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第18話:魔獣の王・サタンとの戦い
3.
しおりを挟む(あぁ、どうして私はいつも何もできないの……料理だけじゃなくて光魔法が使えたら良いのに。みんなを、守りたい……!!)
自分に出来ることは少ないと、これまで何度も思ってきた。でも、それで全てを投げ出してしまってはお終いだ。
もう全てが乙女ゲームのシナリオからかけ離れているけれど、ここで諦めてしまってはダメなんだ。
自分を奮い立たせて立ち上がる。サタンに対して得意な水魔法を当てようと、手をかざした時だった。
過去に魔力を放出した時と同じように、手からキラキラと光の粉が溢れ出していた。
「あぁ、君だったのか。本当の敵は」
「え……?」
どういう意味かと考えている瞬間、真っ黒な光線が私目掛けて飛んでくる。今まで見たことがないような、恐ろしい威力と鋭さを伴って。
(あぁ、もうダメかもしれない)
そう思ってぎゅっと目を閉じる。その直後に体がバンッ!! と飛んでいったーー。
ふと目を開けると、先ほど私が立っていた場所にカイ様が倒れていた。
「カイ様!!!!!!」
私がサタンの攻撃を受ける直前、体を突き飛ばしたのはカイ様だったのだ。
そして横たわる彼はサタンの攻撃の全てを受け止めて、身体中が血まみれで、至る所に真っ黒なあざのような痕が付いてた。
「カイ様!カイ様……!! なんで、こんなこと……」
意識を失っているカイ様から答えはない。このままでは死に絶えてしまいそうなくらい、息が細くなっていた。
「エリアナ様、カイ殿はかなり危険な状態です! 私の治癒魔法で延命しますが……闇魔法に効くのは光魔法だけなので、この延命もあと何分持つか……」
アンジェロ様が全ての力を出し尽くす勢いで、治癒魔法を放出していく。
額には汗をかいていて、とにかく予断を許さない状況であることは誰の目から見ても分かった。
「くそっ!!! 私という護衛騎士がいながら!」
カイ様の護衛騎士・アンディが、これまでに見たことのない威力の雷魔法を落としていく。
彼も、全ての魔力を投げ打つ勢いだ。それに対してサタンは「フンッ」と鼻を鳴らして真っ黒な光線で返していく。アンディの雷魔法がこちらに跳ね返ってきた。
「きゃあっ!!」
「アンディ殿! 気持ちは分かるが、落ち着いてくれ!!」
「私はカイ様のために死んでも良いと思ってるんです! !だからっ……全力で行きます!」
濃い瘴気が立ち込める中、それぞれが得意な攻撃魔法を次々とサタンに当てていく。
カイ様の顔がみるみる色を失っていくのに対し、私は目の前が真っ黒に塗り潰されるようだった。ぼろぼろと、いつの間にか涙が溢れていく。
(カイ様……カイ様……やっと想いが通じ合ったのに、今生の別れなんて嫌です……お願い、神様、私の命に替えても……どうかカイ様を助けて……)
私の全てを投げ打っても良い。そう思えたのは、前世と今世を通してもカイ様だけ。
カイ様がいない世界は、光を失うのと同じなのだから。
そう祈りを捧げた瞬間、ピカッと白い光が私の体の中心から溢れ出したーー。
***
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