恋愛小説2

七海美波

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ハンバーグセットを食べ終わると、あたしは小平さんとLINEアドレスを交換して、ファミレスを出た。
「とにかく、内田さんと連絡をとらないと」
あたしは内田さん相手にメールしてみる。
「初めまして。小平さんの紹介でメールさせていただいた、虹崎かすみと申します。高校一年生です。どうしてもお聞きしたいことがあって、メールさせていただきました」
メールといっても、迷惑メール対策のための、フリーメールのアドレスにだが。昼間は忙しいのか、返信がなかった。
「なかなか返信してこないってことは、あたしのことをまだ信用してないのかな。まあ、家庭教師とできちゃった挙げ句に、捨てられたなんて、ただでさえ他人には言いたくないだろうけど」
小平さんは、
「内田さんが心を開いてくれるかどうかは、虹崎さんしだい。男性のボクでは聞き出せないことでも、女性の虹崎さんなら聞き出せるかもしれないが、こればかりは興味本位で聞き出してはいけないことだからね」
と言っていたので、あたしの配慮が足りなかったのかもしれない。でも、「同じ女性だから女性に配慮できる」という理屈は、「同じ欠点をもってるから相手をいじめない」ことと同義ではない。むしろ、そんな相手とは反発し合うだけだ。昔読んだドストエフスキーも、「満腹な者には、飢えた者の気持ちはわからない。でも、飢えた者にも、飢えた者の気持ちはわからない」と言っているぐらいである。
「こりゃ、あたしも漫画とかで、心理学を勉強したほうが良さそうだわ」
漫画なら、女の子を凌辱するなどの場面も出てくるが、解決策となると、ほとんど出てこないのだ。せいぜい、凌辱した悪漢に、女の子の彼氏や友人が天誅を加えるぐらいで、女の子の心を根本的に癒やすような解決策はない。
考えた末に、あたしは真正直に内田さんにぶつかることにした。
「あたしの態度に失礼な点があれば謝ります。でも、後藤にもてあそばれて捨てられたなんて、くやしくないですか? そんな後藤が、のうのうと高校教師として倫理政経を教えていて良いのでしょうか? あたしも後藤の態度は許せません」
『だからって、あんたにアタシの何がわかるの? わからないなら、首を突っ込まないで』
「ですから、あたしに考えがあります。内田さんだって、このまま泣き寝入りしたくはないでしょう。まあ、聞くだけ聞いてみて、それに乗るかどうかは、内田さんが決めていただければ良いです」
あたしは内田さんに計画の詳細を伝えた。内田さんからは、『なるほど。わかりました。虹崎さんに任せます』と返信がきた。
帰宅すると、あたしは早速、行動を起こす。まずは、家庭教師時代の教え子である女子生徒たちと、連絡をとってネットワークを作らねばならない。そのネットワークが、あたしの計画には不可欠なのだ。実際、小平さんに話を聞いたところ、後藤先生は家庭教師時代に、内田さん以外にも何人もの教え子と関係をもっていたらしい。ただ、こればかりは、小平さんや内田さんを始め、個々の女子生徒たちに連絡をとり、一人ずつ話をして回らねばならないから、骨の折れる作業だ。
大学時代の同期だけあって、小平さんが複数の教え子たちのフリーメールアドレスを知っていたのは大きかった。小平さんの情報だけで、三人はあたしの案に賛同したのだ。もちろん、内田さんに仲介してもらえなければ、一介の高校生の話になど、耳を傾けてはもらえなかったが。
とりあえず、内田さんを始め、四人まで協力をとりつけることができたので、次に後藤先生の今月の予定を調べることにする。しかし、これが難しいのだ。手帳は肌見離さず持ち歩くし、職員室のパソコンを盗み見ようにも、職員室にはいつも他の先生がいるので、盗み見ようがない。
「こうなりゃ、お色気作戦よ」
自分で言うのも何だが、あたしはけっこう可愛いほうだ。早速、他の若い社会の先生に対して実行する。この先生は、彼女いない歴が年齢のモテないデブ男だから、効果はあるはずだ。
「後藤先生、奥さんいらっしゃるんですか? もし、いらっしゃらないなら、あたしにも付き合う権利、ありますよね?」
言いながら、その先生にだけ見えるように、チラリとスカートをまくって太ももを見せる。
「いるよ。でも、虹崎には関係ないだろう」
そう言いつつも、目は太ももをチラチラ見ている。手ごたえありと見たあたしは、スカートをもう少しまくる。
「まあ、関係なくもないか。奥さんいるよ。聞いた話では、大学時代に付き合ってたのが、結婚まで至ったそうだが。先生も、それ以上は聞いてない」
「え~? 聞いてんのに、忘れただけでしょう?」
あたしはさらにスカートをまくる。もう少しでパンツが見えそうだ。
(ああ、キモいおっさんだ。早く終わりにしたいや)
「ああ、そうだ。思い出したぞ。奥さんは大変な鬼嫁だったな。後藤先生は本当は、遊んでから逃げる予定だったが、奥さんが『お腹の中に、あんたとの子供もいるんだ。逃げたら殺す』と包丁で脅すから、仕方なく結婚までしたらしい」
「マジですか。なら、ご家族でファミレスとか行くことはありますか?」
もうパンツの端っこぐらいなら、見られてもいいやと、ヤケになったあたしは、さらにスカートをまくる。先生が鼻の下を伸ばしてくるのがわかり、不快きわまりないが、ここが我慢のしどころだ。
「ああ、二週間に一度は、鬼嫁の機嫌をとるために、ガストで食事するみたいだね。だいたい、夜の七時台が多いかな」
「ありがとうございます。これで、後藤先生にアタックできます」
あたしはお辞儀すると、速攻で職員室を飛び出した。
(ああ、気持ち悪かった。帰ったら、一番にシャワー浴びて下着も替えたいわ)
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