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彼女の前世
episode12
あれから数ヶ月経ったが一向に体調は良くならなかった。かといって、寝台から起き上がれなくなるほど悪化することもなく、今日も今日とて執務をこなしている。
私はこくりとハーブティーを口に含んだ。これは咳によく効くハーブティーで、スーっとする所が自分のお気に入りポイントでもあり、最近はこれしか飲んでいない。
それに飲むと幾分か心が穏やかになれる気がするのだ。
そんな束の間のほっと息をついた時だった。不規則な鐘の音が王宮に響いたのは。
「この鐘は……まさか──嘘でしょう……?」
顔から血の気が引いていく。
(もし……もし……私の記憶の中の鐘の音と同じなら──)
居てもたってもいられなくなり、執務室から勢いよく出て皇宮の一角へと向かう。
いつもなら急いでいても走るのははしたないと歩いていたが、今回ばかりは走る。一秒でも早く着けるように。
(まだっ、おねがい)
「嘘よ。そんな……早すぎますよ皇太后……様……!」
ぽろぽろ涙が溢れぬよう、歯を食いしばる。泣いちゃダメだ。淑女はどんな時でも、周りに人がいる場では泣いてはいけない──そう私に教えてくれたのは皇太后様なのだから。
目的の部屋まであと少し。ああお願い間に合って。女神様お願いします。せめて最後に合わせて────
駆け込むように部屋の中へと入る。
「……ご臨終です」
入った瞬間、無機質な医師の声が聞こえてきた。
その言葉を聞いて私はへたり込んでしまった。とても寒い。今は春である筈なのに。
「間に合わなかった……そんな……」
現実を受け入れがたく、私は皇太后様のことを思い出す。
とても美しく、天真爛漫という言葉がピッタリなほど無邪気で私のことを沢山気にかけて下さった皇太后様。彼女がまだ皇后だった頃、私に皇后教育を施してくれた。
普段は慈愛に満ちて優しく包み込んでくれるような皇后陛下は、教育に関してはとても厳しかった。
厳しすぎて涙を流す日も少なくはなかった。それでも挫けず受けてこれたのは陛下の為と、皇太后様が私の為に無理やり心を鬼にして教えてくれてるのを知っていたからだ。
それに両親よりも心配し、気にかけてくれていた皇后陛下の方が本当の親のようだった。
皇后から皇妃になることが決まった時も、私の代わりに怒り、心配してくれた。いつも私の心が限界を迎えるとどこからともなく現れ、救ってくれる。
いつか恩返しが出来ればと思っていたが、二ヶ月ほど前から皇太后様は病に伏して、寝台から出られない日々が続いていた。
居てもたってもいられなくてお見舞いに彼女の私室に行く私に、「あらまぁ。忙しいのにお見舞いありがとう。
とても嬉しいわ」と痩せてしまって起き上がるのも大変な中、私を気遣って身体を起こして笑っていた。
それなのに……女神様はなんて残酷なのだろう。皆から慕われ、この世に必要な人ほど早くあの世に連れて行ってしまう。
あの鐘の音は皇族が臨終を迎えようとすると不規則なリズムで鳴るようになっている。
加えてリズムによって誰が危篤なのか分かる仕組みだ。だから私は聴いた時走ったのだ。
一番私の中で大切な人がこの世から去ってしまうから。
(唯一私を見てくれた方なのに……)
座り込んだまま、今し方の出来事を受け入れられずぼーっとしていると、後ろから二人分の足音が聞こえてきた。
一人はとても急ぎ、もう一人はその後ろを懸命に着いてきているような足音。
「待ってっ! アル早いよ!」
(あの二人ね……)
ドカドカという足音の後、陛下が入ってくる。
「母上……? そんな、昨日までは元気でいらしてたのに……貴様邪魔だ退け」
そう言って彼は邪魔となっていた私を蹴ってどかす。
蹴られた私はいとも簡単に飛ばされる。ゴンッという音とともに鈍い痛みが頭に走った。目の前が点滅しているので、壁にぶつかったのかもしれない。
私は人間扱いもされなくなってしまったのだろうか。いつもだったら心にえぐられるような痛みが走るのに、今日は何もかもが冷え切ってしまって何とも思わない。
「待ってって言ったじゃんアル。鐘の音が鳴った途端、血相変えて走っていって……どうしたの?」
場の空気を読まない声が数十秒遅れて聞こえてくる。
(レリーナは鐘の音の意味を知らないの……?)
