異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第三章 王立学校

既知の風貌

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「ふわぁ、おはよう」

「おはよう。まだ食材がないから朝ごはんはパンだけな」

「おー」

 寝ぼけ眼を擦り、洗面台で顔を洗う。腰と肩に痛みを感じつつ、段々と意識がはっきりしてきた。

 用意されたパンと、コーヒーを手に今日の予定を脳内で組み立てる。

「ティアは今日どうするんだ?」

「アタシはひとまずシャロと買い出しに行ってくるかな。イスルギは?」

「んー、そしたら俺も付いていこうかな」

 どうせやることもないし、ここらの土地勘を掴むためにも外に出るのは良いだろう。ついでに風呂屋を探してもいいかもしれない。

「そっか。じゃあ、食べ終わってちょっとしたら行くか」

「おう」

 ということで、結局全員で買い出しへと向かった。

 街並みはやはり中世風という印象が強いが、一部近代チックな物もある。例えば交通だ。街を馬ではなくバスや車が走っている。魔導式四輪車という名前で、前に来た時に初めて見た。
 名前から察するに、動力は魔力であることは間違いなさそうだ。運転してみたい気持ちもあるが、免許とかあるのだろうか。

 行き交う人混みに揉まれながら、食品店に来た。スーパーというよりかは八百屋に近いだろう。主婦と思われる人や、老人の夫婦なんかが店内に何組かいる。

「ん、なんだあれ?」

 野菜と同じ区画に置かれている、キャベツのような何かが目に留まった。そのあまりにも変な見た目に理解が追い付かない。何せ、色が真っ青なのだ。青空の色といえば聞こえはいいが、形と色があまりにミスマッチだ。

「色味キモすぎだろ。食欲湧かねぇ……」

「あー、あれか? あれもキャベツの一種で見た目はキモイけど、味は良いぞ」

「うーん……だとしてもなぁ」

 興味は無くはない、が食べたいとは思えない。ティアが言うんだし、きっとおいしいだろうが、だとしてもだ。

「じゃあせっかくだし買ってくか」

「正気か!?」

 ティアは躊躇う様子を見せず、買い物カゴにそれを入れた。普通の食材に紛れて、その異様なキャベツが存在感を放っている。

「お肉持ってきましたよ。ここは結構種類がありますね」

 店に入ってから、別のコーナーを見に行っていたシャロと雷鳴鬼が肉をカゴいっぱいに詰めて持ってきた。

「そ、そんなに買うのか?」

 買い物なんかしない俺からすると過剰に見えるが、どうやらこれが普通らしい。つくづく、俺がいかにラクしていたかを感じさせられる。

 会計を終えて、店を出た。

「アタシはこれでお昼ご飯作りに帰るけど、三人はどうする?」

「一人じゃ重いだろ。一緒に持って帰るよ」

 流石にこの量を一人に持たせるのは気が引ける。それに自分が食べる物でもあるから、頼りっきりというのもいただけない。

「わたくしは足りない日用品を買ってきますので」

「分かった。雷鳴鬼、ついて行ってやってくれ」

「えぇ、めんどくさいなぁ」

「働かざる者食うべからずってやつだ。そのくらいは働け」

 この街の治安は特別悪いようには見えないが、心配なものは心配なのだ。その点、雷鳴鬼がいれば安心だ。ああみえて実力は確かだしな。

 何かぶーぶー文句を垂れ流していたが、全て無視して俺とティアは一足先に寮へと戻った。

 寮付近に来ると、あちらこちらに、おそらく学生かと思われる人たちが見えた。買い出しに出かける時は誰もいなかったのだが、いつの間にか外に出てきていたようだ。
 きっとお昼を外で、ということだろう。すれ違い様に「何食べよっか」とか言ってたし。

 彼らは髪色が青だったり赤だったりと、カラフルであることを除けば、ごく一般的な学生に見える。あとは多少ガタイがいいくらいだろうか。

 寮の入り口で何組かの生徒とすれ違いながらエレベーターに乗り込んだ。

 地球とさほど変わりないエレベーターに関心しつつ、

「人間の技術ってなんか進みすぎじゃね?」

「そう? 別に普通だろ。まぁ、吸血鬼の方と比べるとちょっとは変わるけど……」

「そうそれだよ。吸血鬼が可哀想になってくるわ」

「国交がちゃんとできてたら技術とかが渡ったかもしれないけど、まぁ難しいだろーな」

 ティアの言う通り、不干渉条約がある内は吸血鬼の技術的発展は厳しいだろう。まず、そもそもの数が違うのだ。吸血鬼は聞いた話によれば、一万いるかいないからしい。反対に、人間は数千万、あるいはそれ以上だと言っていた。その差は歴然だ。

 吸血鬼の知能を過小評価しているわけではないが、単純に人手という点と頭脳の数という点から発展の速度は火を見るよりも明らかだ。

「仲良くできねぇのかな……っと、着いたな」

 扉が開き、12階へと足を踏み出す。どうやらエレベーターを待っていた人がいたらしく、入れ違いで入っていった。

 自室は近くの角を曲がったところだ。毎日使うことから考えて、比較的いい部屋をもらったと言える。

 我が部屋にもうそこだ、というところで、奥の部屋から大柄な男が出てきた。他の奴らのように、昼食でも食べに行くのだろうか。こちら側へと歩いてくる。

 廊下は決して狭くはないが、その大男の存在感が空間を歪めているように感じられた。そう、この特有の威圧感は覚えがある。まるで———

「―――は?」

 近づくにつれ、段々とはっきりしてくる顔を見て、俺は自分の目を疑わざるをえなかった。

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