100 / 142
第三章 王立学校
武闘祭開幕
しおりを挟む
「いよいよ明日ですねぇ、シャロ達も見に行きますよぉ」
食器を机に並べながら、合間で座っている俺の真後ろに立ち、上から覗き込んでくる。
ふわりと香る甘いバニラのような匂いが鼻をくすぐり、俺は垂れ下がってくる銀色の髪を優しく撫でる。
「おう。だったらなおのこと頑張んねぇとな」
「そんで、イスルギは一日目だったよな」
ティアがエプロンを外しながらリビングへと戻ってくる。
「そうなんだよ。まじでくじ運ないんだよなぁ」
せめて試合がどんな感じで動いていくのかを実際に見てからが良かったが、四分の一を引き当ててしまうとは。
「ま、どこに出てもイスルギなら決勝は行けるだろ!」
ティアは楽観的に言うが、そう上手くいくもんか?
「う、期待が重い……仮病で休みてぇ……」
こんな学校行事、久しぶりすぎて胃がキリキリする。できることなら休んでしまいたい。
「駄目ですよ。クラスの方に迷惑が掛かってしまいますから」
俺を叱責するように頬をつまみ、ぐにぐにとこねくり回してくる。明日の心配に脳が支配されている俺は、人形のように弄ばれる。
「そうだぜ、それに久しぶりにカッコいい姿、見たいからな」
この二人、段々と俺の扱いが上手くなってる気がする。
不満とかそういうことではなく、単に分かってもらえてるという事実が俺にとってはなんだか嬉しい。
「ま、ベストは尽くすよ」
二人のためにも、カッコ悪い姿は見せられないな。
▷▶▷
翌日
王直々の挨拶から始まり、いよいよ武闘祭が始まる。周囲の空気は浮ついていて、進路がどうとか、あの人に告白を、なんて会話が聞こえてきた。
武闘祭は今日から五日間だが、俺が出るのは最高でも二日間だけだ。そういう意味では楽な部類に入るだろう。
屋台みたいなのもあるから、暇なときにシャロ達と来てもいいかもしれないな。スポーツ観戦デートとか最高じゃんか。
「おはよう、石動健一! 会場はあそこだぞ!」
キルバスが俺の背中をどついて、奥を指さす。かなり強めに叩いてきたから軽く復讐をし、時計に目をやる。
「もう俺たちの出番か」
すれ違う一般の観客を横目に入場場所へと向かった。
午前は俺達Aブロックの試合だ。会場の付近には大勢の人がごった返している。顔が厳つくなっている人もいれば、余裕の表情で鼻歌を歌っているやつもいる。今からここにいる人達と戦うのか。
会場入り口にある放映用の魔石にはステージの様子が映されていた。
「すげぇ、あれがステージか」
学校の校庭部分が一晩にして、木々が生い茂る野生環境へと変わってしまった。ジャングルとまではいかないが、森林といって差し支えない大自然の環境だ。
「教師陣の努力の賜物だね」
「流石に外部に頼んでるだろ」
何人この学校に教師がいるかは知らないが、運営の者が疲労で倒れてはいけない。きっと国とかにお願いしているのだろう。
「ふぅむ、確かに。ならば大変なのは校長か」
「この人数を一気にってのもすごいな……」」
どの試合も、例の如く校長の木人形が配られる。安全が保障されるのはありがたいが、この人数を守るのに校長は大丈夫なのだろうか。負担がすごそうだ。
木人形の登録を済ませ、番号の書かれた紙と地図を渡される。この地点に行けばいいんだな。
この時点ではもう他の人との会話は禁止されている。だが、落ち合う場所は決めたから平気なはずだ。
入場口から特設ステージへと入っていき、人工的に作り出された自然のリアルさを体感しながら持ち場へと歩く。
俺の初期位置は南西の真ん中あたり。合流場所は東端だから少し遠いな。
指定の場所に着くと、地面には35と書かれた円盤が埋め込まれていた。
事前の説明のとおりに、番号に自分の紙を乗せると、光の粒子になって消える。これで準備ができたことを知らせることが出来るらしい。
しばらく待っていると、アナウンスが流れる。
「ただいまより、Aブロックの試合を行う。撃破されたものは直ちに退出口へと戻るように。では、はじめっ!」
スタートの合図とともに歓声が飛び交う。試合映像は至るところにある魔石を通して放映される。恥をかくような真似はできないな。
「なんか思ったより、ぬるっと始まるんだな」
とりあえず地図を見て、東へと進んでいく。すると早速、爆発音が聞こえてくる。もう戦闘が始まったのか。
