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第三章 王立学校
痕
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外食から帰宅し、俺は荷物を片付けていた。
家具などは備え付けられているので服くらいしかないが、だとしてもそれなりの量はある。
「これはここ……そんでこれはこっちでいいか」
個室はそれぞれ八畳はあるほど広くて、十分すぎるくらいだ。クローゼットにベッドも完備されていて、まさに理想の部屋だ。
「イスルギ、風呂空いたぞ」
「おー、そんじゃ入るわ」
先に三人に入ってもらっていたので俺が最後だ。そういえば浴室はまだ見ていなかったなと思い、少しワクワクしてくる。
キリのいいところで切り上げ、風呂場へと向かった。
「普通のホテルの部屋風呂よりかは若干広いか?」
綺麗なことに変わりはないが、どうしても屋敷のそれと比べてしまう。俺の体は満たされないかもしれない。
体を洗い、肝心の湯船に浸かる。決して狭いわけではないが、何とも言えない気持ちが込み上げてくる。そんな気持ちを慰めるようにお湯を手で肩にかけるが、いつもの温泉が脳裏によぎり、余計に虚しさが増幅した。
「はぁ……部屋はいいんだけどなぁ」
俺の日々の楽しみが実質一つ消えたことになる。いくらホテルっぽいとはいえ、大浴場的なのはないらしい。
「学校は明後日だし、明日は付近の温泉でも探すかな」
そんな考えを巡らせていると、いきなり風呂のドアが開いた。
「え———」
「なんだか懐かしいですねぇ」
タオルで素肌を隠したシャロがそこにいた。
「なんで入って来てるんだよ!」
「せっかくなら一緒に、と思いまして。あ、安心してください。体は既に清潔にしているので」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
最近はこんなことがなかったから油断していた。その白い肌に結んだ髪、魅惑的に揺れている尻尾に目が釘付けになる。
「では、失礼しますねぇ」
狭い湯船にシャロが入ってきた。二人程度ならギリギリ入るが、その分距離が
だいぶ近い。同棲してる感がすごい感じられて、ドキドキがとまらない。
「ティアは止めなかったのかよ……」
「疲れが溜まっていたようで、もう寝てますよ。邪魔する人はいません」
「雷鳴鬼は……って、あいつは面白がるタイプか……」
シャロと風呂に入るのは別に嫌ではない。嫌ではないのだが、なんかこう、俺が停止の役割を担わないと歯止めが利かなくなる気がするのだ。
こういうのはメリハリが大事だと、俺は思う。
「ご主人様が他の女にうつつを抜かさないように、しっかり痕をつけなきゃ」
「抜かさねぇよ。シャロ達がナンバーワンでオンリーワンだ」
「……まぁ、そちらはあまり心配していませんが、どれくらい寄ってくるのか分かりませんので」
「うーん、そんなことないと思うけどなぁ……」
高校の時も別にモテていたわけではないし、一部変な奴に好かれてはいたが、あれは例外みたいなモンだから気にしなくてもいいだろう。普通にしていれば別に何もないとは思うのだが、
「いいえ。ありありですよ」
シャロは真っ向から否定をしてきた。
「ご主人様は学内におけるご自身の立場をわかっていますか?」
「……編入生?」
「そうです。ですから、良くも悪くも注目の的になります」
「まぁ、うん」
王立学校の試験はそもそもが難しいもので、その更に上のランクの編入試験を突破したとなればそれなりの評価はされるだろう。
フリードの因子と、少し長く生きて得た知識のおかげで俺は受かったようなものだが、それを知る者はそこにはいない。客観的に見れば単に凄いやつだと思われるだろう。
「難関な試験を突破し、その実力は折り紙付きです。それに、性格もルックスも良いときたら文句なしです」
「後半はあんま自分から同意できないけど、まぁそうだな」
「この国は実力主義の傾向が強いですから、その魅力に釣られた女性が嫌でも集まってきます」
「そんなもんかぁ?」
「絶対です。断言します」
シャロは真剣な顔つきでそう言う。
モテること自体に悪い気はしないが、目的のためにも目立ちすぎるのはよくないな。
「他の方がご主人様に好意を寄せること自体は別に構いません。ですが、その力というか、本質を見ていない女にご主人様が絡まれることが嫌なんです」
「シャロ……」
「……少し、そちらに行ってもいいですか?」
「あ、ああ」
今まで正面に座っていたシャロが、俺の足と足の間におさまる。こちらに背を向けているので顔は見えないが、透き通るようなうなじが魅惑的な雰囲気を纏っている。
「耳、触っていいか」
「はい、どうぞ」
この耳も、見ているだけで愛でたくなってくる。
「……んっ……ぅん……ぁ……」
甘い声が漏れ、水の滴る音だけが聞こえる浴室に響く。それでも、この胸から溢れ出る気持ちをどうにか表現したくて、俺はシャロの耳を、そして尻尾を撫で続けた。