皇后教育を受けているなら真っ先に教えられることなのに。
何も知らないレリーナはおろおろしている。
この子は一体なんなのだろうか。私に執務を全て肩代わりさせて皇后教育を受けているはずなのに、身の振り方さえ分かっていない。
──黒い感情が燻る。
きっとあれなのだろう。面倒事は全て私に押し付け、自分は好きなことをして、気に入らないことは陛下に涙ぐみながら訴えれば全て解決する。
しかもそれを無自覚で行うからタチが悪い。
何も感情を伴わない目で彼女を見ていると、その視線に気づいたのかレリーナはびくびくしながらこちらを見た。
「何? どうしたのリティ? 目が怖いよ……」
少し怯えているようだ。これぐらいの視線で怯えていては、到底上に立つ者として生活することは不可能だが、きっと陛下が悪い物全てを彼女に見えないよう、真綿でレリーナを包んでいるのだろう。
ああ、これ以上考えてもいいことなんてありはしないのに。嫌な、汚いどろりとした感情は私を包み込む。
(どうしてこの人が彼の隣にいるの? 私の方がよほど……)
──陛下のお役に立てるのに。
(それに何故、私はこの宮の中で虐げられなければいけないの?)
ありえないけれど、もしレリーナが私の立場だったら。直ぐに陛下に嫌がらせされたら言いつけるだろう。そして陛下も彼女の言葉を信じて助けるだろう。私には手を差し伸べてくれることは無かったのに。
考えれば考えるほど私はレリーナのことが嫌いになっていく。
何も出来ないレリーナ。ただ単に、だが、とてつもなく影響力が大きい〝聖女〟という冠が付いてるだけの人に、私はなるはずだった場所を奪われた。
そこまで考えていると陛下の心も、信頼も、諦めると決めたのに未練がましい私自身も、嫌いになっていく。
そこでようやく陛下は私の存在に気がついたようだ。
「……貴様何故ここにいる」
「鐘の音が聞こえましたので……」
陛下の問いに答え、クラクラする頭に手を添えながら立ち上がる。
「出て行け。一刻も早く」
「分かりました。失礼します」
私がこの部屋にいること自体が気に食わないようだ。退出する際、ちらりと振り返ると王太后様の胸元にはベゴニアが咲き誇っていた。
◇◇◇
この世界には何故かこの世を去った人の胸元に花が咲く。一説には帝国が信仰している女神様は花がお好きで、女神様の元に持っていく花が咲くらしい。
花と言っても咲くのは千差満別。そして不思議なことに色と種類で死者の最後の感情などが分かるといつからかまことしやかに言い伝えられていた。
咲いた花言葉で思い、色で感情。先程は赤色だったので幸福ということになる。
そしてベゴニアの花言葉は「幸福な日々」
加えて花が咲くと、身体は薄い氷を纏い腐敗しなくなる。その氷はどんなことをしても割れず、溶けない。
市井の者の埋葬は見たことがないので分からないが、貴族と皇族は遺体を土に埋め、花は飾る。
花は普通の花よりも枯れず、一年後に花弁を落とすため落ちた花弁を栞やらペンダントやらに加工し、親しい人達で肌身離さず持ち歩くことで弔いとなる。
隣国ではとても素敵だと言われているらしいが私はあまり好きではない。
もし自分が去った時に負の意味を持つ花が咲いてしまったら?