でも、それはあまり賢くない。撃破ポイントみたいなのがあれば話は別だが、これは十人以内に生き残ればいい。つまり、逃げるが勝ちだ。
時間経過で魔導人形が追加されるので、いつまでも隠れられるわけではないが、しばらくは身を潜めるのが有効だ。他の生徒もそうするだろう。
とにかく、最初の皆が元気な内に戦うのは愚策。早く合流して隠れつつ、積極的に漁夫の利を狙うのが良いだろう。
東にひたすら進んで行く。木がひらけているところは見通しが良すぎるので、草木を踏みしめながらだ。
「うぉっ!」
木々を抜けると、背が低い男と目が合う。向こうも驚きの表情を浮かべているが、咄嗟にこちらへ杖を向けてきた。どうやらやる気のようだ。
「ファイヤー―——ぐはっ!」
「先手必勝ってな」
相手を視認してからすぐさま放った『雷槍』が敵を穿つ。今のは一年生っぽいな。会話もなしに攻撃してしまったが、それはお互い様ということで。
結果オーライだとはいえ、これからはもう少し慎重に動こう。
音を聞かれたかもしれない。急いでその場から立ち去った。
▷▶▷
「よし、とりあえずは着いたが……」
東へと辿り着いたが、まだ二人の影は見えない。俺はかなり離れたところから来たから、もう居るものだと思っていたのだが。
ともあれ、ここは木が少なくてちょっと目立つな。そこの草陰に隠れて待っていればいいか。
茂みに隠れようかと思った矢先、
「ね、先輩」
「なっ!?」
俺のすぐ真後ろで声を掛けられる。突然の人の声に心臓が縮こまって、背筋が凍り付きそうになった。寿命が減った気がする。
「あはっ、今私が攻撃してたら、先輩死んでたよ?」
恩を売るような言い方で少女が笑う。先輩……ということは一年か。
水色の髪の少女はにやっとして、前屈みであざとい視線を送ってくる。緩い胸元を強調しているあたり、本人は己の武器を十分に理解しているだろう。
でも、この一瞬で俺の警戒心はマックスだ。ひとまず目的を聞き出さなければ。
「き、君は誰だ」
「私はクロバ・ユーリシア。一年C組だよ」
一年……とはいえ油断ならない。第一、俺が全く気がつかなかった。ここに来るまでも音にはかなり気を張っていたし、周囲への警戒も一層強めていた。
「で、どういうつもりだ。なぜ攻撃しなかった」
「そのまえに、そっちの名前、教えてよ」
不満そうに腕を組んで俺を指さす。
まぁたしかに、名乗られたのにこちらの名前を言わないのは筋違いだ。
「悪い。俺は石動健一だ」
「イスルギ先輩……ね。よろしくでーす」
「あ、ああ。よろしく……ってそうじゃなくて!」
「なんで攻撃しなかったか、だっけ? んー、単刀直入に言うと、私と組まない?」
「組む……だと?」
「うん。実はさっきの戦闘みてて、この人ならいい壁……良い味方になってくれるって思って」
「壁……てか、そんな前から居たのかよ……」
「だから組んで欲しいなーって。だめ?」
あざとい感じで言うが、そんなものに俺は惑わされない。こちとら、幾度となくシャロの誘惑を振り切ってきたんだ。頭を整理して、俺は冷静に思考する。
いや、あまりに怪しすぎる。俺と組んでもクラスが違う以上、いつかは争うことになる。
もし、一時凌ぎで声をかけてきたとしても、それはつまり周囲に、あるいはこのブロック内に仲間がいないことと同じだ。クラスメイトと協力していないから、生き残るために仲間を作ろうとしていると考えられる。それなら俺は今この瞬間、攻撃してしまえばいい。
反対に、俺を仲間のとこに誘い込んで、なんて可能性もある。いくらなんでも多対一は不利すぎる。袋叩きにあうくらいならいっそこの場で……
いや、関わらないが吉だな、うん。
「俺にメリットがない。それにリスクがデカすぎる。ひとまず見逃すから、会わなかったことにしてどこかに行け」
無駄な戦いを避けられつつ、穏便に済ませられる。これが最善だ。
しかし、
「いいのかなぁ。これ、見える?」
彼女は小指を立て、見せつけてくる。そこには水色の糸?らしきものが結ばれていて、垂れ下がっている。それもどこかにつながっているようで―――
ゆっくりと糸の行く末を見ていると、段々と俺の方に近づいてくる。そして、
「なっ!?」
その終点はあろうことか、俺の小指だった。擦っても、爪で引っ搔いてもなんともない。結ばれているという感覚もなくて、それがとても気味が悪い。
