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18 追う者、追われる者
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糞っ!どこに行きやがった!
暗い森の中を駆ける黒い影・・・
息を殺し木陰に隠れる小さい姿・・・
いつの世も、どこの世も、追う者、追われる者が居る様で、
今日はそんな方々のお話です。
「くっそ~、あの小童、次見つけたらただじゃ置かねぇ・・・っと、なんかパーッと明るい気分になる酒をくれよ」
カウンターに座り込み愚痴を言い始める王国兵士・・・
どうやら、盗みを働いた子供を取り逃がしたらしい・・・
パーッと明るくなる酒ねぇ・・・久しぶりに作ってみようかな・・・
名前や写真は見た事がある人もいるだろう
【レインボー】を作ることにする。
特定の順番でバースプーンに伝えながらゆっくりと注いで色の段差を作るカクテルだが、
正直、味の方は微妙なんだよな・・・基本各階層毎にストレートで飲んでいくわけで・・・
味の調和より酒の比重・・・重さが何より優先されるカクテルだからな・・・
見た目で明るくなってもらおう!ってカクテルだ
失敗しにくいレシピは
クレーム・ド・カカオ・ブラウン
バイオレット
マラスキーノ
ベネディクティン
シャルトリューズ・イエロー
シャルトリューズ・グリーン
ブランデー
この7階層を上から注げばまぁなんとかなる・・・
初心者向けのやり方だとスポイトを使ってコップの内側の壁を伝わせる…なんて裏技もある
ストローを刺しお出しする。ついでにツマミとしてミックスナッツを出す
「お待たせしました、レインボーです。虹って意味のカクテルです。」
「これはいいな!奇麗なもんだ、この筒で吸いながら飲めって事だな」
そう言って一番底から飲み始める
味の変化を楽しむって言えば聞こえがいいだろう・・・
「しっかし、あの小僧、どこに隠れやがったんだか・・・」
よっぽど取り逃がしたのが悔しいのだろう・・・ブツブツ言っている。
ここは空気を読んで話に乗ってあげましょうか・・・
「何をした子供なんですか?」
興味がある風に乗っかる
「あぁ、近くの農村で畑から作物をな・・・」
長い話になりそうだ…
その間にも飲みなれた麦酒の方が良かったのか注文が入りお出しする。
要約すると・・・
近くの農村で畑を荒らす被害が出てて張り込みをしてる所にそいつが畑から作物を盗むところを目撃、
追いかけたものの森の中に逃げ込まれそのまま見失ったという事・・・
たった2行で収まる話なのにいや~酒が入ると話が長い(汗)
「しばらく交代で見張りをすることになったさ・・・」
宮仕えの兵士も楽じゃないな・・・
「ほんとに子供なんですかね・・・草原種・・・グラスランドの可能性とか追ってますか?」
はっとした表情を見せる。
「盲点だった、そうか・・・あの村の近くにも集落があったはず・・・」
「あくまで可能性ですから決めつけない方がいいとは思いますが・・・」
思考ロックさせないように念をさす
これが原因で種族抗争なんてことになったら目も当てられない・・・
「勿論だ!だが参考になった、ありがとう」
うん、上から目線で取り締まる兵士が多いから横柄なイメージを思ってたが、
このおっちゃんは礼が言える点でかなり好感が持てる。
「彼らは夜目が効きますからね・・・見つかったらまず森に逃げ込むでしょうね・・・」
俺からの追加情報だ。
「森側に待ち伏せてって事か・・・そりゃいい・・・」
頭の中でシミュレートしてるっぽい。
「おっし!元気が出た!ご馳走さん」
そう言って支払いを済ませて帰っていった。
「ハル様、グラスランドの集落の方向と森の方向は逆になるのですが・・・」
珍しくフィリアンが話に乗ってくる
「追っ手を撒くなら森の中ってだけでほとぼりが冷めたら出て行くってとこだろ?」
まぁ、情報が足りないから簡単な考察しかできない・・・
