婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

有明波音

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第18話:魔獣の王・サタンとの戦い

2.

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「君、彼女が何に負の感情を抱いていたか気になる?」

「……えぇ、気になるわ」

「まぁ、彼女はこの世界に突然転移させられて、聖女としての力もなくて、周りから必要とされていないのが辛かったみたいだね~。
 でも、君は周りから愛されているだろう? その姿を見て心の奥底では、妬みと嫉妬のオンパレード! アハハッ 君、気付いてなかった?」

「そんな……」


 まさかの指摘に言葉を失ってしまう。
 私はマリア様のことを分かったような気でいて、何も分かっていなかったんだ。彼女の抱える、計り知れないほど重い心の鉛を……。

 その時、カイ様の言葉が私の思考を遮った。


「エリアナ、重く受け止めるな。その悲しい感情も奴の餌になる」

「おー君のような賢い人間もいるんだね。珍しいな~! さて、せっかくお腹も満たされたし、君たちのお相手をしてあげた方が良いかな?」

「あぁ、望む所だ!!」

「威勢の良い王太子殿、君は本当に僕に勝てるのかなぁ?」


 サタンがそう言った途端、彼の指先から沢山の稲妻が私たちに目掛けて飛んできた。

 魔法使いのニール様が「土魔法!!」と叫び、ニール様とケイティが急いで魔法を放つ。土壁のような物が現れて、私たちを稲妻から守ってくれた。


「ハハ、魔法使い君、良いね~! もっと僕を楽しませてくれる?」


 次は一面の炎に囲まれてしまった。ニール様が「水魔法!」と叫んだのを合図に、ニール様とカイ様、私の三人で水魔法を放つ。

 ニール様は立て続けに魔力を放出し、少し息を切らしていた。


「アンジェロ様、ニール様に治癒魔法を!」

「あぁ、アンジェロ殿ありがとう、でも奴の動きが速すぎて回復が追いつかなさそうだ」


 そうこうしているうちに、土でできた巨人のような物体が何体もこちらに向かって歩いてきた。

 ニール様が「水魔法!」と叫んだのに対し、なぜかクリス様が強烈な火魔法で丸焦げにしてしまった。


「殿下! なぜ勝手なことを!?」

「その方が早いと思ったからだ! ニール達の体力が切れてしまうのは困る!!」


 言っていることは尤もかもしれないが、チームワークが大事な場面で勝手な行動をしてしまうクリス様に影響を受け、皆の足並みがズレていくような感覚に陥った。

 この時を境に、次々と技を繰り出すサタンに対して、集中力が切れた私達は技が的確に当たらない。ジリジリとした展開だった。


「あぁ~すっごく楽しいな~! みんなとっても強いんだね! でも、ここからが本番だよ♪」


 何事か、とサタンを見ていると、徐々に瘴気が濃くなっていることに気がついた。これは恐らく……


「そう、この国では僕しか使えない、闇魔法だよ~! 僕はこうやって徐々に追い詰めていくのが大好きなんだ」


 ニヤリと笑いながら黒い靄が辺りに立ち込めていく。既に体力を消耗している私達は、この瘴気でさらに体の動きが鈍くなっていった。

 アンジェロ様が頑張って治癒魔法をかけ続けるが、最初にケイティが座り込んでしまった。


「ケイティ!? しっかりして! 意識だけは保つのよ!!」

「お嬢様……」


 私の側で守るように立つカイ様も、苦しそうな顔をしている。私も意識が持っていかれそうだが、なんとか踏みとどまった。

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