「なんだこれ!?」
「あははっ、とれないよ、それ」
「俺に何をした!?」
「これはねぇ……」
彼女は自分の小指をおもむろに口の中へといれ、なまめかしく吸い付く。すると、俺の小指に生温かい感触が走る。舌が指を這い、唾液に包まれる感覚がある、のだが自分の指には実際に何の変化もない。
「今、私と先輩は繋がってるの。感覚もそう、それに痛みも……ね」
「それって……」
「想像のとおり、私がやられたら先輩も道連れ~。パチパチパチ」
ふさざけた言い草で手を叩いているが、俺からすれば事態はかなり深刻だ。
「なんてことを……」
「だからね、協力してね」
してやったと言わんばかりの笑顔を見せびらかしてきて、俺は選択権が潰えたことを悟る。
「だいじょーぶ。私は決勝に行ければいいから、この試合の間は仲良くしよ、ね?」
「くそ……他に選択肢はない……か」
こうして小悪魔のような後輩が仲間?になった。不本意ながら。
食器を机に並べながら、合間で座っている俺の真後ろに立ち、上から覗き込んでくる。
ふわりと香る甘いバニラのような匂いが鼻をくすぐり、俺は垂れ下がってくる銀色の髪を優しく撫でる。
「おう。だったらなおのこと頑張んねぇとな」
「そんで、イスルギは一日目だったよな」
ティアがエプロンを外しながらリビングへと戻ってくる。
「そうなんだよ。まじでくじ運ないんだよなぁ」
せめて試合がどんな感じで動いていくのかを実際に見てからが良かったが、四分の一を引き当ててしまうとは。
「ま、どこに出てもイスルギなら決勝は行けるだろ!」
ティアは楽観的に言うが、そう上手くいくもんか?
「う、期待が重い……仮病で休みてぇ……」
こんな学校行事、久しぶりすぎて胃がキリキリする。できることなら休んでしまいたい。
「駄目ですよ。クラスの方に迷惑が掛かってしまいますから」
俺を叱責するように頬をつまみ、ぐにぐにとこねくり回してくる。明日の心配に脳が支配されている俺は、人形のように弄ばれる。
「そうだぜ、それに久しぶりにカッコいい姿、見たいからな」
この二人、段々と俺の扱いが上手くなってる気がする。
不満とかそういうことではなく、単に分かってもらえてるという事実が俺にとってはなんだか嬉しい。
「ま、ベストは尽くすよ」
二人のためにも、カッコ悪い姿は見せられないな。
▷▶▷
翌日
王直々の挨拶から始まり、いよいよ武闘祭が始まる。周囲の空気は浮ついていて、進路がどうとか、あの人に告白を、なんて会話が聞こえてきた。
武闘祭は今日から五日間だが、俺が出るのは最高でも二日間だけだ。そういう意味では楽な部類に入るだろう。
屋台みたいなのもあるから、暇なときにシャロ達と来てもいいかもしれないな。スポーツ観戦デートとか最高じゃんか。
「おはよう、石動健一! 会場はあそこだぞ!」
キルバスが俺の背中をどついて、奥を指さす。かなり強めに叩いてきたから軽く復讐をし、時計に目をやる。
「もう俺たちの出番か」
すれ違う一般の観客を横目に入場場所へと向かった。
午前は俺達Aブロックの試合だ。会場の付近には大勢の人がごった返している。顔が厳つくなっている人もいれば、余裕の表情で鼻歌を歌っているやつもいる。今からここにいる人達と戦うのか。
会場入り口にある放映用の魔石にはステージの様子が映されていた。
「すげぇ、あれがステージか」
学校の校庭部分が一晩にして、木々が生い茂る野生環境へと変わってしまった。ジャングルとまではいかないが、森林といって差し支えない大自然の環境だ。
「教師陣の努力の賜物だね」
「流石に外部に頼んでるだろ」
何人この学校に教師がいるかは知らないが、運営の者が疲労で倒れてはいけない。きっと国とかにお願いしているのだろう。
「ふぅむ、確かに。ならば大変なのは校長か」
「この人数を一気にってのもすごいな……」」
どの試合も、例の如く校長の木人形が配られる。安全が保障されるのはありがたいが、この人数を守るのに校長は大丈夫なのだろうか。負担がすごそうだ。
木人形の登録を済ませ、番号の書かれた紙と地図を渡される。この地点に行けばいいんだな。
この時点ではもう他の人との会話は禁止されている。だが、落ち合う場所は決めたから平気なはずだ。
入場口から特設ステージへと入っていき、人工的に作り出された自然のリアルさを体感しながら持ち場へと歩く。