条件が整えば別の思考にも行きつくんだろうが・・・
「場所がどこであれ、人間の追ってから逃れてしまえばどんな行動もとれるからな。」
食うに困ったにせよ、なんにせよ犯罪者だからなぁ・・・
まぁ、俺だったら勇者賢者連れて行ってサーチの魔法でも使えば一発なんだが・・・
相手のレベルが低い、潜伏の能力が低かったら俺も気配察知くらいはスキルが無くてもできる
もっと被害が甚大になったら勇者たちに話が回ったりするんだろうが、
今の段階ではただのコソ泥、勇者達に頼むほどじゃない・・・
「まぁ、どちらにしても俺には関係のない話さ」
盗人の話を切り上げる・・・
「さぁ!そろそろフェルを呼んで晩飯にしよう、ハンティ、呼んできて」
「はいです」
「フィリアンは準備中の札に変えといて」
そう言って準備開始だ・・・っつっても盛り付けて出すだけなんだが
今日の晩飯はお刺身定食だ!もちろん勇者リクエスト・・・
肉じゃがを小鉢で、後はみそ汁と漬物を出せばいいかな・・・
準備が終わる頃に勇者達が帰ってくる・・・ほんっといいタイミングだよな・・・
フィリアンと配膳を済ませる。
「いただきます」
自分がリクエストしただけあってカズキ達は食が進むなぁ・・・米足りるか?
無言でがっつく彼らを横目に、晩酌用の肴に刺身をキープしておく
勇者一行の話は今日の反省会らしい
農場でサボる子供の指導についてだ・・・
一日単位の給料で雇ってる現状では作業量での報酬ではない分そういった不心得者が出てるそうだ。
「まぁ、まじめにやってた奴は給料UPってので落ち着くはずだ」とはカズキの弁
いやいや、そんなに甘くない
今の給料で満足した奴らなら間違いなくサボる方を選ぶ
明日から来なくていい・・・ではスラムの子供救済に支障が出る・・・
「ペナルティーは減棒でいんじゃね?」これは賢者のセリフ
お前らなぁ・・・
「考え方が間違ってんだよ!全員救う必要はねーだろ!」
さすが剣聖、そこは同意だ
まぁ、納得のいく答えを出してくれ・・・
「ハルはどう思う?」
俺に振るな・・・と本気で思った・・・が、出資者が意見を求めてるんだ、答えないわけにはいかないだろう・・・
俺って弱いな・・・主に金に・・・
「確かに、全員救うなんてのは思い上がりだと思う。」
「だろ?」と剣聖
「やってみせ、言って聞かせて、 させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、 任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、 信頼せねば、人は実らず・・・みんなは自分が見本を見せてるのか?」
山本五十六もそういってるだろ?
・・・一同無言
「やり方だけ伝えて後はやっておけ・・・では、ついてくるわけねーだろ・・・」
フィリアンも、ハンティも最初は俺がやって見せて、アドバイスしながら一緒にやって、任せてみて
やっとできるようになったんだ・・・レベリングは小僧共だってやったんだろ?条件は一緒だ・・・
「常に監視してられるわけじゃないんだから難しいよな」
・・・頭の固い奴らだ・・・
「自分らが一番信用できる奴をレベリングで鍛え上げて全権責任者を任せればいいだろ・・・」
「そいつの給料だけ上げればいいって事か」
また目先の事しか見えてねぇ・・・経営者向きじゃないな・・・
「その下に就く奴数人も鍛えておけ・・・俺ならそうする」
頷くカズキ、君らは背負い込みすぎだ・・・
そんな話をして今日は解散になった
そして俺は、刺身をツマミにフェアリーズネクターで軽く晩酌
・・・と言ってもショットグラスに一杯だけなんだけどね、
おかわりは別の酒・・・数も限られてるからね・・・お客に出す気はさらさらない!
あれは売り物じゃない!俺の酒だ!!
世界に美酒は数あれど・・・日本に住んでた頃はカミュXOが至高だと思ってた・・・
さすが異世界・・・とんでもない酒がある・・・
もしかして神酒・・・ソーマってのももしかしてあるんじゃね?
