将棋系小説

七海美波

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翌日からも、妹は熱心に将棋を研究し続けた。私が思うに、「負けたけど、以前より格段に強くなった」という講師の言葉が効いたのだろう。人間、強くなれたという手ごたえがあれば、それを励みにして努力し続けられるものだ。そのうち、私が対局しても、だんだん勝ちにくくなってきた。
そして、前回の井神との対局から二ヶ月後に、妹は三度、将棋教室を訪れた。「井神のクソバカ、今日こそは勝って、地べたにはいつくばらせてやるからな!覚悟しとけ!」「へえ、また負けに来たんだ。こりないねぇ。言っとくけど、私もあれから特訓して、将棋教室では中位ぐらいに強くなったんだ。あんたがどれだけ強くなったか知らないけど、簡単に勝てると思うなよ。地べたにはいつくばるのは、てめえのほうだ!」
こうして、三度目の対局が始まった。今回は妹が先手だ。さすがに鬼ごろしと、それに続いて角道が開くのを警戒してか、井神は金と銀で王さんの周囲を固め、歩を前面に出しながら、飛車と角で攻め寄せる戦法をとってきた。さすがの妹も、この堅陣には、うかつに手が出せない。「どうしたの?あんたの得意な鬼ごろしをやろうにも、これじゃ簡単にはできないよ?左側の陣地を金と銀で固め、右側の陣地から飛車と角が長いリーチを使い、歩と桂馬と香車で攻めるから、あんたにできるのは陣地の左側だけで応戦することだけね」実際、妹の左側の陣地は、井神に押し込まれていた。井神は居飛車を使ってきたため、前に動けない角が不利なのだ。しかも、桂馬を盤の中央に移動し、鬼ごろしをかけようと牽制してきたので、妹の金と銀が飛車道に上がってしまい、飛車の動きが封じられているのだ。そのうち、井神の飛車が妹の左側の陣地に入って成り、角を取られてしまう。「あーら、口ほどにもないわね。私に地べたをはわせるんじゃなかったの?」妹は口惜しそうというより、苦しそうだ。私も、ここまで一方的な対局になるとは思わなかった。妹が強くなっている間に、井神もまた強くなっていたのだ。だが、妹もただでは終わらなかった。銀と金を斜めに配置して、井神の飛車の隣に配置することで、左側の陣地の桂馬と香車を取りにきた飛車を封じたのだ。今度は井神が顔をヒクッと引きつらせる番だ。「へえ、なかなかやるじゃない。私が飛車や角の前衛として動かしてた金と銀を取って、意味の無さそうな所に打った銀の斜め後ろに金を配置することで、飛車を封じこめるとはね。これは一本取られたわ」とりあえず、井神の飛車に逃げ道は無く、飛車と金の交換になる。ここからは妹の反撃だ。
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