラブは、教科書に載ってないような、歴史の真実を明らかにする部です。なのに、文化祭で中国の少数民族にまつわる展示をしようとすると、生徒会顧問の六嶋先生に却下されました。六嶋先生は中国共産党の習近平の走狗です。生徒の皆さん、六嶋先生の横暴を許してはいけません」
書き込んでからしばらくは、生徒たちから「そうだ、そうだ」と、あたしたちを支持する書き込みがあったが、翌日には無くなってしまった。それどころか、三日もたつと、田井中部長が生徒会に呼び出され、「歴史クラブは無期限活動停止!」と言い渡され、部室も使用禁止、部費も凍結された。
「何でですか? 生徒会の横暴もいいところですよ」
放課後、高校の近くの喫茶店『陳雲』でコーヒーを飲みながら、あたしたち三人は臨時の会議を開いていた。田井中部長によれば、校内だと、生徒会のスパイがどこにいるか、わからないからだ。
「かすみちゃんは憤慨するけどな、生徒が誰でも閲覧できるSNSってのは、生徒会のスパイにも簡単に見つかるんやで。かすみちゃんの行動は軽はずみや。もっと慎重にいかんとな」
「でも、生徒会のスパイって、そんなに大勢いるんですか?」
「そりゃ、おるで。六嶋は、生徒会に協力する生徒には、内申点を大盤振る舞いしとるからな。内申点欲しさに協力する輩は、山ほどいる。かすみちゃんの書き込んだSNSも、生徒会に目をつけられて、今頃は生徒会に乗っ取られとんやないか?」
「そんな!? 教師の職権乱用じゃないですか。教育委員会に訴えましょうよ」
「訴えたところで、何も変わらん。SNS上の書き込みなんて、誰でもできる無責任なものやし、SNSを生徒会が乗っ取ったと訴えたところで、生徒会は証拠隠滅なんて簡単にできるしな。歴史クラブの活動停止の理由にしても、教師や学校の方針に逆らったとでも何とでも理由をつけられるもんよ。だいたい、ウチらが活動するための部室も部費も、生徒会から支給されとんやからな」
「とにかく、部室を没収されたぐらいでは、あたしは引き下がりませんよ。別に部室が無くても部活はできますから。こうなりゃ、三國志の桃園の誓いみたいに、この喫茶店『陳雲』で決起集会をしましょうよ」
「そうですね。なら、コーヒーの他にケーキも頼みましょうよ。桃園の誓いになぞらえて、僕は白桃のケーキにしますね」
「なら、ウチも白桃」
「あたしも白桃にします」
こうして、コーヒーのおかわりと、白桃ケーキが三個運ばれてくる。あたしたちは改めてコーヒーで乾杯した。
「それでは、反動派教師、六嶋打倒を祈って乾杯!」
「「乾杯!」」
田井中部長の音頭で乾杯すると、あたしたちは白桃ケーキをほおばる。
「ところで、歴史クラブの顧問って、誰なんですか? あたし、今まで会ったこともないんですが」
「倫理政経の後藤昇太先生や。大学出たてで教師ニ年目やから、まだ学生気分の抜けない人やけどな。どうせ、学生時代は帰宅部で頼りにならん人やったんやろうから、ウチらみたいな変人の集まりである歴史クラブの顧問を押し付けられたんやろうけど」
「その後藤先生って、こういうときに頼りにならないんですか?」
「頼りにはならんと思うで。部活にもあまり顔を出さんしな。文化部やから、顧問が出席せんでも済むと思って、なめとるんやろう。そんなやつやから、歴史クラブが無期限活動停止になって、むしろ喜んどるやろうな」
あたしたちの間に沈黙が流れる。
「わかりました。あたしが後藤先生を説得して、味方につけてみます」
「無理やと思うで。後藤先生は六嶋の大学の後輩や。しかも、六嶋以上に極左の歴史観を持っとるからな。ウチらとはわかり合えん」
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