いつか飲んでみたいなぁ・・・
俺はまだ見ぬ酒に思いを馳せながらチビチビとやる・・・
あぁ・・・至福・・・
身体を巡るアルコールの心地よさに身を委ねた・・・
・・・翌日・・・
そんなこんだ・・・で、やってくれましたよ・・・王国軍・・・
ほんっとアフォか?
グラスランドの集落に兵を差し向けたらしい・・・
名目は事情聴取と取り調べって事らしいが、思いっきり先走りすぎだろ・・・
その話が俺の耳に入ったのは次の日の昼頃だったんだが、
唖然としたね・・・
元々、上から目線の取り調べをする、疑わしくば尋問し吐かせろって感じの
日本でやったら問題になるレベルの王国兵士なんだが、
異種族の集落相手によくもまぁ・・・
単独犯の可能性の方が高いだろうに・・・どうも他種族を下に見る思考が抜けないらしい。
どんな種族も必ず人間では届かない領域の物があるってのに・・・
エルフの知力と寿命、魔法力、ドワーフの器用さと筋力、生命力、獣人の感覚、身体能力
グラスランドの俊敏性、器用さも種族的に人間では敵わない・・・
それでも下だと思ってる感覚に嫌気がさす。
万に一つ戦争になるようなら、今回に限ってはグラスランドに手を貸すぞ・・・
俺ですらそう思う・・・そんな次元の話だ
え?・・・嫌ですよ、戦争には絶対に参加しませんが・・・
ともあれ、一触即発・・・ってか
俺が余計な事を言ったからか?
まぁ、なるようになんだろ・・・
どんな国際状況であっても、俺達の営業は変わらない・・・
「ハル~、なんで音楽が流れてるの~?」
・・・と朝からケインが騒いでたり・・・
フェルが朝食の後、工房に引きこもったり・・・
ハンティが自分がやった掃除のチェックに余念が無かったり・・・
フィリアンが試作と言って作った妙な料理の味見をさせられたり・・・
俺達は平和だった・・・
その頃
「盗人の背格好が子供の大きさだったってだけで集落全員取り調べとかやりすぎだろ!」
「亜人なんて自分たちの為なら何でもやる連中だろ?手ぬるいくらいだ」
問答無用の取り調べ協力要請に緊張が走る・・・
グラスランドの方は武装して協力拒否の構えのようだ・・・
それを聞いた王国兵は
「反乱とみなし討伐を!」
といった流れになりつつある・・・
城下に使いが走り、軍部の方も慌ただしくなる・・・
これが後の世に伝わる『野菜泥棒に王国軍出撃事件』の発端である・・・
さすがの勇者も呆れて声も出なかったが、さすがに見過ごすわけにもいかず独自で動くようだ・・・
勇者様に期待しよう・・・あいつらで大丈夫か?
そこからの王国軍の動きは迅速だった・・・
出兵してから2日程で集落を完全包囲し、再度勧告するも拒否・・・
俺に言わせればどっちもどっちだ・・・
まず王国側の対応が悪い!それもそうなんだが、
意地を張って取り調べを受けないグラスランドにも問題があると思う。
虐げられた亜人種が不当に扱われてるってのが根底にあるんだが、
一族を道連れにする野菜泥棒ってどうよ・・・
しかも野菜泥棒がグラスランドどいう確証も無いのに・・・
あぁ・・・考察が雑すぎる・・・人狼ゲームだったらボロクソに言われて戦犯扱いだぞ・・・
このままグラスランドを圧迫して野菜泥棒を吊り上げれば・・・
収まらないだろうな・・・反逆扱いだし・・・
振り上げた拳の持って行き場に困るって状況・・・
一気に殲滅・・・なんて事にならなきゃいいが・・・
夜、勇者達の話を聞くに。とにかく亜人が気にくわない勢力が余計な介入をしてるらしい・・・
とある貴族が筆頭で・・・
一応領主が直接戦闘は待つように言ってるらしいが、先走った兵士がいつ暴発するかわからないらしい。
本当にグラスランドの誰かが野菜泥棒だったら、今頃どんな気持ちでいるのやら・・・
そんな胸糞展開のまま時間だけが過ぎて行った・・・
暗い森の中を駆ける黒い影・・・