周りは何と思うだろう。負の花を加工して弔うことなんてしたくないだろう。
まあ私を弔ってくれる人なんて居るはずがないので関係がないかもしれないが……。
────別名、「弔いの花」
私は何の何色の花が咲くのだろう。
「まぁこの醜い心では皇太后様のような花とは真反対の花が咲くのでしょうね」
執務室への道を歩きながら窓から空を見上げると今にも雨が降り出しそうな黒くて分厚い雲が覆っていた。
それはまるで私の心を写したかのようで、思わず目を背けてしまった。
私はこくりとハーブティーを口に含んだ。これは咳によく効くハーブティーで、スーっとする所が自分のお気に入りポイントでもあり、最近はこれしか飲んでいない。
それに飲むと幾分か心が穏やかになれる気がするのだ。
そんな束の間のほっと息をついた時だった。不規則な鐘の音が王宮に響いたのは。
「この鐘は……まさか──嘘でしょう……?」
顔から血の気が引いていく。
(もし……もし……私の記憶の中の鐘の音と同じなら──)
居てもたってもいられなくなり、執務室から勢いよく出て皇宮の一角へと向かう。
いつもなら急いでいても走るのははしたないと歩いていたが、今回ばかりは走る。一秒でも早く着けるように。
(まだっ、おねがい)
「嘘よ。そんな……早すぎますよ皇太后……様……!」
ぽろぽろ涙が溢れぬよう、歯を食いしばる。泣いちゃダメだ。淑女はどんな時でも、周りに人がいる場では泣いてはいけない──そう私に教えてくれたのは皇太后様なのだから。
目的の部屋まであと少し。ああお願い間に合って。女神様お願いします。せめて最後に合わせて────
駆け込むように部屋の中へと入る。
「……ご臨終です」
入った瞬間、無機質な医師の声が聞こえてきた。
その言葉を聞いて私はへたり込んでしまった。とても寒い。今は春である筈なのに。
「間に合わなかった……そんな……」
現実を受け入れがたく、私は皇太后様のことを思い出す。
とても美しく、天真爛漫という言葉がピッタリなほど無邪気で私のことを沢山気にかけて下さった皇太后様。彼女がまだ皇后だった頃、私に皇后教育を施してくれた。
普段は慈愛に満ちて優しく包み込んでくれるような皇后陛下は、教育に関してはとても厳しかった。
厳しすぎて涙を流す日も少なくはなかった。それでも挫けず受けてこれたのは陛下の為と、皇太后様が私の為に無理やり心を鬼にして教えてくれてるのを知っていたからだ。
それに両親よりも心配し、気にかけてくれていた皇后陛下の方が本当の親のようだった。
皇后から皇妃になることが決まった時も、私の代わりに怒り、心配してくれた。いつも私の心が限界を迎えるとどこからともなく現れ、救ってくれる。
いつか恩返しが出来ればと思っていたが、二ヶ月ほど前から皇太后様は病に伏して、寝台から出られない日々が続いていた。
居てもたってもいられなくてお見舞いに彼女の私室に行く私に、「あらまぁ。忙しいのにお見舞いありがとう。
とても嬉しいわ」と痩せてしまって起き上がるのも大変な中、私を気遣って身体を起こして笑っていた。
それなのに……女神様はなんて残酷なのだろう。皆から慕われ、この世に必要な人ほど早くあの世に連れて行ってしまう。
あの鐘の音は皇族が臨終を迎えようとすると不規則なリズムで鳴るようになっている。
加えてリズムによって誰が危篤なのか分かる仕組みだ。だから私は聴いた時走ったのだ。
一番私の中で大切な人がこの世から去ってしまうから。
(唯一私を見てくれた方なのに……)
座り込んだまま、今し方の出来事を受け入れられずぼーっとしていると、後ろから二人分の足音が聞こえてきた。
一人はとても急ぎ、もう一人はその後ろを懸命に着いてきているような足音。
「待ってっ! アル早いよ!」
(あの二人ね……)
ドカドカという足音の後、陛下が入ってくる。
「母上……? そんな、昨日までは元気でいらしてたのに……貴様邪魔だ退け」
そう言って彼は邪魔となっていた私を蹴ってどかす。
蹴られた私はいとも簡単に飛ばされる。ゴンッという音とともに鈍い痛みが頭に走った。目の前が点滅しているので、壁にぶつかったのかもしれない。
私は人間扱いもされなくなってしまったのだろうか。いつもだったら心にえぐられるような痛みが走るのに、今日は何もかもが冷え切ってしまって何とも思わない。
「待ってって言ったじゃんアル。鐘の音が鳴った途端、血相変えて走っていって……どうしたの?」
場の空気を読まない声が数十秒遅れて聞こえてくる。
(レリーナは鐘の音の意味を知らないの……?)
