異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第三章 王立学校

怪人の仕込み

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 武闘祭四日目

 今日からもう出場することはないので、あとはこの祭りを楽しむだけだ。午後からティア達と合流して回る約束をしているのだが、その前に俺は病室に足を運んだ。

「おっす、キリヤ。生きてるか?」

「おお、ケンイチ! 来てくれたのか」

 案外元気そうな姿を見て、胸を撫で下ろす。ガッツリ包帯を巻かれてはいるが、普通に動けているようだしな。

「すまねぇ! 俺が馬鹿やったばっかりに、クラスの勝ちが遠のいちまった!」

「まぁ、別にそこはいいけどよ。とにかく無事で良かったわ」

 本気でクラスの勝ちを狙いにいってるのって、おそらくキリヤだけだしな、と心の中で思ったが言わないでおく。

 それに、クラスで勝った時の賞品は確か旅行みたいな奴だったしな。
 そりゃ、興味はあるけど奴隷が連れていけない以上、あまり気乗りはしないし。

「にしても、何で登録なんか忘れたんだ? 普通気づくだろ」

 木人形の登録は何度も念押しされるし、団体戦なんか特に周りの人がやってるのを見て気づきそうなものだが。

「いや、それがよぉ、なんかすっかり木人形のことが頭から抜け落ちててさぁ。そんで偶々魔法を真正面から食らっちまったんだ」

「やっぱ浮かれてただろ……」

「うっ……グラントの奴から散々言われた後だから、ケンイチは慰めてくれぇ」

「あー……」

 グラントはキリヤの浮かれ具合をかなり危険視していた。再三注意した上でこの体たらくなら、キレても文句は言えないだろう。

「はぁ……ハナビにカッコわりぃとこ見しちまった。俺、この団体戦で優勝したら告白しようと思ってたのによぉ……」

「おっ、そうなのか?」

「ああ。でも、結果このザマじゃ笑えねぇよな。もしかして、嫌われたかも……」

 珍しくキリヤが落ち込んでいる。さすがにここまでのやらかしをしたという事が、かなり効いているっぽいな。

「……まぁ、ハナビはこんくらいじゃ嫌いになったりしないだろ。それに、チャンスはいずれまたあるだろうし、天がまだその時じゃないっ言ってんだよ」

「イスルギ……そう、だな……! まだその時じゃないってことか!」

「立ち直り早いな……」

 元々のポジティブな性格も相まって、爆速で元のキリヤの調子に戻る。そんな姿を見て安心混じりのため息を吐き、「お大事にな」と言って病室を後にした。

 ▷▶▷

「お待たせ」

「遅いぞ、イスルギ。五分待った」

「悪い、ちょっと長引いちまった」

「ティアったら、器が小さいですねぇ」

「べ、別にこのくらい普通だろ! それに……せっかく、久しぶりのデートだから……」

 もじもじと恥ずかしそうにそう言うティアに胸が撃ち抜かれたような衝撃が走る。普段のツンツンしてる姿勢も相まって、こうして不意に見せる可愛らしさの威力が上がるのだ。

「じゃあ、行くか」

 今日はまだ行っていない西エリアの方の屋台を回ることになっている。生粋の料理人のティアはこの五日間ですべての屋台の料理を巡るとのことだ。

「そういえば、ティアもあそこの蛙の串刺しって食ったのか?」

 全店舗に行くと言っていたからには、あのハズレ料理を食ったのだろうか。

「いや、あそこのは食べてない。というか、ここらへんの料理は全部食べてないな」

「やっぱ、あの臭いが?」

「まぁな。でも、本来はちゃんと臭みを消して食べるものだから、あれは屋台の側が悪い」

 そう言ってのけるティアの顔つきは、いつも料理を作っている時と同じになっている。

「ん? どうかしたか?」

「いんや、ティアの顔が可愛くって見惚れてたわー」

「んなっ!?」

 普段、シャロに言う時は余裕の表情で倍返しをされるのだが、ティアはいつもこうやって顔に分かりやすく出してくれる。

 頬を赤らめ、足が止まるティアを横目に、俺達は学校の西側へと足を運んだ。

 ▷▶▷

「ふぅむ……失敗、だな」

 行き交う人波に揉まれ、『怪人』はそう呟く。

 あらかじめ仕込んでおいた『ドラマ』のとっかかりが上手く機能しなかった。原因は己の確認不足にあるものの、この祭りという舞台を諦めるには抵抗がある。

 ここ数日間で『種』になり得る関係をいくつか目にした。のだが、些か準備ができていない。それに、もう少し熟成させてからの方が自分好みになると、そう直感が告げているのだ。

「何かこの盤面で相応しいものがないのだろうか……」

 ふと、自身の横を通った大きな男が目に入る。
 あの男もまた、彼と深く関わりのある者だ。そんな男にきっかけを与え、事を起こせば、即席のモノが作れるのではないか?

 そう考え、その後ろ姿を追う。
 これもまた天の導き、自分の直感だ。

 男の抱える闇は分からない。そこに関する歪みも知らない。
 だが、どうせこれはエクストラステージだ。

 成功すれば御の字、失敗したとしても次へのとっかかりにすればよい。

 肩を叩き、男は振り返る。

「やぁ、ガルド・ローズベルト―――」

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