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第14話:クリス王太子の突撃
2.
しおりを挟む「……カイ様が原因なのですか?」
カイ様は『はて、何のことかな?』とでも言うような顔つきで、目を逸らしている。隣にいたアンディがコホンと咳をした。
「エリアナ様、カイ様が王太子殿下に『エリアナ嬢が作るパンやご飯は本当に美味しいので、急いでまた食べに行かないと』とおっしゃったのは事実です」
「カイ様ったら、本当に私が作るご飯が好きなのですね!」
「お嬢様、感心する所がちょっとズレてます……」
そんなやり取りをしていると、マリア様がおずおずと会話に割って入ってきた。
「あの、エリアナ様……!」
「はい、マリア様。どうされましたか?」
「私、以前いた世界で食べたような美味しい料理を食べられて、本当に感動しました……!! もちろん、王家専属の料理人が作るものも美味しいのですがレパートリーが少なくて。
私、この世界に来るまでは食べるのが好きでも料理は全然出来なかったので、最近ではもう諦めてました。ですが……エリアナ様に、すっかり胃袋を掴まれてしまいました!」
「まぁ、マリア様まで!」
マリア様の熱弁に驚いていると、遅れて騎士団長のレオナルド様、魔法使いのニール様、神官のアンジェロ様もやってきた。
「まさか、エリアナ・エンフィールド公爵令嬢が料理長だったとは。驚きました」
と、言うのは魔法使いのニール様。そしてレオナルド様が視界に入らないようにしたいのか、カイ様が私の前に立つ。
「皆さん、温泉宿でお会いして以来ですね。エリアナ嬢はレシピ提供や現場の指揮を取っており、とても疲れております。今日の所はこの辺で、失礼いたしますね」
そう言って、カイ様は私の手を取りキッチンを出ていく。それに続いてアンディとケイティも退出した。
***
次の日、ケイティと二人でまた市場にやってきていた。
「それにしてもお嬢様、昨日は驚きましたね。まさか王太子殿下自ら、キッチンまで来られるとは」
「えぇ、あそこまで来るとは思わなかったわね」
そんな話をしている時だった。「キャーーーッ!?」と女性の大きな悲鳴が聞こえてきた。
「な、何!?」
「お、お嬢様……本当に魔獣が出てきてしまったようです……!!」
「え、もう!? 想定より早かったわね」
そう言ってからペンダントを握り締める。カイ様に繋がったので、状況を報告した。
「カイ様! 市場近くの海辺に、魔獣が現れました! タコのような形をした、巨大な魔獣です!!」
『エリアナ! 連絡をありがとう! アンディと風魔法ですぐに行く!!』
「宜しくお願いします!……ケイティ、カイ様もアンディもすぐ来てくれるそうよ!」
「安心しました……お嬢様どうされますか?」
ケイティがそう話す横では、多くの逃げ惑う住民が走っていく。私は住民達が向かう方向と、逆の方向に足を踏み出した。
「今回は水属性の魔獣で私は相性が悪いけれど……アンディのために手伝えることを探しましょう!」
「……そうおっしゃると思いました!」
そうして私たちは、魔獣がいる方向に向かって走り出した。
***
「カイ様! アンディ! こちらです!」
魔獣から一定の距離を取りながら、動きを観察していた私たちは、カイ様・アンディと無事合流することができた。
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