息を殺し木陰に隠れる小さい姿・・・
いつの世も、どこの世も、追う者、追われる者が居る様で、
今日はそんな方々のお話です。
「くっそ~、あの小童、次見つけたらただじゃ置かねぇ・・・っと、なんかパーッと明るい気分になる酒をくれよ」
カウンターに座り込み愚痴を言い始める王国兵士・・・
どうやら、盗みを働いた子供を取り逃がしたらしい・・・
パーッと明るくなる酒ねぇ・・・久しぶりに作ってみようかな・・・
名前や写真は見た事がある人もいるだろう
【レインボー】を作ることにする。
特定の順番でバースプーンに伝えながらゆっくりと注いで色の段差を作るカクテルだが、
正直、味の方は微妙なんだよな・・・基本各階層毎にストレートで飲んでいくわけで・・・
味の調和より酒の比重・・・重さが何より優先されるカクテルだからな・・・
見た目で明るくなってもらおう!ってカクテルだ
失敗しにくいレシピは
クレーム・ド・カカオ・ブラウン
バイオレット
マラスキーノ
ベネディクティン
シャルトリューズ・イエロー
シャルトリューズ・グリーン
ブランデー
この7階層を上から注げばまぁなんとかなる・・・
初心者向けのやり方だとスポイトを使ってコップの内側の壁を伝わせる…なんて裏技もある
ストローを刺しお出しする。ついでにツマミとしてミックスナッツを出す
「お待たせしました、レインボーです。虹って意味のカクテルです。」
「これはいいな!奇麗なもんだ、この筒で吸いながら飲めって事だな」
そう言って一番底から飲み始める
味の変化を楽しむって言えば聞こえがいいだろう・・・
「しっかし、あの小僧、どこに隠れやがったんだか・・・」
よっぽど取り逃がしたのが悔しいのだろう・・・ブツブツ言っている。
ここは空気を読んで話に乗ってあげましょうか・・・
「何をした子供なんですか?」
興味がある風に乗っかる
「あぁ、近くの農村で畑から作物をな・・・」
長い話になりそうだ…
その間にも飲みなれた麦酒の方が良かったのか注文が入りお出しする。
要約すると・・・
近くの農村で畑を荒らす被害が出てて張り込みをしてる所にそいつが畑から作物を盗むところを目撃、
追いかけたものの森の中に逃げ込まれそのまま見失ったという事・・・
たった2行で収まる話なのにいや~酒が入ると話が長い(汗)
「しばらく交代で見張りをすることになったさ・・・」
宮仕えの兵士も楽じゃないな・・・
「ほんとに子供なんですかね・・・草原種・・・グラスランドの可能性とか追ってますか?」
はっとした表情を見せる。
「盲点だった、そうか・・・あの村の近くにも集落があったはず・・・」
「あくまで可能性ですから決めつけない方がいいとは思いますが・・・」
思考ロックさせないように念をさす
これが原因で種族抗争なんてことになったら目も当てられない・・・
「勿論だ!だが参考になった、ありがとう」
うん、上から目線で取り締まる兵士が多いから横柄なイメージを思ってたが、
このおっちゃんは礼が言える点でかなり好感が持てる。
「彼らは夜目が効きますからね・・・見つかったらまず森に逃げ込むでしょうね・・・」
俺からの追加情報だ。
「森側に待ち伏せてって事か・・・そりゃいい・・・」
頭の中でシミュレートしてるっぽい。
「おっし!元気が出た!ご馳走さん」
そう言って支払いを済ませて帰っていった。
「ハル様、グラスランドの集落の方向と森の方向は逆になるのですが・・・」
珍しくフィリアンが話に乗ってくる
「追っ手を撒くなら森の中ってだけでほとぼりが冷めたら出て行くってとこだろ?」
まぁ、情報が足りないから簡単な考察しかできない・・・
条件が整えば別の思考にも行きつくんだろうが・・・
「場所がどこであれ、人間の追ってから逃れてしまえばどんな行動もとれるからな。」
食うに困ったにせよ、なんにせよ犯罪者だからなぁ・・・
