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第13話:海の幸と不思議な魔法
1.
しおりを挟む私たち一行は、王都の外れにある海辺の街・メーアに到着した。この海を渡れば、カイ様の故郷・マリン帝国がある。
「ここに来るのは久しぶりだな、祖国を思い出す」
「潮風が心地良いですね……。ここにはどんな食材があるのか、楽しみです!」
「ハハッ エリアナは本当に食べることばかりだな。それが可愛い所でもあるんだけど」
「カイ様、それって褒めてます?」
「もちろん」
そんなことを話しながら、メーアの街を一望できる場所に立つ。海面に太陽の光が照らされて、キラキラと光の粒が輝いているように見えた。
「魔獣が出てくるまで、少し余裕があるかな? 急いで出てきてしまったから、きちんと休んで英気を養おう」
「えぇ、今回は水属性の魔獣なので、アンディが一番活躍すると思いますが。アンディ、ゆっくり休んでね?」
「……私一人では厳しいと思いますので、作戦を練った方が良さそうですね。あとは、エリアナ様のご飯を食べると、なぜか魔力が増しますので是非」
アンディがカイ様の様子を見ながら、お願いしてくる。
カイ様はムッとしていたが、自分が一番食べているからだろうか。視線で不満を訴える程度で、それ以上何も言わなかった。
「荷物を置いたら、早速、市場に行ってみても良いですか?」
「もちろんだよ。すぐに一緒に行きたい所なんだけど、私とアンディはドルフ村で退治した魔獣について祖国に報告する必要があるんだ。
なるべく早く報告書をまとめるから、先にケイティと二人で見ておいで」
「分かりました! 裏通りや人気の無い所は行かないように気をつけますね」
「あぁ、万が一何かあったら、そのネックレスで知らせて欲しい」
「はい」
そうして、私とケイティは早速市場に繰り出した。
以前行ったグラニットの市場とは違い、新鮮な魚介類やマリン帝国から一部輸入した香辛料も並んでいた。
「いらっしゃい! お嬢ちゃん達、何か買い物かい?」
「えぇ! 今日メーアに到着したばかりなので、まずはどんな物があるか見に来たんです!」
「そうかい、ここら辺は新鮮な魚がいっぱいで、みんな刺身にして食べることが多いんだ。王都の方まで運ぶと、どうしても鮮度が落ちるから焼き魚になっちまうみたいだけど」
「確かに王都で魚と言ったら、ほとんど焼き魚ですねぇ! あら、あの方は……?」
並んだ魚介類を前にうろうろしながら、色んな人に「これはどう調理をすれば良いんだ?」と聞いている人がいた。
焦っている様子から、何かあったのだろうと察してつい声をかけてしまう。
「あの~何かお困りですか?」
「え、あぁ……実はこの街で宿を運営しているんだが、そこに急遽、王太子殿下や聖女様が滞在することになっちまって。
うちで出す飯なんて刺身か焼き魚か、あとはパンとスープくらいだから、凝った料理なんて出せなくて困ってるんだよ」
「まぁ。王家専属の料理人は一緒にいらっしゃらないのですか?」
「何でも、王都では焼き魚が中心だから、王都では食べられないような魚料理が食べたいんだとか。ったく、そんなこと急に言われても困るんだよなぁ……」
「色々と要望があるのですね」
前世でプレイした乙女ゲームでは、クリス様が食事にこだわる場面なんて一度も出てこなかったと思うのだが……。どういうことだろう? と首を傾げて、ケイティと顔を見合わせてしまった。
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