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彼女の今世
episode82
新学年の始まりの日は雲ひとつない快晴だった。身支度を終えた私はバルコニーへと続く自室の窓を開け、爽やかな風を迎え入れた。
ぽかぽかと気持ちの良い日光を浴びてからくるりと振り返る。
「私と一緒に登校してくれる人!」
彼女たち専用のふわふわな寝床で横になっていた二人は、欠伸をしながらゆるりと目を開けた。
「んーアリアは行かないー。もうちょっと寝たい……」
「私はリーティア様のお供をします!」
片方はアリア。もう片方はルーチェ。ルーチェはふわりと浮き上がると、飛びながら魔法で身支度を整える。
その美しく長い髪は金から茶色へ。服は妖精用の制服に着替えた。これは私と同じ服が着たいと願ったルーチェのために、特別に仕立ててもらった制服だ。いつかのクリスマス、アリアやルーチェにどういったプレゼントが欲しいか質問した際に、彼女からねだられたものだった。それ以来、学園に行く時は時々妖精用の制服を着ている。
着替えたルーチェはちょこんと私の肩に乗った。
「リーティア様は今日もお綺麗ですね。髪型もお似合いです!」
「ありがとう。アナベルが新学期だからと張り切ってくれたのよ」
私はそっと結われた髪に触れる。サイドの髪を三つ編みにして上の方でくるんとお団子。後ろの髪はそのまま下ろしている。お団子の分には花が挿してあり、動くとふんわり良い香りがする。
「さ、アリアは置いて行きましょう」
最近の彼女はお寝坊さんなのだ。長期休暇で授業がなかったのもあり、アリアは見事に昼夜逆転生活を送っている。対して私やルーチェはいつも通り規則正しい生活を送っていたので、今日もぱっちりと目が覚めた。
登下校用のカバンを肩から提げ、軽い足取りでエントランスホールへ向かう。そこにはお見送りに来たお母様とアナベル、そして私と同じ学園の制服を着用したセシルがいる。
「お姉様!」
ぶんぶんっと元気いっぱい手を振るセシルに振り返し、階段を降りていく。
「セシルおはよう。待たせてしまったかしら」
「いいえ! ぜーんぜんっ待っていません」
ニコニコと笑うセシルは今年二年生になる。
去年、新一年生として学園に入学した彼女は、持ち前の明るさと活発さによって、クラスの中でも人気者らしい。
学年か三つも離れている私の元にも彼女の話は流れてくるから、前世のように誰からも好かれて交友関係の輪が広いのだろう。
「それにお姉様のためなら何時間でもお待ちしますよ」
ぎゅっと私の腕にくっついたセシルは、屈託ない笑顔とともにそう言ってのけた。
「私もセシルのためなら何時間でも待てるわ」
思わず微笑んで頭を撫でると、セシルは少しくすぐったそうに目を細めた。
こうして慕ってくれることも、すんなり受け止められるようになったのはいつ頃だったか。小さい頃はセシルとの距離感の近さについて不慣れで辿々しく、無意識に一定程度の距離を保とうとしていた私だが、今は少しでも距離を取られたら、むしろ悲しくなってしまうだろう。
(取っ付き難い姉だっただろうに、よく離れず積極的に接してくれたものだわ)
感謝してもしきれない。
「お二人とも、馬車の用意が整いましたよ」
アナベルの声に振り向けば、エントランス前に登校用の馬車が待機していた。朝日を受けて、金の装飾がきらりと光る。
「ありがとう、アナベル。行ってきます」
見送りに集まってくれたお母様や使用人たちに向かって声を張る。
「リーティア、セシル。気をつけて行くのよ」
お母様が優しく手を振る。
私は軽く会釈をしてから、セシルと並んで馬車へと向かった。
◇◇◇
新学期、まず最初の大イベントといえばクラス替えだろう。私たちはまず新学年のクラスが張り出された掲示板に向かう。
「あードキドキしますね。もし、中位クラスに落ちてしまったらどうしましょう!」
「そう? セシルなら今年も最上位クラスでしょう」
学園では一年に一度、クラス替えがある。上位のアクィラ、中位のウルラ、そして下位のコルウィだ。
この振り分けは昨年度の学年末試験での成績評価に加えて魔力量を勘案して決定する。よって、魔力量が相対的に多く、勉学についても有利な高位貴族の子息令嬢が最上位クラスの大半を占める結果となるが、稀に平民出身の学生が努力の末にアクィラ所属を勝ち取ることもある。
上位クラスに上がるのに有利不利はあるものの、努力して成果が出れば学園の先生方はきちんと反映してくれるのだ。
とはいえ、公爵家の娘として魔力が多く、成績優秀なセシルがアクィラから落ちることはありえない。
掲示板の前は大勢の生徒で賑わっていた。拳を突き上げて喜んでいる人がいれば、見るからに落ち込んでいる人もいる。人の山をすり抜け、名前が見える位置まで移動してからセシルの在籍する二学年のクラス分けを確認する。
「あ、ありました! アクィラです!」