まぁ、俺だったら勇者賢者連れて行ってサーチの魔法でも使えば一発なんだが・・・
相手のレベルが低い、潜伏の能力が低かったら俺も気配察知くらいはスキルが無くてもできる
もっと被害が甚大になったら勇者たちに話が回ったりするんだろうが、
今の段階ではただのコソ泥、勇者達に頼むほどじゃない・・・
「まぁ、どちらにしても俺には関係のない話さ」
盗人の話を切り上げる・・・
「さぁ!そろそろフェルを呼んで晩飯にしよう、ハンティ、呼んできて」
「はいです」
「フィリアンは準備中の札に変えといて」
そう言って準備開始だ・・・っつっても盛り付けて出すだけなんだが
今日の晩飯はお刺身定食だ!もちろん勇者リクエスト・・・
肉じゃがを小鉢で、後はみそ汁と漬物を出せばいいかな・・・
準備が終わる頃に勇者達が帰ってくる・・・ほんっといいタイミングだよな・・・
フィリアンと配膳を済ませる。
「いただきます」
自分がリクエストしただけあってカズキ達は食が進むなぁ・・・米足りるか?
無言でがっつく彼らを横目に、晩酌用の肴に刺身をキープしておく
勇者一行の話は今日の反省会らしい
農場でサボる子供の指導についてだ・・・
一日単位の給料で雇ってる現状では作業量での報酬ではない分そういった不心得者が出てるそうだ。
「まぁ、まじめにやってた奴は給料UPってので落ち着くはずだ」とはカズキの弁
いやいや、そんなに甘くない
今の給料で満足した奴らなら間違いなくサボる方を選ぶ
明日から来なくていい・・・ではスラムの子供救済に支障が出る・・・
「ペナルティーは減棒でいんじゃね?」これは賢者のセリフ
お前らなぁ・・・
「考え方が間違ってんだよ!全員救う必要はねーだろ!」
さすが剣聖、そこは同意だ
まぁ、納得のいく答えを出してくれ・・・
「ハルはどう思う?」
俺に振るな・・・と本気で思った・・・が、出資者が意見を求めてるんだ、答えないわけにはいかないだろう・・・
俺って弱いな・・・主に金に・・・
「確かに、全員救うなんてのは思い上がりだと思う。」
「だろ?」と剣聖
「やってみせ、言って聞かせて、 させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、 任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、 信頼せねば、人は実らず・・・みんなは自分が見本を見せてるのか?」
山本五十六もそういってるだろ?
・・・一同無言
「やり方だけ伝えて後はやっておけ・・・では、ついてくるわけねーだろ・・・」
フィリアンも、ハンティも最初は俺がやって見せて、アドバイスしながら一緒にやって、任せてみて
やっとできるようになったんだ・・・レベリングは小僧共だってやったんだろ?条件は一緒だ・・・
「常に監視してられるわけじゃないんだから難しいよな」
・・・頭の固い奴らだ・・・
「自分らが一番信用できる奴をレベリングで鍛え上げて全権責任者を任せればいいだろ・・・」
「そいつの給料だけ上げればいいって事か」
また目先の事しか見えてねぇ・・・経営者向きじゃないな・・・
「その下に就く奴数人も鍛えておけ・・・俺ならそうする」
頷くカズキ、君らは背負い込みすぎだ・・・
そんな話をして今日は解散になった
そして俺は、刺身をツマミにフェアリーズネクターで軽く晩酌
・・・と言ってもショットグラスに一杯だけなんだけどね、
おかわりは別の酒・・・数も限られてるからね・・・お客に出す気はさらさらない!
あれは売り物じゃない!俺の酒だ!!
世界に美酒は数あれど・・・日本に住んでた頃はカミュXOが至高だと思ってた・・・
さすが異世界・・・とんでもない酒がある・・・
もしかして神酒・・・ソーマってのももしかしてあるんじゃね?