俺の初期位置は南西の真ん中あたり。合流場所は東端だから少し遠いな。
指定の場所に着くと、地面には35と書かれた円盤が埋め込まれていた。
事前の説明のとおりに、番号に自分の紙を乗せると、光の粒子になって消える。これで準備ができたことを知らせることが出来るらしい。
しばらく待っていると、アナウンスが流れる。
「ただいまより、Aブロックの試合を行う。撃破されたものは直ちに退出口へと戻るように。では、はじめっ!」
スタートの合図とともに歓声が飛び交う。試合映像は至るところにある魔石を通して放映される。恥をかくような真似はできないな。
「なんか思ったより、ぬるっと始まるんだな」
とりあえず地図を見て、東へと進んでいく。すると早速、爆発音が聞こえてくる。もう戦闘が始まったのか。
でも、それはあまり賢くない。撃破ポイントみたいなのがあれば話は別だが、これは十人以内に生き残ればいい。つまり、逃げるが勝ちだ。
時間経過で魔導人形が追加されるので、いつまでも隠れられるわけではないが、しばらくは身を潜めるのが有効だ。他の生徒もそうするだろう。
とにかく、最初の皆が元気な内に戦うのは愚策。早く合流して隠れつつ、積極的に漁夫の利を狙うのが良いだろう。
東にひたすら進んで行く。木がひらけているところは見通しが良すぎるので、草木を踏みしめながらだ。
「うぉっ!」
木々を抜けると、背が低い男と目が合う。向こうも驚きの表情を浮かべているが、咄嗟にこちらへ杖を向けてきた。どうやらやる気のようだ。
「ファイヤー―——ぐはっ!」
「先手必勝ってな」
相手を視認してからすぐさま放った『雷槍』が敵を穿つ。今のは一年生っぽいな。会話もなしに攻撃してしまったが、それはお互い様ということで。
結果オーライだとはいえ、これからはもう少し慎重に動こう。
音を聞かれたかもしれない。急いでその場から立ち去った。
▷▶▷
「よし、とりあえずは着いたが……」
東へと辿り着いたが、まだ二人の影は見えない。俺はかなり離れたところから来たから、もう居るものだと思っていたのだが。
ともあれ、ここは木が少なくてちょっと目立つな。そこの草陰に隠れて待っていればいいか。
茂みに隠れようかと思った矢先、
「ね、先輩」
「なっ!?」
俺のすぐ真後ろで声を掛けられる。突然の人の声に心臓が縮こまって、背筋が凍り付きそうになった。寿命が減った気がする。
「あはっ、今私が攻撃してたら、先輩死んでたよ?」
恩を売るような言い方で少女が笑う。先輩……ということは一年か。
水色の髪の少女はにやっとして、前屈みであざとい視線を送ってくる。緩い胸元を強調しているあたり、本人は己の武器を十分に理解しているだろう。
でも、この一瞬で俺の警戒心はマックスだ。ひとまず目的を聞き出さなければ。
「き、君は誰だ」
「私はクロバ・ユーリシア。一年C組だよ」
一年……とはいえ油断ならない。第一、俺が全く気がつかなかった。ここに来るまでも音にはかなり気を張っていたし、周囲への警戒も一層強めていた。
「で、どういうつもりだ。なぜ攻撃しなかった」
「そのまえに、そっちの名前、教えてよ」
不満そうに腕を組んで俺を指さす。
まぁたしかに、名乗られたのにこちらの名前を言わないのは筋違いだ。
「悪い。俺は石動健一だ」
「イスルギ先輩……ね。よろしくでーす」
「あ、ああ。よろしく……ってそうじゃなくて!」
「なんで攻撃しなかったか、だっけ? んー、単刀直入に言うと、私と組まない?」
「組む……だと?」
「うん。実はさっきの戦闘みてて、この人ならいい壁……良い味方になってくれるって思って」
「壁……てか、そんな前から居たのかよ……」
「だから組んで欲しいなーって。だめ?」
あざとい感じで言うが、そんなものに俺は惑わされない。こちとら、幾度となくシャロの誘惑を振り切ってきたんだ。頭を整理して、俺は冷静に思考する。
いや、あまりに怪しすぎる。俺と組んでもクラスが違う以上、いつかは争うことになる。
もし、一時凌ぎで声をかけてきたとしても、それはつまり周囲に、あるいはこのブロック内に仲間がいないことと同じだ。クラスメイトと協力していないから、生き残るために仲間を作ろうとしていると考えられる。それなら俺は今この瞬間、攻撃してしまえばいい。