セシルがぴょんっと飛び跳ねて私の手を握る。
「お姉様もいつも通りアクィラですし、流石です」
いつの間に探していたのだろうか。ちゃっかり私の名前も見つけていたらしい。
(良かった)
降格になるとは思っていなかったが、私もちょっぴり不安だったようだ。ホッと安堵の息が漏れた。
「セシルー!」
不意に背後からセシルを呼ぶ声がかかる。振り返ると、一人の女子生徒が妹に向けて手を振っていた。
「一緒に教室に行こー!」
声を張り上げる彼女に対し、セシルは嬉しそうに頷く。
「うん!」
どうやら友人らしい。私に気づいた女子生徒は軽く会釈してくれたので、私も頭を下げる。
「お姉様、先に行きますね。また屋敷で」
「ええ」
セシルは彼女と建物の中へと入っていく。その背中を見送ったあと、私は掲示板をもう一度見上げる。
第五学年のアクィラ。私の名前の他には、見慣れた名前がずらりと並ぶ。どうやら昨年とほぼ同じ顔ぶれのようだった。その中にはアイリーン様やエレン様等、親しい友人と他の婚約者候補の方々ももちろん連なっていた。
少しほっとしながら、私はルーチェに視線を向けた。
「高学年は高度な魔術も習うから、授業が忙しくなりそうだけれど、ルーチェもよろしくね」
「もちろんです、リーティア様! どんな授業でもお手伝いします!」
「頼もしいわ。アリアもルーチェを見習ってほしいくらい。今日くらいは来てくれるかなって思ったんだけどな」
「もうっリーティア様はアリアに甘いのですよ~! 叩き起してしまえば良かったんです!! 新学期の初日ですよ! リーティア様のお供をするのは当然です!」
ぷんぷんと頬をふくらませて羽を揺らすルーチェに、私もつい吹き出してしまう。あの子のことだから、今頃まだ寝返りを打っているのだろう。そして昼過ぎに大慌てで学園に飛んでくるのだ。
「いいのよ。最近のアリアはなんだか忙しいみたいだし」
「うー、リーティア様より大事なことなんてないのに。ルーチェはそう思いますよ?」
他愛もない会話を交わしながら、私は教室へと足を進めた。長期休暇を利用して生徒が居ない間に磨き上げられた廊下では、ふざけて走り回っていた男子生徒が滑って転んでいた。
そんなざわめく廊下を通りすぎ、教室のドアを開けると既に何人かのクラスメイトが談笑していた。
「リティ! リティの席こっちですよ! 私の後ろです」
にこにこと迎え入れてくれるエレン様に駆け寄る。
(……今年はどんな一年になるのやら)
ルーファス皇帝やアルバート殿下との外出等、個人的には問題が山積みなのだが、せめて学園生活は思う存分楽しみたい。
新年度は、こうして緩やかに幕を開けたのだった。
ぽかぽかと気持ちの良い日光を浴びてからくるりと振り返る。
「私と一緒に登校してくれる人!」
彼女たち専用のふわふわな寝床で横になっていた二人は、欠伸をしながらゆるりと目を開けた。
「んーアリアは行かないー。もうちょっと寝たい……」
「私はリーティア様のお供をします!」
片方はアリア。もう片方はルーチェ。ルーチェはふわりと浮き上がると、飛びながら魔法で身支度を整える。
その美しく長い髪は金から茶色へ。服は妖精用の制服に着替えた。これは私と同じ服が着たいと願ったルーチェのために、特別に仕立ててもらった制服だ。いつかのクリスマス、アリアやルーチェにどういったプレゼントが欲しいか質問した際に、彼女からねだられたものだった。それ以来、学園に行く時は時々妖精用の制服を着ている。
着替えたルーチェはちょこんと私の肩に乗った。
「リーティア様は今日もお綺麗ですね。髪型もお似合いです!」
「ありがとう。アナベルが新学期だからと張り切ってくれたのよ」
私はそっと結われた髪に触れる。サイドの髪を三つ編みにして上の方でくるんとお団子。後ろの髪はそのまま下ろしている。お団子の分には花が挿してあり、動くとふんわり良い香りがする。
「さ、アリアは置いて行きましょう」
最近の彼女はお寝坊さんなのだ。長期休暇で授業がなかったのもあり、アリアは見事に昼夜逆転生活を送っている。対して私やルーチェはいつも通り規則正しい生活を送っていたので、今日もぱっちりと目が覚めた。
登下校用のカバンを肩から提げ、軽い足取りでエントランスホールへ向かう。そこにはお見送りに来たお母様とアナベル、そして私と同じ学園の制服を着用したセシルがいる。
「お姉様!」
ぶんぶんっと元気いっぱい手を振るセシルに振り返し、階段を降りていく。
「セシルおはよう。待たせてしまったかしら」
「いいえ! ぜーんぜんっ待っていません」
ニコニコと笑うセシルは今年二年生になる。
去年、新一年生として学園に入学した彼女は、持ち前の明るさと活発さによって、クラスの中でも人気者らしい。
学年か三つも離れている私の元にも彼女の話は流れてくるから、前世のように誰からも好かれて交友関係の輪が広いのだろう。
「それにお姉様のためなら何時間でもお待ちしますよ」
