異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

文字の大きさ
111 / 142
第三章 王立学校

妄想と邂逅

しおりを挟む
 なかば強引にレインと行動することになり、敵を探して歩いて行く。レインは相も変わらず俺の腕に、自身の腕をぴったり密着させている。

『そのまま雷流しちゃえば?』

『それなぁ……一応考えたけど、腕が治ってない以上味方がいると心強いからなぁ』

 やった後、どうなるのかが分からないっていう恐怖もある。ほら、この子何考えてるか分からないし。

『君……強力な味方を忘れてないかい?』

『強力な味方? そんな奴いたか?』

 味方になりえたかもしれないゲルニカは脱落したし、友人はそもそも決勝にあがっていない。クロバも落ちてしまったしな。

『ふっふっふ……それはね、このボクさ!!』

『……さて、これからどうしたものか』

『ちょいちょい! 無視しないでよ!』

『試合前に言ったろ? お前にはギリギリまで俺の中にいてもらうって』

『そうだけどさぁ、状況が状況じゃん。もう残り20分もないんだし、呼び出してもいいんじゃない?』

『駄目だ。三年ともし出会った時に二人で本気が出せるようにしたい。それに……』

『それに?』

『その、なんだ……お前って結構目立つだろ。見た目の良い人型の使い魔って』

 注目の的になるのは初めこそ悪くなかったが、段々と面倒くさくなったのだ。なんか変な妄想されたりなんだり、そんなことを全校規模でやられたくはない。

 俺の裏の理由を聞くないなや、雷鳴鬼は腹立つほどニンマリとした邪悪な笑顔を浮かべる。

『あれれぇ~? あれあれ~? ひょっとしてボクのことー、超絶可愛い美少女って言ったー?』

『う、うぜぇ……』

『ねぇねぇ~言ったよね~』

『うるせぇ! とにかく、その時が来るまで出るなよ。いいな?』

『分かったよ、仕方ないなぁ。可愛くて物分かりのいいボクは、主人の命に従うよ』

「……はぁ」

 脳内空間で少し相手をしただけで、かなり疲れた。なんかこう、変にテンションが噛み合ってないせいで、こちらの負担が重くなるのだ。そりゃため息も出る。

「どうしたの?」

「ああ。いや、なんでも……って、そろそろ離してくれ。咄嗟に動けないから」

「大丈夫だよ。その時は私が身代わりになるから、ね」

「……はぁ」

 何度ため息をついただろうか。これに似たやり取りを五回はした気がする。それに伴って、俺の記憶にない、二人の思い出話も語られた。初めて行ったデートの場所とか、学校で二人で会ったこととか。
 驚くべきことに、何一つ心当たりがない。完全に妄想の世界だ。

 肉体的にではなく、精神的に疲れた。

『あ、健一。右斜め前の方に誰かいるよ』

 脳内で雷鳴鬼が索敵の結果を知らせてくる。

『何人だ?』

『一人っぽい』

『一人か……』

 さて、ここからどう動くか。怪我しているとはいえ、レインと二人がかりなら勝つ可能性は高い。

 レインは、「私は勝ちに興味はない、から」と言っていたので、ポイントは俺がもらえることになっている。じゃあなんで決勝に……と思ったが、聞かないでおいた。なんとなく想像できるし。

「レイン、あっちに誰かいる。戦えるか?」

「う、うん。もちろん! 47回目の共同作業だね」

 後半部分は聞かなかったことにして、レインと人がいる方に向かっていく。

「あら、お客さん?」

「げ、まじかよ……」

 移動先にいたのは、薄暗い灰色の髪の女性。前の試合で覗き見たことがある、『鉛姫』だ。

「しかも二人……これは幸運やわ」

 狩人のような目つきで舌を唇に這わせる。ゾクッと、蛇に睨まれた蛙のように一瞬怯むが、すぐに我を取り戻し、

「あーえっと、お姉さん。一回話し合わないか?」

 無理そうだとわかっていても、とりあえず平和的和解策を提示するのだが、

「うーん……せやけど、もぉ時間あらへんし―――」

 そう言いながら俺達の背後に鉄の壁を作り出す。あまりにも自然に、しかも驚異的に早い速度で魔法を操る姿におもわず声が漏れる。

「くそ……」

 俺達が逃げられないように退路を封じたところで、

「ほんなら軽く自己紹介。ウチはサカキバラ・サヤノ、三年生や。そんで、君たちは?」

「俺は石動健一、二年。それでこっちが……」

「れ、レイン……です……」

 人見知りが発動し、届くか届かないかくらいの声でレインも自己紹介をする。

「ってことで、今日はこのへんで―――」

 流れのままに帰ろうとするが、すぐ目の前を弾丸が通り過ぎる。一歩前に歩いていたら、今頃こめかみを貫かれていた。

「逃がさへんよ。君たち二人倒せば、一位に躍り出ることになる。そんなチャンス、みすみす見逃すおもてる?」

「ですよねぇ~」

 こうして、俺とレインの即席コンビ対、三年生の通り名持ちの戦いの火蓋が切られるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...