いつか飲んでみたいなぁ・・・
俺はまだ見ぬ酒に思いを馳せながらチビチビとやる・・・
あぁ・・・至福・・・
身体を巡るアルコールの心地よさに身を委ねた・・・
・・・翌日・・・
そんなこんだ・・・で、やってくれましたよ・・・王国軍・・・
ほんっとアフォか?
グラスランドの集落に兵を差し向けたらしい・・・
名目は事情聴取と取り調べって事らしいが、思いっきり先走りすぎだろ・・・
その話が俺の耳に入ったのは次の日の昼頃だったんだが、
唖然としたね・・・
元々、上から目線の取り調べをする、疑わしくば尋問し吐かせろって感じの
日本でやったら問題になるレベルの王国兵士なんだが、
異種族の集落相手によくもまぁ・・・
単独犯の可能性の方が高いだろうに・・・どうも他種族を下に見る思考が抜けないらしい。
どんな種族も必ず人間では届かない領域の物があるってのに・・・
エルフの知力と寿命、魔法力、ドワーフの器用さと筋力、生命力、獣人の感覚、身体能力
グラスランドの俊敏性、器用さも種族的に人間では敵わない・・・
それでも下だと思ってる感覚に嫌気がさす。
万に一つ戦争になるようなら、今回に限ってはグラスランドに手を貸すぞ・・・
俺ですらそう思う・・・そんな次元の話だ
え?・・・嫌ですよ、戦争には絶対に参加しませんが・・・
ともあれ、一触即発・・・ってか
俺が余計な事を言ったからか?
まぁ、なるようになんだろ・・・
どんな国際状況であっても、俺達の営業は変わらない・・・
「ハル~、なんで音楽が流れてるの~?」
・・・と朝からケインが騒いでたり・・・
フェルが朝食の後、工房に引きこもったり・・・
ハンティが自分がやった掃除のチェックに余念が無かったり・・・
フィリアンが試作と言って作った妙な料理の味見をさせられたり・・・
俺達は平和だった・・・
その頃
「盗人の背格好が子供の大きさだったってだけで集落全員取り調べとかやりすぎだろ!」
「亜人なんて自分たちの為なら何でもやる連中だろ?手ぬるいくらいだ」
問答無用の取り調べ協力要請に緊張が走る・・・
グラスランドの方は武装して協力拒否の構えのようだ・・・
それを聞いた王国兵は
「反乱とみなし討伐を!」
といった流れになりつつある・・・
城下に使いが走り、軍部の方も慌ただしくなる・・・
これが後の世に伝わる『野菜泥棒に王国軍出撃事件』の発端である・・・
さすがの勇者も呆れて声も出なかったが、さすがに見過ごすわけにもいかず独自で動くようだ・・・
勇者様に期待しよう・・・あいつらで大丈夫か?
そこからの王国軍の動きは迅速だった・・・
出兵してから2日程で集落を完全包囲し、再度勧告するも拒否・・・
俺に言わせればどっちもどっちだ・・・
まず王国側の対応が悪い!それもそうなんだが、
意地を張って取り調べを受けないグラスランドにも問題があると思う。
虐げられた亜人種が不当に扱われてるってのが根底にあるんだが、
一族を道連れにする野菜泥棒ってどうよ・・・
しかも野菜泥棒がグラスランドどいう確証も無いのに・・・
あぁ・・・考察が雑すぎる・・・人狼ゲームだったらボロクソに言われて戦犯扱いだぞ・・・
このままグラスランドを圧迫して野菜泥棒を吊り上げれば・・・
収まらないだろうな・・・反逆扱いだし・・・
振り上げた拳の持って行き場に困るって状況・・・
一気に殲滅・・・なんて事にならなきゃいいが・・・
夜、勇者達の話を聞くに。とにかく亜人が気にくわない勢力が余計な介入をしてるらしい・・・
とある貴族が筆頭で・・・
一応領主が直接戦闘は待つように言ってるらしいが、先走った兵士がいつ暴発するかわからないらしい。
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毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
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