ぎゅっと私の腕にくっついたセシルは、屈託ない笑顔とともにそう言ってのけた。
「私もセシルのためなら何時間でも待てるわ」
思わず微笑んで頭を撫でると、セシルは少しくすぐったそうに目を細めた。
こうして慕ってくれることも、すんなり受け止められるようになったのはいつ頃だったか。小さい頃はセシルとの距離感の近さについて不慣れで辿々しく、無意識に一定程度の距離を保とうとしていた私だが、今は少しでも距離を取られたら、むしろ悲しくなってしまうだろう。
(取っ付き難い姉だっただろうに、よく離れず積極的に接してくれたものだわ)
感謝してもしきれない。
「お二人とも、馬車の用意が整いましたよ」
アナベルの声に振り向けば、エントランス前に登校用の馬車が待機していた。朝日を受けて、金の装飾がきらりと光る。
「ありがとう、アナベル。行ってきます」
見送りに集まってくれたお母様や使用人たちに向かって声を張る。
「リーティア、セシル。気をつけて行くのよ」
お母様が優しく手を振る。
私は軽く会釈をしてから、セシルと並んで馬車へと向かった。
◇◇◇
新学期、まず最初の大イベントといえばクラス替えだろう。私たちはまず新学年のクラスが張り出された掲示板に向かう。
「あードキドキしますね。もし、中位クラスに落ちてしまったらどうしましょう!」
「そう? セシルなら今年も最上位クラスでしょう」
学園では一年に一度、クラス替えがある。上位のアクィラ、中位のウルラ、そして下位のコルウィだ。
この振り分けは昨年度の学年末試験での成績評価に加えて魔力量を勘案して決定する。よって、魔力量が相対的に多く、勉学についても有利な高位貴族の子息令嬢が最上位クラスの大半を占める結果となるが、稀に平民出身の学生が努力の末にアクィラ所属を勝ち取ることもある。
上位クラスに上がるのに有利不利はあるものの、努力して成果が出れば学園の先生方はきちんと反映してくれるのだ。
とはいえ、公爵家の娘として魔力が多く、成績優秀なセシルがアクィラから落ちることはありえない。
掲示板の前は大勢の生徒で賑わっていた。拳を突き上げて喜んでいる人がいれば、見るからに落ち込んでいる人もいる。人の山をすり抜け、名前が見える位置まで移動してからセシルの在籍する二学年のクラス分けを確認する。
「あ、ありました! アクィラです!」
セシルがぴょんっと飛び跳ねて私の手を握る。
「お姉様もいつも通りアクィラですし、流石です」
いつの間に探していたのだろうか。ちゃっかり私の名前も見つけていたらしい。
(良かった)
降格になるとは思っていなかったが、私もちょっぴり不安だったようだ。ホッと安堵の息が漏れた。
「セシルー!」
不意に背後からセシルを呼ぶ声がかかる。振り返ると、一人の女子生徒が妹に向けて手を振っていた。
「一緒に教室に行こー!」
声を張り上げる彼女に対し、セシルは嬉しそうに頷く。
「うん!」
どうやら友人らしい。私に気づいた女子生徒は軽く会釈してくれたので、私も頭を下げる。
「お姉様、先に行きますね。また屋敷で」
「ええ」
セシルは彼女と建物の中へと入っていく。その背中を見送ったあと、私は掲示板をもう一度見上げる。
第五学年のアクィラ。私の名前の他には、見慣れた名前がずらりと並ぶ。どうやら昨年とほぼ同じ顔ぶれのようだった。その中にはアイリーン様やエレン様等、親しい友人と他の婚約者候補の方々ももちろん連なっていた。
少しほっとしながら、私はルーチェに視線を向けた。
「高学年は高度な魔術も習うから、授業が忙しくなりそうだけれど、ルーチェもよろしくね」
「もちろんです、リーティア様! どんな授業でもお手伝いします!」
「頼もしいわ。アリアもルーチェを見習ってほしいくらい。今日くらいは来てくれるかなって思ったんだけどな」
「もうっリーティア様はアリアに甘いのですよ~! 叩き起してしまえば良かったんです!! 新学期の初日ですよ! リーティア様のお供をするのは当然です!」
ぷんぷんと頬をふくらませて羽を揺らすルーチェに、私もつい吹き出してしまう。あの子のことだから、今頃まだ寝返りを打っているのだろう。そして昼過ぎに大慌てで学園に飛んでくるのだ。
「いいのよ。最近のアリアはなんだか忙しいみたいだし」
「うー、リーティア様より大事なことなんてないのに。ルーチェはそう思いますよ?」
他愛もない会話を交わしながら、私は教室へと足を進めた。長期休暇を利用して生徒が居ない間に磨き上げられた廊下では、ふざけて走り回っていた男子生徒が滑って転んでいた。
そんなざわめく廊下を通りすぎ、教室のドアを開けると既に何人かのクラスメイトが談笑していた。
「リティ! リティの席こっちですよ! 私の後ろです」
にこにこと迎え入れてくれるエレン様に駆け寄る。
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