異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第三章 王立学校

第三章蛇足② 日進月歩

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「くそ……一向に覚えらんねー」



「暗記はやるしかないよー?」



「わかっちゃいるけど、どうもやる気がなー」



 現在、入試が近づく12月。例の如く、俺はメアによる勉学の指導を受けている。科目は王国史。まぁ日本史みたいなものだな。



 そして俺は、昔から歴史系は大嫌いなのだ。歴史が苦手、というよりは暗記が苦手……いや、嫌いなのだ。



 ましてや、知らない国の歴史など、どうして楽しく学べようか。



「てか、なんでこんなに地理系の問題があんだよ……」



 王国史だから主体は国にまつわる出来事なのだが、他の国との国交だったりなんだりが合わさって、地理歴史という総合的な内容になっている。



「この‘‘魔界‘‘なんて物騒なのもあるしよ……」



 響きからして何やらおっかない雰囲気しかないこの単語。国にいる勇者絡みで頻繁に名前が出てくる。



 どうやら、今俺がいる世界を‘‘現世界‘‘と呼び、いくつか繋がっている世界があるのだそうだ。



「はい、じゃあ問題。この現世界以外の世界を全て答えて!」



 メアは俺の持っている教科書を取り上げ、問題を出してくる。

 唐突に始まるテストだが、これもいつもの事だ。俺は慣れた口調で一つ一つ挙げていく。



「えっと……まず‘‘魔界‘‘だろ? そんで‘‘精霊界‘‘……あと二個だよな?」



「……」



 メアはうんともすんとも言わず、こちらに一切のヒントを与えない。確か全部で四つだけだったはずだ。



「……‘‘天界‘‘と‘‘地獄界‘‘だ! これで全部だろ!」



「せいかーい! じゃあ、ついでにそこの支配者の名前もね」



「うぐ……お、覚えてねぇ……」



 教科書のすみっこに書いてあったから無視していた。出ないと思うだろ普通。



「だと思った~。まぁここまでは覚えなくてもいいと思うけど、魔王くらいは知っといた方が良いと思うよ」



「魔王……ねぇ……」



 異世界で魔王と聞くと胸が高鳴るが、身近に魔王よりもヤバそうな奴がいるしな。



「あ、生物学の方の採点しといたから、確認しといて」



「お、ありがとな……うげ、半分以上ミスってる……」



「今回はちょーっとマイナーなとこばっか出したからね~」



 メアは笑顔でそう誤魔化すが、マイナーなんてレベルじゃなかったぞ。

 しかし、そんな不満もこの弾ける笑顔を見るだけでどうでもよくなってくる。



 くそ、可愛いな。



「ん? そういえばコイツ、図鑑とかでも見たことねぇぞ」



 メアの出した生物の問題に見たことのない生き物が載っていた。なんだかんだ、全て見覚えだけはあったのだが、これだけ完全に初見だ。



 見た目は人型。左腕が無く、白い風貌に顔の無い不気味な魔物。こんなの、一度見たら記憶に残りそうだ。



「あー、これはね、‘‘死域‘‘の魔物だよ」



「死域……」



‘‘死域‘‘とは、この現世界で人が住んでいる大地の反対側に位置する、広大な大陸に付けられた名だ。名前の由来はまんまで、人が生きて帰ってこれないからというものだ。



 魔物のレベルも比べ物にならない程強く、仮にロイドやレイズがそこに行ったとしても生きて帰れるか怪しいほどとのことだ。



 そんな所に行く機会なんてないとは思うが、ともかく絶対に行きたくはないな。



「てか、どうやってこんなのの写真を撮ったんだよ……」



 有能なカメラマンが撮ったのか、はたまた別の方法で撮ったのか。



「そんで、なんて名前なんだ?」



死叫人しきょうびとっていう魔物なんだけど、これが結構有名なんだよね」



「人ってことは、人間なのか?」



「ううん。単に人の形をしてるから付いた名前らしいの」



「へぇー。なんで有名なん?」



「過去に一度、どういう訳かこっちの大陸に現れたことがあるからなの」



‘‘死域‘‘とこっちの大陸の間はかなり広い海が隔てている。それから考えると、ただ事じゃないな。



「それで、とある国がそれにいち早く気づいて兵を出したんだけど……」



「だけど?」



「すぐに全滅。その国の勇者が到着して初めて倒せたらしいよ。それでも、勇者は瀕死の重傷を負ったんだけど」



「ま、まじかよ!?」



 世界に名が知れ渡っているような強者でも相打ちとか、どんだけ強いんだ? その死叫人ってのは。



 そもそも勇者の強さがイマイチ分からないが、勇者と名乗るくらいだ。きっと相当強いに違いない。



「とまぁ、そんな話があって有名なの。どう? 覚えられた?」



「ああ、ばっちりだ! ありがとな!」



 そう言って俺はメアの頭を撫でる。

「えへへ」と頬を緩ませるメア。



 ああもう、本当に可愛いなこの子は。



 そんなこんなで、俺の勉強の日々は過ぎていく―――
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