婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

有明波音

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第13話:海の幸と不思議な魔法

2.

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(目の前で困っている人がいて、自分の料理で解決出来るかもしれない)

 そう気付いてしまったからには、首を突っ込まずにはいられない。うずうずとしながら、様子を伺って口を開いた。


「あのー、私料理が得意なのですが。良かったらお手伝いいたしましょうか?」

「お嬢様!!」

「えっ! 良いのかい?! でも、お嬢様と呼ばれるくらいだから、貴族とか身分の高い家柄なんじゃ……」

「いえ、気にしないでください。困った時は助け合う、そこに身分は関係ないでしょう?」

「それはありがてーけど……」

「まず、王都では食べられないような魚料理から考えましょうか!」


 隣にいたケイティは頭を抱えていたけれど、すぐに気を取り直したようだった。


「それにしても、日頃焼き魚を食べている王太子殿下に刺身のような生魚は抵抗がないのでしょうか?」

「……確かに、王都から来る人間は、最初は抵抗があるな。『こんな物を出すのか?』って言う奴までいるから、結局焼き魚を出すことが多くなってる」

「そうなのですね。なるべく抵抗がなく、でも王都では食べられないような魚料理……」

「それにしてもお嬢様、なかなか難題ですね。新鮮だからこそ、ここで生魚が食べられると言うのに」

「本当、我が儘言わないで欲しいわよね。さて、どうしようかしら」


 そう言って、前世の料理を思い出しながら市場を見渡す。そこにはマリン帝国から輸入したオリーブオイルや、艶々のトマトも並んでいた。


「あ、一品目はアクアパッツァにしましょう!!」

「アクアパッツァとは何ですか?」

「魚をオリーブオイルやニンニクでソテーして、ワインやトマト、貝類と一緒に煮るの。魚の旨みがしっかり出るし、パンに浸して食べても美味しいわ。他には何にしようかしら……」

「いや~~お嬢ちゃん、料理に詳しいんだな!」

「お嬢ちゃんではなく、“エリアナ様“とお呼びください!」

「おっ、おう……」


 アクアパッツァとパンだけでも十分かもしれないが、せっかく新鮮な魚介類があるのだ。他にも色々と試したくなってしまった。

 市場を再度見渡すと、先ほどのトマトとオリーブだけでなく、他の街から取り寄せたチーズや、なんとお米まで発見した。


「まぁ! コムギだけじゃなくて、ここにはライスもあるのね! よし、決めたわ。カプレーゼとパエリアも追加しましょう!!」

「カプレーゼにパエリア?? 先ほどのアクアなんちゃらとは違うのかい?」

「えぇ! でも、どれもとっても美味しいので、楽しみにしていてくださいね!」

「そうか、あ、そうだお嬢ちゃん。じゃなくて、エリアナ様」


 『お嬢ちゃん』と言った瞬間、ギロっとケイティに睨まれた宿屋の主人はすぐに訂正した。


「最近この辺も瘴気が広がっていて、海の生き物もその影響を受けているのか、市場のものを生で食べて体調を崩している人も出始めてるんだ。
 王太子殿下にそんな食材で食べさせて大丈夫か? 他の地域の野菜とかにした方が良いかな、と思い始めたんだが……」

「まぁ、そのような影響が出ているのですね!? 今回は火を通す料理なので大丈夫かと思いますが……体調を崩された方々が心配ですね」


(海を挟んで向こう側にはマリン帝国もあるのに、大丈夫なのかしら)

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