風呂を出てからの記憶は曖昧だ。
家具などは備え付けられているので服くらいしかないが、だとしてもそれなりの量はある。
「これはここ……そんでこれはこっちでいいか」
個室はそれぞれ八畳はあるほど広くて、十分すぎるくらいだ。クローゼットにベッドも完備されていて、まさに理想の部屋だ。
「イスルギ、風呂空いたぞ」
「おー、そんじゃ入るわ」
先に三人に入ってもらっていたので俺が最後だ。そういえば浴室はまだ見ていなかったなと思い、少しワクワクしてくる。
キリのいいところで切り上げ、風呂場へと向かった。
「普通のホテルの部屋風呂よりかは若干広いか?」
綺麗なことに変わりはないが、どうしても屋敷のそれと比べてしまう。俺の体は満たされないかもしれない。
体を洗い、肝心の湯船に浸かる。決して狭いわけではないが、何とも言えない気持ちが込み上げてくる。そんな気持ちを慰めるようにお湯を手で肩にかけるが、いつもの温泉が脳裏によぎり、余計に虚しさが増幅した。
「はぁ……部屋はいいんだけどなぁ」
俺の日々の楽しみが実質一つ消えたことになる。いくらホテルっぽいとはいえ、大浴場的なのはないらしい。
「学校は明後日だし、明日は付近の温泉でも探すかな」
そんな考えを巡らせていると、いきなり風呂のドアが開いた。
「え———」
「なんだか懐かしいですねぇ」
タオルで素肌を隠したシャロがそこにいた。
「なんで入って来てるんだよ!」
「せっかくなら一緒に、と思いまして。あ、安心してください。体は既に清潔にしているので」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
最近はこんなことがなかったから油断していた。その白い肌に結んだ髪、魅惑的に揺れている尻尾に目が釘付けになる。
「では、失礼しますねぇ」
狭い湯船にシャロが入ってきた。二人程度ならギリギリ入るが、その分距離が
だいぶ近い。同棲してる感がすごい感じられて、ドキドキがとまらない。
「ティアは止めなかったのかよ……」
「疲れが溜まっていたようで、もう寝てますよ。邪魔する人はいません」
「雷鳴鬼は……って、あいつは面白がるタイプか……」
シャロと風呂に入るのは別に嫌ではない。嫌ではないのだが、なんかこう、俺が停止の役割を担わないと歯止めが利かなくなる気がするのだ。
こういうのはメリハリが大事だと、俺は思う。
「ご主人様が他の女にうつつを抜かさないように、しっかり痕をつけなきゃ」
「抜かさねぇよ。シャロ達がナンバーワンでオンリーワンだ」
「……まぁ、そちらはあまり心配していませんが、どれくらい寄ってくるのか分かりませんので」
「うーん、そんなことないと思うけどなぁ……」
高校の時も別にモテていたわけではないし、一部変な奴に好かれてはいたが、あれは例外みたいなモンだから気にしなくてもいいだろう。普通にしていれば別に何もないとは思うのだが、
「いいえ。ありありですよ」
シャロは真っ向から否定をしてきた。
「ご主人様は学内におけるご自身の立場をわかっていますか?」
「……編入生?」
「そうです。ですから、良くも悪くも注目の的になります」
「まぁ、うん」
王立学校の試験はそもそもが難しいもので、その更に上のランクの編入試験を突破したとなればそれなりの評価はされるだろう。
フリードの因子と、少し長く生きて得た知識のおかげで俺は受かったようなものだが、それを知る者はそこにはいない。客観的に見れば単に凄いやつだと思われるだろう。
「難関な試験を突破し、その実力は折り紙付きです。それに、性格もルックスも良いときたら文句なしです」
「後半はあんま自分から同意できないけど、まぁそうだな」
「この国は実力主義の傾向が強いですから、その魅力に釣られた女性が嫌でも集まってきます」
「そんなもんかぁ?」
「絶対です。断言します」
シャロは真剣な顔つきでそう言う。
モテること自体に悪い気はしないが、目的のためにも目立ちすぎるのはよくないな。
「他の方がご主人様に好意を寄せること自体は別に構いません。ですが、その力というか、本質を見ていない女にご主人様が絡まれることが嫌なんです」
「シャロ……」
「……少し、そちらに行ってもいいですか?」
「あ、ああ」
今まで正面に座っていたシャロが、俺の足と足の間におさまる。こちらに背を向けているので顔は見えないが、透き通るようなうなじが魅惑的な雰囲気を纏っている。
「耳、触っていいか」
「はい、どうぞ」
この耳も、見ているだけで愛でたくなってくる。
「……んっ……ぅん……ぁ……」
甘い声が漏れ、水の滴る音だけが聞こえる浴室に響く。それでも、この胸から溢れ出る気持ちをどうにか表現したくて、俺はシャロの耳を、そして尻尾を撫で続けた。
風呂を出てからの記憶は曖昧だ。
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