皇后教育を受けているなら真っ先に教えられることなのに。
何も知らないレリーナはおろおろしている。
この子は一体なんなのだろうか。私に執務を全て肩代わりさせて皇后教育を受けているはずなのに、身の振り方さえ分かっていない。
──黒い感情が燻る。
きっとあれなのだろう。面倒事は全て私に押し付け、自分は好きなことをして、気に入らないことは陛下に涙ぐみながら訴えれば全て解決する。
しかもそれを無自覚で行うからタチが悪い。
何も感情を伴わない目で彼女を見ていると、その視線に気づいたのかレリーナはびくびくしながらこちらを見た。
「何? どうしたのリティ? 目が怖いよ……」
少し怯えているようだ。これぐらいの視線で怯えていては、到底上に立つ者として生活することは不可能だが、きっと陛下が悪い物全てを彼女に見えないよう、真綿でレリーナを包んでいるのだろう。
ああ、これ以上考えてもいいことなんてありはしないのに。嫌な、汚いどろりとした感情は私を包み込む。
(どうしてこの人が彼の隣にいるの? 私の方がよほど……)
──陛下のお役に立てるのに。
(それに何故、私はこの宮の中で虐げられなければいけないの?)
ありえないけれど、もしレリーナが私の立場だったら。直ぐに陛下に嫌がらせされたら言いつけるだろう。そして陛下も彼女の言葉を信じて助けるだろう。私には手を差し伸べてくれることは無かったのに。
考えれば考えるほど私はレリーナのことが嫌いになっていく。
何も出来ないレリーナ。ただ単に、だが、とてつもなく影響力が大きい〝聖女〟という冠が付いてるだけの人に、私はなるはずだった場所を奪われた。
そこまで考えていると陛下の心も、信頼も、諦めると決めたのに未練がましい私自身も、嫌いになっていく。
そこでようやく陛下は私の存在に気がついたようだ。
「……貴様何故ここにいる」
「鐘の音が聞こえましたので……」
陛下の問いに答え、クラクラする頭に手を添えながら立ち上がる。
「出て行け。一刻も早く」
「分かりました。失礼します」
私がこの部屋にいること自体が気に食わないようだ。退出する際、ちらりと振り返ると王太后様の胸元にはベゴニアが咲き誇っていた。
◇◇◇
この世界には何故かこの世を去った人の胸元に花が咲く。一説には帝国が信仰している女神様は花がお好きで、女神様の元に持っていく花が咲くらしい。
花と言っても咲くのは千差満別。そして不思議なことに色と種類で死者の最後の感情などが分かるといつからかまことしやかに言い伝えられていた。
咲いた花言葉で思い、色で感情。先程は赤色だったので幸福ということになる。
そしてベゴニアの花言葉は「幸福な日々」
加えて花が咲くと、身体は薄い氷を纏い腐敗しなくなる。その氷はどんなことをしても割れず、溶けない。
市井の者の埋葬は見たことがないので分からないが、貴族と皇族は遺体を土に埋め、花は飾る。
花は普通の花よりも枯れず、一年後に花弁を落とすため落ちた花弁を栞やらペンダントやらに加工し、親しい人達で肌身離さず持ち歩くことで弔いとなる。
隣国ではとても素敵だと言われているらしいが私はあまり好きではない。
もし自分が去った時に負の意味を持つ花が咲いてしまったら?
周りは何と思うだろう。負の花を加工して弔うことなんてしたくないだろう。
まあ私を弔ってくれる人なんて居るはずがないので関係がないかもしれないが……。
────別名、「弔いの花」
私は何の何色の花が咲くのだろう。
「まぁこの醜い心では皇太后様のような花とは真反対の花が咲くのでしょうね」
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