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第12話:思っていたより、大きいのですが!?
4.
しおりを挟む「では、我々は他の地域も回りますのでお先に。あぁ、エリアナ嬢が作るパンやご飯は本当に美味しいので、急いでまた食べに行かないと。それでは!」
カイとアンディは急いで温泉宿を出て、風魔法を使って一気にその場から離れる。
本来、風魔法では一人しか移動できないのだが、カイは規格外なのでアンディも一緒に移動させることができた。
カイとアンディの足元から、クリス王太子の叫ぶ声が聞こえる。
「おい! 二人はエリアナの手料理を食べたのか!?」
それを聞いたカイは「プハッ」と吹き出してしまった。
「ハハッ あの王太子は、エリアナの手料理が食べられなくて悔しがってるのか! この瘴気や魔獣を解消できないことを、悔しがるべきなんだが」
「……カイ様も悪い人ですね。わざと挑発するような言い方をしましたよね?」
「いや? エリアナのご飯を食べたいのは本当だが?」
「フッ あなたも素直じゃないですね」
そんなことを話しながら、カイとアンディは馬車で移動するエリアナ、ケイティの元へ急いで移動した。
***
「カイ様、早かったですね! クリス様とお話しできたのですか?」
「あぁ、もちろんだよ。たまたま温泉宿の主人がエリアナのことを話していて、君がいたことがバレてしまったんだが……」
「まぁ! 何か言われましたか?」
カイ様、アンディと合流した私たちは、途中からカイ様・私の馬車と、アンディ・ケイティの馬車に分かれた。
今、私はカイ様と向かい合って座っている。
「君が魔獣退治に参加したことにとても驚いていたよ。あと、君の動向を追っているようだった。君の作ったパンやご飯を食べたことがないことを悔しがっていたな」
カイ様はクリス王太子と話していたことを思い出し、「クク」と笑っていた。
「もう、クリス様は何がしたいのか、本当によく分からないですね!」
「ハハ、エリアナは分からなくて良いよ。そうだ、次に行く街は海辺にある『メーア』と言う場所だったね」
「えぇ、メーアは王都からも距離があるので、私は行ったことが無いんです。カイ様の故郷、マリン帝国も首都が海の近くでしたよね? どのような場所なのですか?
以前、何の食材が有名なのかは聞いたことがあるが、それ以外は地理の授業で学んだことしか知らなかった。
「キアラ王国は北にあるけど、マリン帝国は南にあるから年中暖かいし、国民も陽気な人が多いね。もちろん魚もとても美味しいよ」
「まぁ、レモンやオリーブ、香辛料だけでなく魚も! ますます行ってみたいです」
「……いつか、私の故郷に一緒に来てくれるか?」
カイ様が私の空いた手を取り、微笑みながら真剣な眼差しを向ける。『ただ一緒に食材を探しに行く』以外の意味が含まれているように感じた。
この誘いも、『元同級生』以上の距離感になっていることも、どれも嬉しかった私の答えは一つだった。
「はい、もちろんです。カイ様が案内してくださいますか?」
「あぁ、エリアナに見せたい景色が沢山ある。必ず行こう」
こうして私達を乗せた馬車は、海辺の街・メーアへと到着したーー。
***
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