反対に、俺を仲間のとこに誘い込んで、なんて可能性もある。いくらなんでも多対一は不利すぎる。袋叩きにあうくらいならいっそこの場で……
いや、関わらないが吉だな、うん。
「俺にメリットがない。それにリスクがデカすぎる。ひとまず見逃すから、会わなかったことにしてどこかに行け」
無駄な戦いを避けられつつ、穏便に済ませられる。これが最善だ。
しかし、
「いいのかなぁ。これ、見える?」
彼女は小指を立て、見せつけてくる。そこには水色の糸?らしきものが結ばれていて、垂れ下がっている。それもどこかにつながっているようで―――
ゆっくりと糸の行く末を見ていると、段々と俺の方に近づいてくる。そして、
「なっ!?」
その終点はあろうことか、俺の小指だった。擦っても、爪で引っ搔いてもなんともない。結ばれているという感覚もなくて、それがとても気味が悪い。
「なんだこれ!?」
「あははっ、とれないよ、それ」
「俺に何をした!?」
「これはねぇ……」
彼女は自分の小指をおもむろに口の中へといれ、なまめかしく吸い付く。すると、俺の小指に生温かい感触が走る。舌が指を這い、唾液に包まれる感覚がある、のだが自分の指には実際に何の変化もない。
「今、私と先輩は繋がってるの。感覚もそう、それに痛みも……ね」
「それって……」
「想像のとおり、私がやられたら先輩も道連れ~。パチパチパチ」
ふさざけた言い草で手を叩いているが、俺からすれば事態はかなり深刻だ。
「なんてことを……」
「だからね、協力してね」
してやったと言わんばかりの笑顔を見せびらかしてきて、俺は選択権が潰えたことを悟る。
「だいじょーぶ。私は決勝に行ければいいから、この試合の間は仲良くしよ、ね?」
「くそ……他に選択肢はない……か」
こうして小悪魔のような後輩が仲間?になった。不本意ながら。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界のんびり放浪記
立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。
冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。
よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。
小説家になろうにも投稿しています。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム)
目を覚ますとそこは石畳の町だった
異世界の中世ヨーロッパの街並み
僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた
案の定この世界はステータスのある世界
村スキルというもの以外は平凡なステータス
終わったと思ったら村スキルがスタートする
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜
黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。
ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。
彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。
賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。
地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す!
森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。
美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。
さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる!
剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。
窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる