将棋系小説

七海美波

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二ヶ月が経過した。妹は食事もまともに取らずに、ひたすら将棋漬けの日々を送っているため、日に日にやつれていき、それでも、まとう空気は鬼気迫るものがあるため、私から見ると幽鬼のようだった。私は内心、怖くもあり、同時に少しうらやましくもあった。妹の行動は常軌を逸してるが、私にはここまで熱中できる趣味は無かったからだ。
そして、ある日、妹は勝てる目途がたったのか、急に将棋教室に行きたいと言い出した。「今度こそ、井神のクソバカに雪辱するんだ!」「わかった。じゃあ連れてくけど、今度は駒を投げつけちゃダメよ」こうして、私は再び妹を将棋教室に連れてきた。「やい、井神のアホ、私ともう一回、対局しろ!」部屋の隅で詰将棋を解いていた井神頼子は、面倒くさそうに、「はぁ?またあんた?こりないわねぇ。ただし、今度は私も遊びじゃなく、全力でいかせてもらうから、吠え面をかくなよ」と言い、対局に応じた。
今回は妹が先手だ。やはり「鬼ごろし」で勝負をかける。「だから、その手はお見通しだって言ってんのよ。学習能力ないの?」井神は妹の桂馬の前に歩を進めて、取ろうとする。ところが、歩が動いたことで、妹の角道が開いてしまい、妹の角が敵陣に入って成る。「な、何ですって?こんなのあり?」井神は動揺するが、後の祭りだ。妹は、「あんたこそ、学習能力ないわね。さあ、陣地の左側に拠点を作らせてもらうわ」と不敵に笑い、飛車も敵陣に入れて、飛車と角を巧みに連動させながら、敵陣の左側の桂馬と香車を取り、拠点を作る。「やってくれたわね。でも、私だって、あんたの陣地の左側に拠点を作らせてもらうわ」井神も飛車と角を巧みに連動させながら、妹の左側の陣地に入らせて拠点を作る。「しまった。やってくれてんじゃない」妹がほぞをかむ。互いの陣地の中央は、金や銀が強固に守りを固めており、簡単には切り崩せない。「なら、こんな手はどう?」井神が飛車を盤の中央部に移動させ、飛車の前に香車や桂馬や歩を打って、妹の陣地を切り崩そうとする。妹は金と銀で応戦し、自分の飛車も盤の中央に移動させて同じ手で対抗しようとするが、何度も飛車を動かすうちに、いつの間にか井神の角道に入ってしまい、飛車を取られてしまう。「しまった!うっかりしてた」「こんな手に引っかかるなんて、まだまだね。さあ、飛車が手に入った以上、こっちのもんだわ。一気に勝負をつけさせてもらうわよ」結局、二枚の飛車を使う井神には勝てず、妹は今日も詰まされてしまった。妹は「うっ…うっ…」と泣き出してしまう。「情けないわね。負けて泣くぐらいなら、最初から大口たたかないでよ」井神は興ざめしたように席を立つ。妹はしばらく泣いていたが、やがて「帰ろう」と言って席を立つ。講師の女性は、「泣くほどのことじゃないわよ。前回よりは格段に強くなってて、正直驚いちゃったわ。何も恥じる必要はないわよ。胸を張りなさい」と言って慰めてくれたが。
「私、もっともっと練習して強くなりたい。でも、今日は疲れちゃったから、今日だけは休ませて」妹は家に帰ると、久しぶりにまともに食事をして、死んだように眠った。私は「よくがんばったね。おやすみ」とつぶやくと、妹の部屋のドアを閉めた。
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