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第16話:カイル皇太子の想い
3.
しおりを挟む手紙のやり取りからも『過保護なお父様』が見て取れたのだろう。我が親ながら、少し恥ずかしくなってしまった。
でも、私だけでなく家族のことまで考えてくれたことが何よりも嬉しい。そして隣国の皇太子が求婚したというのは、さすがに我が家も断れないと思うが……あのお父様が、すんなり認めたのだろうか?
「求婚に関して、具体的にどのようなお返事があったのですか?」
「公爵からは、『無事にエリアナを帰してくれたら結婚を許す』と言われたよ。まぁ、命に替えても守ると言ったし、無事に送り届けるのは当たり前だと思うから」
「お父様ったら、皇太子様に対してそのようなことを……申し訳ございません。でも、カイ様もマリン帝国で沢山お見合い話もあるのではないでしょうか? 例えば聖女様とか……」
クリス様に婚約破棄された時のことを思い出して、少し気分が暗くなってしまう。
あの時は自由の身になれてむしろ晴々とした気分だったが、カイ様に同じことをされたら耐えられないと思った。それに、彼は乙女ゲームの第二シーズンで主要キャラなのだ。
「エリアナ、まずは私が皇太子だったことを隠していたのは申し訳なかった。カイ・クロフトは偽名で、本名はカイル・フェザーと言うんだ。でも、愛称はカイだから、これからも今まで通りカイと呼んでほしい」
「分かりました、カイ様で良いのですね。隠していた件は理由があってのことでしょうし……でも、今も知っているのは限られた人だけなのですよね?」
「あぁ、でももう隠す必要はないよ。学園にいた頃把握していたのは、学園長と国王くらいだね。学生でいられる間は国のことは気にせず、自由に過ごしたかったと言うのもあるし……
爵位が分からない者への対応を見て、相手の本質が見えると思っていたんだが」
「なるほど、そういうことだったのですね」
「それと、エリアナを婚約者として迎えることは、マリン帝国の皇帝である父にも伝えてあるんだ。
先に想いを伝えず外堀を埋めるようなやり方をして申し訳ないけれど……私にはエリアナ以外を妻として迎える気は無いから、もうお見合いは用意しなくて良いと言ってある」
「まぁ……!」
他国の公爵令嬢を迎えると言うのは、喜ばれることなのだろうか? カイ様ははっきりと意思表示をしたものの、実際のところ皇帝の心中はどうなのか心配になった。
でも、そんな頭の中もカイ様にはお見通しのようだ。
「エリアナ、心配しなくて大丈夫だよ。今までどの女性にも興味を示さなかった息子が、突然婚約者を見つけたと言い出したんだ。父は早くエリアナに会いたくて仕方が無いと思う。
……今回の魔獣退治が終わったら、私と一緒にマリン帝国に来てくれる? もちろん、婚約者として」
「……はい、ぜひ。これからもカイ様のお側にいたいです」
「そうか、ありがとう。……エリアナ、愛してる」
そう言って、カイ様は私の唇にそっと優しく口付けた。初めてのキスは甘やかで、でも胸の高鳴りも止まらなくて、それら全ての感情を受け止めることにした。
唇が離れたと思ったら、カイ様が真剣な表情で私を見つめる。
「絶対に、君を危ない目には合わせない」
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